美しく不思議な水盤
私は自室に戻り、再び水盤をテーブルに置いた。
「さて…まずは、水盤の台座が必要だな…」
私は改めて水盤をまじまじと見た。
ガラス製の水盤は、表面にカットが施され光を受けるとキラキラと輝き美しい。
私は思わず溜め息をついた。
「先程は余裕がなくて良く確認していなかったが…とても美しい水盤だ…」
私は腕を組み暫し考えた。
「やはり…この美しさを更に際立たせる台座が良い…」
目を瞑りイメージしてみる。
「水盤と同じ材質。そして、やはり光を受け美しく輝く台座を…」
私が指をパチンと鳴らすと、目の前にガラス製のテーブル型の台座が現れた。
台座は水盤同様、光を受けキラキラと輝いている。
「これもまた美しい…」
私は満足し頷くと、水盤を台座の上に乗せた。
「まぁ…サビィ!とても美しい調度品ですわね…先程、何かを抱えて帰って来たと思えば、すぐに出て行ってしまったから気になっていましたの」
クルックのウットリとした声が聞こえてきた。
「クルック、これは水盤だ。先程、噴水から突然現れたのだ」
「まぁ!噴水から現れましたの?それは不思議ですわ…でも、どうしてその水盤がサビィの前に現れましたの?」
「それが…私にも分からないのだ。しかし、ザキフェル様は水盤が私を選んだ…と仰っていた」
「つくづく不思議な水盤ですわね…早速使ってみましたら?」
「そうだな…どのように使用するのか…まずは、水を満たしてみるとしよう」
私が手をかざすと、底から水が湧き出し水盤を満たしていった。
「さてと…この水盤は何かを映し出すのだろうか?」
ジッと水盤を見ていると、水面がザワザワと波立ち始めた。
小さな波は徐々に大きな波へと変化し、こちら側へと向かってきた。
そして私の目の前に来ると、まるで意志があるかのように立ち上がり、波の形を保ったままピタッと止まった。
水盤の波は、私と向かい合う形となっている。
その時、突然頭に低く穏やかな声が響いてきた。
『サビィ…私はそなたを選んだ…』
私は驚き、目の前の波を見た。
「この声は…水盤…なのか?」
『そうだ。私を使いこなすのは容易くはない。しかし、サビィならば可能なはずじゃ。現に私の声が聞こえている。この声が聞こえる天使しか、私を扱う事はできない』
「水盤は、私に何を見せてくれるのだ?」
『サビィが望むもの全てを見せよう』
「私が望むもの全て…」
『そう。全てじゃ…しかし、私を使いこなすのは難しい…どのように扱うのかは己自身で模索し掴むのだ。期待しているぞ』
そう告げると、水盤の波はスーッと引いていき、数分後には、水面は何事もなかったかのように静寂を取り戻していた。
この後、私は水盤に相当手こずる事となるが、この時はまだ知る由もなかった。




