元魔王様、貧窮院に塩を贈る
海辺の村々で特別講義を行なって各村の村長さんと仲良くなったことで利用されていない海辺をお借りすることができるようになりました。塩を作りたいのですと各村の村長さんに伝えたら、揚浜式や入浜式に適していない場所なので驚いていました。塩の相場が変わると困るので作った塩は売りに出さないことを約束しています。
岩場の多い所を借りた私はまず木で高床を作ると、流下式塩田を作りました。そこでは、海水、そして、流下式で濃度が濃くなった海水を汲み上げる風車をそれぞれ設置しています。流下式である程度の塩の濃さになった海水を煮詰めるときにとーっても迷いました。
蒸気利用式塩釜か、4連の真空式蒸発缶か、それが問題です!
4連の真空式蒸発缶は燃費は凄く良いのですが誰かに見つかったときに言い訳が難しいので、蒸気利用式塩釜にしました。これでも相当燃費が浮きます。
数週間かけて塩を作ると、私は貧窮院へとその塩を寄付することにしました。渡した塩はまずザルに入れて貰い滴り落ちてくる苦汁は豆腐を作るために利用して貰います。苦汁が減った塩は貧窮院の倉庫に置いて貰い、災害時用と加工品用の二つの用途で管理して貰うようにしました。防犯のために鍵はディンプルタイプのものに変更しています。蝶番や扉などを壊されたら意味がありませんが......。
味付けだけでなく漬物にも使える十分な量の塩を寄付したことで貧窮院の院長さんたちから大変喜ばれました。塩漬けすることでより長い期間保存がし易くなり、安い時期に食料を調達しておくこともし易くなります。内陸部では、生産地に近いところよりも輸送費がかかるため、塩の価格が2倍から3倍へと距離に応じて価格が増加してしまいます。実質的に菜食が中心となる場合、塩は生物にとって生きるために必要となるため、塩の調達は難しい問題でもありました。羊や山羊さんなどの乳から塩を摂取することもできますが、羊や山羊さんなどに塩を与える必要があります。
折角の機会なので貧窮院の皆さんには塩での加工品をたくさん作って貰いました。各村長さんとの約束で、塩は販売できませんが、加工品なら販売して良いと言われています。柿の葉は防腐作用があるため、柿の葉の塩漬けを作って貰い、弁当に添えて貰うことにしました。私の作り方ですと酢も必要になるので梅酢や柿酢を使っています。今後はより本格的に色々な酢を作っていく必要がありそうです。そうなると砂糖の生産も考える必要が出てきますね。
将来的には、味噌、そして、味噌の底に溜まった溜まり醤油を生産するようになって、普段の食事だけでなく災害時にも役立つ体制をさらに整えていきたいと考えています。
貧窮院では院長さんたちと話あって、商品にならない野菜を譲って貰う代わりに塩漬けをお礼に渡したり、塩漬けの代行も行うことにしました。ワイン好きには従来から生産を増やしたチーズなどの乳製品、日本酒好きには漬物が好まれました。それによって貧窮院の財政状況が多少でも健全化したことで子供たちの環境をより良くすることができました。
柿の葉の塩漬けはどうなったですか? ええっと......、あまり売れなかった柿の葉の塩漬けは、気を利かせてくれた子供たちがお守りがわりにと外に出かける時に持って行ってくれました。優しい子たちです。
後日談
柿の葉の塩漬けをお弁当に添えていた子供たちが食中毒になりにくかったことが広く知られるようになると、柿の葉の塩漬けは特に6月の梅雨の時期に“幼聖さんのお守り”として重宝されるようになりました。ネーミングから察せられる信仰心が怖いです。それを知った数週間は教会関係者から目をつけられないかビクビクして眠りについたのでした。その後、何もなくてホッとしたのを覚えています。
参考文献
[1] 高梨浩樹ら「塩の絵本」農文協




