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第18話 友達





 言えた……!!


 黒宮に友達になって欲しいって言えたぞー!!


 正直、今の俺と黒宮の関係は知り合いでもないし、友達と言われるとそうでもないというなんともいえないものだった。


 だから、俺はその先に進みたい。


 「その先」とは、そう友達!!


 俺は黒宮と友達になりたいと言葉にして伝えた。

 

 おそらく……おそらくだけど、黒宮も俺と同じことを想ってくれいているはず……!!



『そ、そうね……あんたの事はその……嫌いじゃないし? し、しょうがない友達になってあげるわよっ』



 みたいな返事が来るに違いない!!



「佐藤」



 期待しながら顔を上げて黒宮の顔を見るとにっこりと笑顔で俺のことを見てくれていた。



「正座」


「……え?」


「正・座」


「あ、はい……」



 あ、あれ? なんでだろう? 滅茶苦茶いい感じの雰囲気から地獄みたいな空気に大逆転したんですけど……

 

 黒宮は腕と脚を組みながら椅子に座り、とても冷たい目で見下した。


 ……床がひんやりと冷たい。



「で? あんたのクッソ紛らわしい告白の真意を私が納得するように1から10まで全部教えなさい」



 クッソ紛らわしい告白? どういう事ですか? と聞きたかったがそれを言ってしまうと本気でキレられそうなので言えなかった。



「は、はい……だからですね。金田に勝負を挑んだのは、自分の」


「それはさっき聞いた。聞きたいのはその先よ」



 あ、まずい。黒宮のイライラポイントが5プラスしてしまった。



「す、すいません! そのですね……少しは俺のこと好きになってくれるんじゃないかという下心が僅かにあったわけでして」


「……で? それがなんで友達になってくれにつながるのよ?」


「え? だって! 好きでもなんでもない奴と友達になんかなれないだろ!?」


「馬鹿じゃないの?」



 俺の心の叫びは一蹴されてしまった。


 え? あ、あぁ? だって、友達っていうのは好感度が高くないとなれないんじゃないの?


 それに『好きでもなんでもない奴からの好意なんて迷惑以外の何ものでもないのよ!!』ってこの前言ってませんでしたっけ?



「はぁ〜〜〜これだから陰キャぼっちは……」



 黒宮は絶句している俺の姿を見て、呆れるように深いため息をつく。



「普通、この流れは友達じゃなくてこい……」


 こい?


「……なんでもないわよ」



 はっと何かに気づいたかのように顔を赤くして言葉を止める。


 黒宮は一体何を言いかけたんだろう?

 そこを突っ込んだら拳が返ってきそうだったので言えなかった。



「それで? あんたは私と友達になりたいの?」


「それは……はい」



 そう頷くと黒宮は俺の胸に飛び込んで来た。

 あまりにも突然で衝撃が強いもんだから危うく後ろに倒れそうになる。

 黒宮は俺の胸に顔を埋めたまま何も言わない。



「あの、黒宮?」


「なってあげてもいいわよ」


「え?」


「ただし、条件がある」



 条件? 一体どんな無理難題を要求されるんだろう? ま、まさか……お友達料金を請求されるとか!? 月額20000円みたいな!?



 ぎゅっと、黒宮の抱き締める力が強くなる。



「……ずっと一緒にいて」



 虫が鳴くような声でそう言った。

 その声は震えていて、どこかかよわい。



「え?」



 驚いて見下ろすと表情こそ見えないが耳まで真っ赤になっていた。



「返事は?」


「は、はい!」


「遊びに行くときは常に私との用事を最優先にすること」


「は、はい」


「休みの時は絶対ロインして」


「は、はい……」


「他の女とあまり……いや、これはいいや」


「は、はぁ……」



 黒宮はゆっくりと俺から離れて鞄を持ち上げ、保健室の扉を開いて振り返った。



「さ、帰るわよ」


「え? それって一緒に?」


「友達と一緒に帰るのはおかしい?」


「あ、全然!!」



 そうやって俺と黒宮は友達になった。

 現金なもので、友達ができた瞬間、特に何も感じていなかった明日からの学校生活が楽しみになった。




 次の日、俺は全身筋肉痛で動けなくなり学校を休む事になったんだが。





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― 新着の感想 ―
[一言] ずっと一緒にいて、遊びに行くときは常に私との用事を最優先して、休日は必ず連絡してって… それは恋人のする事やん。
[一言] 知ってたけど!ここは付き合って下さいって言ってあげろよ〜!
[一言] 「他の女とあまり……いや、これはいいや」どうせ無理だと判断したんだろうな。
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