元魔王様、海に近い村で臨時講師になる
油を搾る新しい装置である搾木を広めた繋がりで、今日は海に近い村で海辺について特別授業をするために来ています。
前世の魔王時代では、学校の教員や国立水難学会の指導員及び各自治体の消防本部が協力して、約8割の初等教育の学校で着衣泳を教えてきました。その甲斐あって、離岸流や風などで沖に流された子供の約9割が生還するできるようになりました。一方、対処方法を習っていない親世代では半分以上が生還できない状況が長く続くことになりました。加えて、浮き輪があっても水難事故は数多く発生し、4歳児以下での事例も数多く報告されていました。
このような事態を改善するため、前世の魔王時代では、ライフジャケットや携帯用の自動膨張浮き輪を携帯することを河川や海辺では罰則付きの義務として法整備し、(小学校で自転車を乗る練習をした後に自転車に乗る許可を与えた時のように)海水浴ではレクチャー無しでは入れないようにしました。初回のみ魔王国が各地方自治体の海辺に救命浮輪を設置し、浜辺の監視員にレスキューボードと携帯用の自動膨張浮き輪を常に2本以上携行できるように配布しました。内陸部ではプールで講習を行い地方格差をなくすようにしています。さらに、児童を見つけやすく、また、個々の児童を見分けやすいように、カラフルで好きな色の水着を着用するようにもしました。
この村の様子を見る限りでは、私の政策は数百年後まで続かなかったようです。残念ではありますが、私が来たからには前世の魔王時代を超える良い状況にしたいと熱意を燃やしました。
ですが、直ぐにその熱意は消火されてしまいましたーー。村の教育担当者さんに助けて貰って子供たちを静かにして貰いました。やっぱり私、教師に向いてないです。ぐすん。
こうなったら、伝家の宝刀、紙芝居です!
私は徐にカバンから立ち絵用の道具を取り出しました。背景は海辺です。可愛いウサギちゃんの紙人形に竹くしをつけて、ウサギの家族による海での話をしました。
物語の前半では、強風で浮き輪が飛ばされ、さらに離岸流で沖に流されたウサギちゃんが頑張っても岸に戻れず、皆んなに“浮いて待てー”や”必ず助けるから待ててねー“と勇気づけられるところで終わりました。続く後半では、沖に流されたウサギちゃんが特別授業で学んだ浮き身を実践して、浮き身であっても不安定な姿勢で底の見えない海の中で一人になる恐怖と心細い思いを経験し、これまでの後悔や自身の悪いところを思い浮かべて家族の大切さを改めて実感したところで、助けに来た船から家族の声が聞こえ、家族に涙を流しながら抱き抱えられて助かる話になっています。
紙芝居の効果は絶大でした。ウサギちゃん自身やウサギちゃんの両親の軽率だったことを皆んなで話し合い、大人になったら小さい子には浮き輪ではなくライフジャケットを必ず着させようねと言って座学を終了しました。
お昼には皆んなとご飯を食べて午後からは浮き身の練習です。子供たちの浮き身を学ぼうという熱意が凄かったので、気を良くした私は、村の教育担当者の人と話し合って、浮輪の代わりになるカラフルな靴をプレゼントすることにしました。靴のデザインはカッコいいものから可愛いものまで用意していますが、視認性を確保するため靴を青系統の色だけにはしていません。子供たちは喜んで好きな靴を選び、その靴を履いて海へ行き、浮き身の練習を行いました。
最初は戸惑っていた子供も直ぐに浮き身を取得したので、バディを組んで貰って投げ入れた靴で浮かぶ練習も行いました。子供たちには、声かけをして靴を投げ、地面に流されている方法を矢印で書いて、船での助けを呼ぶためには、二人以上で行動することが大切で、さらにバディを組ことが大切であると実感したようでした。
後日、高波についての話や砂浜での危険生物、そして、河川や湖沼でも気をつけることを教えました。実習を進めていくと、浮き身で長時間浮いてられる子供の数は当初の3割から着実に増えていきました。
特に、幼い子供たちには“サンダルばいばい”を教え、脱げたサンダルを追いかけないようにさせり、河川では、膝ではなく、くるぶしからソックスまでのところで止めてそれ以上は進まないように教えました。これは光の屈折の影響で実際は深くても浅く見えてしまっていたり、急に深くなるところでは、戻るのが難しい崩れやすい、または、滑りやすい斜面となることもあるため膝までを指標にしていると溺れてしまうからです。
これらの特別講義を受けた子供たちの生還率が非常に高くなり、水難事故の発生率が低くなったことが多くの人々に知られるようになると、水難事故に遭われた家族の人々からの後押しを受ける形で多くの村々で特別講義を行うことになったのでした。
後日談
内陸部の村では臨海学校の制度が整備されるようになりました。逆に海に近い村は林間学校が整備され、海と河川の違いや登山での注意点を知る機会が作られました。臨海学校は内陸部でプールが作られるまで続けられたと伝えられています。
参考文献
[1] 学校における水泳事故防止必携
https://www.jpnsport.go.jp/anzen/Portals/0/anzen/anzen_school/suiei2018/suiei2018_0.pdf
[2] 水泳プール総合ハンドブック
https://www.jpaa.jp/business/handbook.html
[3] 沖に流されたら、どうして大人が犠牲になる?そうなるのが水難事故だ
https://news.yahoo.co.jp/byline/saitohidetoshi/20190811-00137980
[4] 瞬殺的戻り流れ ほぼ3秒で溺れる だから荒れた海には近づいてはダメ
https://news.yahoo.co.jp/byline/saitohidetoshi/20190907-00141028
[5] 「子どもがプールの底に沈んでいた」…水泳中にもがくことなく溺れる「ノーパニック症候群」はなぜ起きる?
https://news.yahoo.co.jp/articles/bb28a44b8a7b15534158f8d97970703f5d5a7cb1?page=3
[6] 幼稚園等のプール活動・水遊びでの溺れ事故を防ぐために:消費者庁
https://www.youtube.com/watch?v=cWa-PqEZ1bU
[7] プール監視員のための応急手当講習
https://www.youtube.com/watch?v=p7h28CjXEdM
[8] 【日本赤十字社】一次救命処置(BLS) ~心肺蘇生とAED~ (字幕あり)
https://www.youtube.com/watch?v=N_b5wYiRwZE
[9] ~救急救命士が易しく解説~心肺蘇生法とAED使用法
https://www.youtube.com/watch?v=EvObwhgQBmg
[10] 応急手当Web
http://www.hokkaido.med.or.jp/firstaid/sosei/t007kyokotsu.html
[11] プールで事故を起こさないために
https://jla-lifesaving.or.jp/watersafety/pool/
[12] 溺水【疾患解説編】|気をつけておきたい季節の疾患【12】
https://www.kango-roo.com/learning/4898/
見ておきたい動画
[13] 命を救うライフジャケットの正しい着用方法~ライフセーバーが教える水難事故防止のための実践的な「そなえ」【前編】~
https://social-innovation-news.jp/?p=1558
[14] 水辺の事故防止!浮いて救助を本当に待てる?~ライフセーバーが教える水難事故防止のための実践的な「そなえ」【後編】~
https://social-innovation-news.jp/?p=1562
[15] e-Lifesaving
https://elearning.jla-lifesaving.or.jp/videos/
個人的にボビングジャンプは使い所が難しい。理由は短時間で大幅に体力を消耗してしまうこと、急に足場が深くなってパニックになり、足場が不安定で明確に認識できていない状況では救助の時間まで行動し続けるのが難しいです。私ですと底面を上手く蹴れずに沈んでしまう。さらに次の動画をお願いしたいです。他の浮き方([8の字でのスカーリング]や[立ち泳ぎ])は波が高くなってくると効果的ですが流されやすくなり体力を消耗していくため、救助されるまでのケースによって最適な選択はどれかなどを含めた経験豊富で知識豊かな方からの動画が配信されるのを心から願っております。
[16] カッパの正体はコレ!なぜ川で溺れるのか検証してみた
https://www.youtube.com/@friendship_outdoorchannel/playlists
人は生涯で3億円以上を稼ぐと言われています。河川や海の緊急時に備える備品は数千円程度。秤にかけるまでもないですね。数千円で助かる命を亡くしてしまう判断をしてしまうのは悲しいことです。
日本赤十字社では定期的に講習が行われています。Webから予約して受けられますが、先着で、直ぐに満員となるところも多いため、受講を少しでも考えている方は申請開始日をチェックするようにしてください。
河川や海での対応
1. 119番や118番通報
2. 空のペットボトルを投げ入れる。靴やクーラーボックス、ボールも浮き輪がわりになることを覚えておくとよい
3. 飛び込んで助けにいかず、浮いて待てと伝える
浮いて待つ側は、両手足を広げ、大きく胸とお腹に空気を吸うようにし、体の力を抜いて浮く。大声は肺から空気が出てしまうのでダメ。巻波の時は息を止めて海上に浮上するのをまつ。
飛び込みはダメ。障害となる頻度で最も高い割合を示し、その障害の重症度は最も高いものとなりやすい。
走り飛び込みもダメ。
海では海水浴場以外の事故が全体の9割以上を占めている(海水浴場以外ではより離岸流や波が立ちやすいところが多いため危険性はより高くなっている)。
波打ち際でも100回に1回は1.5倍の高さの波、1000回に1回は2倍の高さの波が来る。(7月28日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』)
溺水では、無症状でも、8時間の経過観察と72時間以内の状態の悪化に注意が必要(呼吸症状)。
川では循環流と砂嘴に注意。水に浸かるには膝下までにする。実際は深くても浅く見える現象も起こる。
流された場合は浮いて川が流れる方向に足を向けて流される先を見ながら徐々に岸へと向かう。
余りのも小さい子だと流されたサンダルを追いかけて、「とまって!」といっても先に進んで溺れてしまう。
ボケットに大きめの袋を2枚以上は忍ばせておくことが大切。水泳着にも大きめの袋を忍ばせておこう。袋は嵩張らない。
大人が数千円のライフジャケットを着用しておくのは子供のためと思っておこう。