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第33話 黒宮とのデート






「あ、あの黒宮さん……カレーのルーとお米が真っ赤なんですけど」


「そうね。真っ赤ね」


「あの、黒宮さん、匂いだけで鼻と目が痛くなるんですけど」


「そうね。痛いわね」


「あの黒宮さん! カレーのルーが沸騰してるんですけど」


「そうね、マグマが沸騰してるみたいね」


「あの黒宮さん!? 食べ切れる自信がないんですけど!?」


「奇遇ね。私もよ」


「いや、なんで連れてきた!?」


「はぁー……そんなの私が食べ切れなかった時にあんたに全部だべてもらうために決まってるじゃない」


「鬼かな?」



 店員さんが持って来てくれたカレーを見る。

 

 メニュー名は『灼熱の地獄噴火山激辛カレー』


 灼熱の名前に相応しい真っ赤なカレー。テレビ番組でお笑い芸能人が超激辛チャレンジで出て来そうなものが今、目の前にある。



「前からここのカレー食べてみたかったのよ」


「……辛いもの好き?」


「結構好きね。正直甘いものより辛いもののほうが好きかしら? ほら、冷めないうちに食べるわよ」



 手を合わせて、スプーンを持つ。正直、待つ手が震えている。すまん、もう時点軽くむせそうだ。黒宮は口元に笑みを浮かべながらスプーンを手に取る。

 

 黒宮は躊躇いなく、俺は恐る恐るカレーの海に飛び込んだ。口に入れた瞬間、ぶわっと汗が吹き出す。



 い、いたい……!! 舌がめちゃくちゃいたい!! もう辛いなんて次元を超えている!!


 プルプルと体を震わせながら食べている俺とは対照的に黒宮は辛そうに食べてはいるがそれと同時に美味しそうに食べている。


 汗をかいているが、どこか色気を感じるのは気のせいだろうか?


 もう無理だっ!! 水!! 



 一気にコップの水を飲み干した。



「あ、水はあんなり飲まないほうがいいわよ? 口の中がリセットされるから」



 いや、それ先にいってよ!?



「ふぅ、やっぱり結構辛いわね。あんたは大丈夫?」


「え? ああ、うん。辛いし、舌が痛いけどそれがいいみたいな? 癖になるというかスッキリするというか」



 すいません、嘘です辛いです。見栄張ってます。



「そうでしょそうでしょ!? これ入れるともっと辛くなるわよ!」



 おいちょっと待て、今なに入れた?


 黒宮が入れたスパイスの入れ物を見ると『激辛! 灼熱のマグマハバネロ』と書いてあった。


 うわああああああ!! 鬼! 悪魔! 鬼畜!! 



「わ、ワア……ウレシイナァ」



 さらに辛くなったカレーを涙を流しながら食べる。

 ほんとやばい、汗が止まらない。舌だけじゃなくて唇も痛くなってきたし、なんでお金を払ってまでこんな辛い思いをしなくちゃならないんだ?



「ふぅーおいしかったーご馳走さまでした」



 えっ!? もう食べたのか!? はや!? 俺まだ半分くらい残ってるんだけど!?



「ん? ちょっとスプーンが止まってるわよ?」


「え? あぁ……うん」


 もうここは素直に言ってしまおう。自分限界です。もう無理です残り食べてくださいと。



「もう、しょうがないわね……」



 呆れながらも黒宮は俺のスプーンを持ち始める。

 

 黒宮さん……俺が限界なのを察して……!!



「ほら十兵衛くんっあ〜んして?」


 違う!! そうして欲しいんじゃない!! 食べて欲しいんだよ!!


 ふと黒宮の瞳の奥に愉悦の光が見える。

 ま、まさか……黒宮っ!!


「んぐ!?」



 笑顔の黒宮に無理やりカレーを無理やり口にぶっ込まれる。



「十兵衛くん! がんばれ♡ がんばれ♡」


「おお! にいちゃん!! かわいい彼女が応援しながら食べさせてくれるってよ! こりゃ絶対に食べ切らないとな!!」



 黙れこの店員が!!  


 周りに見られ、逃げ道をなくした俺はなんとかカレーを食べ切った。

 達成感で満ちた気持ちで店の外に出る。



「……激辛料理も悪くないかもしれない」



 痛いとか罰ゲームとか思っていたけど、なんやかんやおいしかったし。

 


「へぇー……じゃ、また今度激辛料理食べに行きましょ。行きたいところがまだ10店以上あるのよ」



 ……じゅ、10店以上も!? 言わなきゃ良かったかもしれない。



「さて、次はどこに行こうかしら」


「人が少ないところでお願いします」


「そんなところ渋谷にはないわよ」



 というわけで黒宮の提案で駅ビルのアミューズメント施設へと移動することに。


 週末なだけあって、同じ高校生達やカップルや社会人と多くの人で賑わっていた。ゲームから漏れる響くような重低音、激しい光の明滅が飛び交っている。


 慣れた足取りで進んでいく黒宮にとりあえずついていく。なんのゲームをするんだろう?


 UFOキャッチャーだろうか? 陰キャの想像力ではそれくらいしか思いつかない。



「さ、今からこれをやるわよ」



 案内された先はゾンビシューティングゲームだった。


 なんか……ある意味イメージ通りというか『死ね! 死ね!』とか言いながら一心不乱にゾンビを撃ち殺してそう……



「なんか失礼なこと考えてない?」



 中に入ると薄暗く、結構ホラーチックな雰囲気が出ていた。



「グラフィックを見ると結構古いやつだな」


「そうね。でもこういうゲームって古いほうが怖くない?」


「ああ、確かに……あれ? ランキング独占してるK・Nってもしかして黒宮?」


「ふふん。そうよ」



 いや、めちゃくちゃやり込んでるじゃん……



「さ、始めるわよ。難易度はインフェルノにしてと……クリアーするまでやめないから、死んだら課金しなさいよ」


 え? そんなのお金溶けてくに決まってるじゃん……


 こうして、ゲームセンターのガンシューティング初めてで、開始1分で1回死んで、チャプター1だけで1000円くらい課金したが、黒宮の銃捌きやプレイ方法を手本にし、慣れて来たらライフを減らすことなく的確に敵を処理出来るようになった。


 ふむ、こういうのも案外楽しいんだな。



「はー楽しかった」



 無事、全チャプターをクリアーしエンディングを見終えた。



「……まぁ、そうね。楽しかったわね」


「そういうわりになんか不服そうな顔してない?」


「私が一番みたかったのはゾンビにやられまくってあわあわしてるあんたの姿だったのに、最終チャプターからあんたの方が上手かった気がしてムカつく!!」


「えぇ……」



 どうやらとても理不尽な理由で不服だったようだ。




 

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