梅干しと枇杷葉湯
日当たりの良い道に並んでいる木槿の紫の花を咲が少なくなり、反対に少し日当たりの悪いところの木槿が白い花を一杯に咲かせ、百日紅の薄桃色や深紅の花が満開になった頃。私は街への道を進んでいました。この日の朝は寒いほど涼しかったのですが、お昼に近づくにつれて高い温度になっていきました。
私は空を飛んでいたので地面からの輻射熱は軽減されていましたが、街へと続く街道を歩く人にとっては危険な状況でした。心配症な私は何も起こりませんようにと神様に祈りながら道を進みました。私が周りに日陰となる木がない小高い丘を越えたとき、一人の老齢の男性が今にも倒れそうな状態で歩いているのを目にしました。
危険な状況だったので私は老齢の男性に「道の脇で少し休憩しませんか?」と声をかけました。その方は「いや、大丈夫」と言っていましたが、丘の中腹辺りで地面に倒れ込んでしまったのを見た私は、その直ぐ傍にシートを敷いて、その上に倒れた男性を回復体位で寝かせました。そして、その周りに加工した竹を地面に刺し、竹に布を括り付けて簡易の天幕を作りました。霧吹き用のノズルを水筒に刺して水を噴霧して周りの温度を下げました。
そうして老齢の男性が意識を取り戻すまで、脳梗塞でないことを祈りながら団扇を仰いで老齢の男性を見守りました。救急車を呼んで治療にあたれるように努力していた数百年前の魔王時代の医療制度が恋しいです。
男性の意識が戻ったので経口補水液をまずはコップ1杯ゆっくりと飲んで貰いました。発話や顔、そして、体の様子などを見て特に不自由になっている箇所もないようなので少し安心しました。
老齢の男性は私に礼を言うと直ぐに天幕から出て行こうとしたので、私はそれを止めて、折角の機会なので新しく作った商品の感想を聞かせて欲しいと半強引にお願いして、白と赤の梅干しと枇杷葉湯を振る舞いました。
白梅干しは上手く作れば10年は保存でき、いま食して貰っている3年目のものが一番美味しいのですと伝えると驚いていました。枇杷葉湯で使っている枇杷の葉の寿命は約1年と長いため扱い安く、葉は入浴剤としても効果があり、生葉の場合は湿布や温灸としても利用できることを熱弁しました。
余りにも熱く語ってしまったので老齢に男性は少し引き気味でしたが、「味は薬としてなら悪くない」とぶっきらぼうでしたが私に伝えてくれました。
老齢の男性の体調はかなり回復していましたが、私は豆腐メンタルで極度の心配症だったので、今回は街に行くのはやめて、老齢の男性の村までついていき、そこで村の人々に梅干しと枇杷葉湯を振る舞いながら、それらについて熱く語ることにしたのでした。
村に行く途中で枇杷の木が生えていたのを目にしたので、折角なので、入浴剤と湿布や温灸も振る舞いました。入浴剤は、肌をなめらかにし、疲れもとれ、湿疹や汗疹にも効果があることを伝えると、女性の方々に非常に喜ばれました。湿布や温灸は、関節の痛み、筋肉痛、捻挫、打身などの炎症に効果があるので男性の方が興味を示してくれました。
高価にはなりますが、葉と種子を焼酎漬けした湿布用品も霧吹き機と合わせて実演しました。こちらは高価な焼酎に1から2ヶ月漬け込む必要があるので手が出しにくいようでした。がっかりです。でも仕方ないですね。
後日談
この梅干しと枇杷葉湯は広く広まり、枇杷葉湯売りは夏の風物として有名になりました。枇杷葉湯は夏負けや暑気あたり、食中毒や食あたりの予防にも使われたと伝えられています。




