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第46話 黒宮寧々のデレ期




 朝、目覚めて学校に行く準備をする。


 この前まで学校中の男子を夢中にさせている学園のアイドル黒宮寧々が俺の家に泊まっていた。


 一緒にご飯を食べたり、休日部屋でのんびりしたり……



『ちょっと、いつまで寝てるのよ。さっさと起きなさい』


『……はい』



『私は料理と洗濯、あんたは風呂とトイレ掃除。いいわね?』


「は、はい!!』



『なんで醤油がないのよっ! 今すぐ買ってきて!!』


『はい!!』



…………完全に尻に敷かれた生活だったが、た、楽しかったよな?

う、うん。楽し……かった。



「……ん?」



 改札口を出てると少し離れたところに寧々がスマホをいじりながら立っていた。


 周りの視線(主に男)を集めつつ、それに馴れた様子で前髪や身だしなみを整えていた。


 誰かと待ち合わせだよな? 多分、華か黄瀬さんだろう。


 ふと、顔を上げた寧々と目が合った。


 とりあえず、手を振りながら学校へと歩き始める。

 誰かと待ち合わせしているのなら声をかけるべきではないのだろうし、万が一俺の知らない人との待ち合わせなら鉢合わせしてしまった時コミュ障の俺にはハードすぎる。


 そんなことを考えていたら、ぽすっと鞄で背中を叩かれた。



「ちょっと、どこ行くのよ」



 振り返ると案の定、寧々がむすっとした表情で俺のネクタイを掴んだ。

 ネクタイを掴んだのは俺を絶対に逃さないという強い意志からなのだろうか……



「えっと……誰かを待ってたのかなと思って……前髪や身なりも整えてたし」


「……見てたのね」



 少し、恥ずかしそうに顔を逸らす寧々。やはり、誰かと待ち合わせをしていたのだろう。なのに、俺に話しかけて大丈夫なのだろうか?


 ———どすっ


「?」



 じっと頬を赤らめながら寧々が俺の頬に指をつきさしてきた。



「な、なに?」


「……十兵衛」


「え? なにが?」


「私が待ってたの、十兵衛」


「………………え? なんで?」


「会いたかったのよ。十兵衛に。一刻も早く……それと、少しでも一緒に居たかったの。一秒でも長く」


 

 …………はい?



「なんだか1人の朝は寂しくて……だから、ここで待ってたの。あんたはどう? 私が居ないと寂しかったんじゃないの?」



 くすくすといたずらな笑顔を見せながら聞いてくる。



「ま、寂しくて当然よね。何たってこの私が———」


「寂しかったよ」


「……え?」


「俺も寧々が居ない朝は寂しかった。だからこうして朝会えたの、すごく嬉しい……です」


 ふぅ、危ない危ない。


 ここで否定したら『は?』と言われてキレなれるし、少し間を置いて肯定しても『は? なに今の間は?』とキレられるから、ここは即座・肯定が正解だ。


 ここで返答を間違えれば寧々の機嫌が悪くなる。

 機嫌が悪くなった寧々と2人登校は絶対に避けなければならない!!

 

 それに俺も寧々が駅で待ってくれていたのは純粋に嬉しかったし。


 

「……ずるい」


「ず、ずるい? ……なにが?」


「い、いいから行くわよ」


「あ、はい」



 いつもは1人が当たり前だった朝の登校。隣に寧々がいるのが少し不思議だった。


 そういえば、裏の顔を知った日の翌朝もこうして2人で登校してたっけ。あの時の寧々はツンツンで、距離もあって……明らかに目を付けられたという感じだった。



 それに比べて今はどうだろう?


 手と手がちょくちょく当たるくらい距離が近くなっているではありませんか。



「………………」



 俺は寧々をそっと盗み見た。

 いや、なんでそんな真顔でこんなにくっつけるんだ? どういう表情?


 俺がおかしいのか? 恥ずかしくないんか? 近くないか?

 

 

「……なに?」


 し、しまった……!! ジロジロ見過ぎたせいで寧々に気付かれた!!


「あ、いや……」


 ど、どうする? ここで素直に距離が近くない? とか言たらキモイか?


『は? このくらいの距離、別に普通でしょ? 意識してるんじゃないわよ。この童貞陰キャが』


 とか言われないだろうか?


 こ、ここはひとまず……!!


「さっき身なりとか前髪とか……整えてたなって。やっぱり結構気になったりするんだなって」



 適当な話題を振ることにした。



「そうね……身なりや髪は常にチェックしてるわね。周りからどう見られているのかを常に意識しているからかしら」



 見られることを常に意識している。そういう高い意識や努力があるからこそ黒宮はモテるのだろう。

 


「それに、いつも可愛い私を見て欲しいのよ……十兵衛には」


「寧々はいつだって可愛いと思うけど……」


「〜〜っ!! あ、あんたってやつは……!!」



 まるで強烈なカウンターを喰らったと言わんばかりに狼狽える黒宮さん。


 てっきり『ま、当然よ』みたいに毅然とした返事が返ってくるものだと思っていたのだが。 



「あーもう、たくさ……ドキドキさせてやると……ってたのに……私ばっか……ドキドキさせられ……じゃない」



 なにやらぶつぶつと言いながら覚悟を決めたような表情を見せる黒宮さん。


「……ねぇ」


「は、はい?」


「……もっとくっついてもいい?」


「え……?」


「ま、答えは聞いてないけど」



 寧々はそう言いながら俺に抱きついてきた。



「ちょっ!? 寧々さん!! これは流石に!! 知り合いとかに見られたら!!」


「その時は潔く交際宣言でもしちゃえばいいのよ」


 何言ってんだ!? 


 その後、華と黄瀬さんと遭遇してしまい混沌とかしてしまうのだが、それはまた別の話である。





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― 新着の感想 ―
面白かったです^^ 「続きがもっと読みたい!」くらいで終わるのも 良いのかも知れませんね。 ありがとうございました!
[良い点] まさかの更新アザス!
[気になる点] まだ、続くで良いんですよね?
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