第45話 陰キャぼっちと告白
私、黒宮寧々は学校のアイドルだ。男子全員が自分に夢中になっているいう自負がある。
ほんと、男ってバカだと思う。
ちょーっとソフトタッチとか思わせぶりな態度やあざとい行動をして微笑みかけたら完落ちする。
みーんな私の虜。
そう、私の笑顔で落ちない男なんてこの学校には居ない。
『黒宮さん。好きです。付き合ってください』
これまで、飽きるくらい聞いたことがある言葉。面倒だなと思う時もある。
モテるっていうことは多くの人から他人とは違う特別な関係になりたい。そういう目で見られるということ。
自分にとっては興味ない奴とか、下手をすれば嫌いな奴にも……
どんな相手でもきちんと断って、なおかつ傷付かないように気を遣わなければならない……余計な恨みを買わないように。
そんな私が唯一、堕せていない男子が居る。
その男子は……
「……おーい寧々?」
佐藤十兵衛。こいつだ。
目の前で不思議そうな顔をしながら佐藤十兵衛がテーブル越しに私を見つめていた。
今は訳あって、こいつの家で、こいつと一緒に晩御飯を食べている。
「ごめん……ちょっと考えごとしてた」
「あ、エット……話かけちゃまずかった?」
「いや、別に……」
少しおどおどした様子を見せる十兵衛。なんというか、さっきうちの親父と話していた堂々とした姿はどこにいったのかしら。
「…………あの、何か?」
「あんた、よく私のクソ親父にあんな堂々と物申せたわね。私がいうのもなんだけど厳つい顔つきでしょ? 怖くなかったの?」
「……まぁ、怖かったけど。でもそれ以上に俺は寧々が転校して欲しくなかったから」
「……あんた、私のこと好き過ぎでしょ」
「……そうだよ」
「……え?」
「……好きだ。寧々。俺と……結婚してほしい」
「は? え? け、結婚!? あ、あんた何言ってんの!? 色々と飛び過ぎでしょ!? 普通まずはお付き合いからでしょ!?」
「じゃあ、付き合うのはいいのか?」
「それは……本気なの?」
「最初から俺は本気だよ」
「え、ちょっと……? 十兵衛」
真剣な表情をしながら、顔を近づかせる……お互いの唇が触れ合う直前で
目が覚めた。
「……………………」
ぅぐああああああああぁ…………………………!!
間違いない。人生で一番最悪の目覚めだ。
隣でぐーすかと眠っている佐藤十兵衛を見る。
……そうだ。思い出した。わがまま言ってこいつの隣で寝たのはいいものの数分で爆睡されたんだった。
いや、ありえなくない? 女の子と一緒のベッド(しかも学校一の美少女)で寝てるのよ?
意識くらいするべきでしょ?
普通寝れないでしょ?
私は意識して全然寝れなかったのに……
「ほんと、ムカつくくらい気持ちよさそうに寝ちゃって……」
起こさないよう、静かに、そっと十兵衛の頭へと手を伸ばす。ちょっとボサボサだけど、意外と手触りのいい髪の毛。
『佐藤くん。あなたのことが好き。私の恋人になってくれる?』
嘘告白して振られたあの日から、私はこいつのことを意識していた。意識と言っても悪い意味でだけど。
でも、今は……
…………
………………
「佐藤くん。あなたのことが好き。私の恋人になってくれる?」
眠っている十兵衛に二回目の嘘告白をした。
だけど、前とは全然違う。
胸が高鳴る。顔がとても熱い、心臓の鼓動がうるさい、声が少し震えた。
前の嘘告白は何とも思わなかったのに……
だけど、その答えを私は知っている。
頭ではきっとそうなんだろうなとは考えていた。だけど、分からないと目を背けていた。心が認めていなかった。
だけど、認めるしかない。
こいつにだけに持っている。私のとびきり特別な感情。
ねぇ、十兵衛。
私、あんたのこと好きみたい。
嘘じゃないから、緊張して声が震える。
嘘じゃないから、恥ずかしくて顔が熱くなる。
本気だから、心臓がうるさいくらいに高鳴る。
……この気持ちを伝えるのは明日かもしれないし、1週間後かもしれない。もしかしたら半年? 1年後? 近々か遠い未来か。
だけど、絶対に伝えよう。
その時のあんたの顔が楽しみだわ。
そんなことを思いながら、朝食を作るために部屋を出た。
作品をお読みくださりありがとうございます!!
陰キャぼっちですが、一旦この話で一区切りとなります!
応援していただき、ありがとうございました!!