表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せの翼  作者: 悠月かな
46/61

対峙

「サビィ様…なぜ、あなたがここに?」


イルファスが驚愕の表情で私を見る。


「イルファス…私が相手だ」

「そんな…私の標的はブランカただ1人。あなたとは闘えません」

「私は、君の愚行を見過ごせない」

「愚行…なんて酷い…サビィ様まで私を侮蔑するのですか?」

「侮蔑など…イルファス。君は一体何をしたか分かっているのか?天使の国を破壊するつもりなのか?」


イルファスは、私の問い掛けに答えない。

俯いたまま、聞き取れない程の小さな声で何かを呟いている。


「…くない…わ…しは、……ない」


私は眉をひそめ彼女を見た。

一体何を呟いているのだろうか?

すると突然、イルファスが顔を上げ目をカッと見開いた。


「私は悪くない!!」


彼女の叫び声が響く。

その声は甲高く悲鳴に近い。

耳をつんざく非常に不快な叫び声。

私は思わず耳を手で塞いだ。

肩で大きく息をするイルファス。


「私は、悪くない…悪いのはあの女!」


彼女は、地上で見守るブランカ達に指を指す。

その瞬間、地鳴りと共に爆音が轟き濛々と黒煙が立ち上る。

ブランカとラフィの姿は、黒煙に包まれ見えない。


「イルファス!何をする!」


イルファスは、私を見るとニタリと笑った。


「私の標的はブランカだと言いましたよね?あなたとは戦いません。私の相手はブランカのみ。ラフィは巻き込まれましたが、まぁ…多少の犠牲は致し方ありません」


あまりにも身勝手な言い分に吐き気を感じた。

こんなにも、ブランカを敵対視する意味も分からない。

爆撃されたブランカとラフィは無事なのか…

私は祈る思いで、2人を包んだ黒煙を見つめる。

徐々に黒煙が晴れてくると、爆発の被害がハッキリとしてくる。

無残にも地面が削られている。

本当にセレンツリーの林が存在していたのかと、疑う程に壊滅的な状態だった。

被害がハッキリするに連れ、2人の安否が心配になる。

その時、ピンク色に輝くドーム状の光が現れた。


「あの光は…もしかして…」


私は、急いでその光のドームへ舞い降り声を掛けた。


「2人とも無事か?」

「ブランカも僕も大丈夫だよ。ブランカのネックレスが、光のドームへと変化して僕達を守ってくれたんだ」


ドームの中から聞こえたラフィの声に、私は安堵の溜め息をついた。


「良かった…もう暫くその中にいた方が良い」


上空へと目を向けると、イルファスが悔しそうに地団駄を踏んでいた。

私は、再び舞い上がり彼女と対峙する。

イルファスをこのままにしておけない…

ブランカの命を狙っているのは確かだ。

そして、多少の犠牲は厭わないと考えている。

セレンツリーの林のように、天使の国を壊滅させる事など造作もない事かもしれない。


「やるしかない…」


自分に言い聞かせるように呟く。

私は、目を瞑り一度だけ大きく深呼吸をする。

そして、目を開け翼から羽を1枚抜いた。

その羽の根の部分を持ち数回振る。

1枚の羽は見る見る間に大きくなり、真っ白な剣へと変化した。

私はその剣を手に、全速力でイルファスの元へ飛んで行く。

そして、彼女の目前で剣を一気に振り下ろした。

既の所で、イルファスが真っ黒な剣で受ける。

剣が交差し、私とイルファスの視線がぶつかる。


「なぜ、私を攻撃するのですか?」


剣を交じ合わせたままイルファスが尋ねる。


「守る為だ」

「守る為?一体何を?」


イルファスが不思議そうに尋ねる。


「ブランカやラフィ…子供達…そして、天使の国だ」


私が答えると、イルファスが突然笑い出した。


「アーハッハッ!天使の国を守る?こんな国を?サビィ様、目を覚まして下さい。天使の国は守る価値などありません」


私は交差した剣を押し返すと、後方へと飛び距離を取った。


「守る価値がない…?」


不可解な言葉に私が首を傾げると、イルファスが苦々しげに唇を歪めた。


「私は、ブランカが憎い!彼女をチヤホヤする奴らも憎ければ、この天使の国も憎い!だから、復讐するのです」

「復讐などしても何も解決しないではないか」


私の言葉にイルファスは不敵に笑う。


「復讐は始まりに過ぎません。私は、あの方と約束しました。私の復讐を手助けして下さる代わりに、この天使の国を譲ると…」

「この国を譲る…だと?」


驚愕の言葉に、私は呆然とした。

そもそも、あの方とは一体誰なのか…


「イルファス、あの方とは一体誰なんだ?先程、聞こえた禍々しい声の主の事か?」

「禍々しい?ああ…あの重厚感があり、低く響く美しい声の事ですね。そうですね…サビィ様には特別に教えましょう」


イルファスは、さも誇らしげな表情で私を見た。


「あの方の事は詳しくは知りません。会った事はないのですから…でも、あの方はいつも私に語りかけてくれます。唯一の理解者とも言えるでしょう」

「今、会った事がない…と言ったか?」


私の問い掛けにイルファスが頷く。


「ええ、会った事はありません。でも、私がサビィ様を慕っている事も、ブランカを憎んでいる事もご存知です。そして、あの方は…私に協力すると約束してくれました。だから、感謝の思いを込めて、この天使の国を譲ると伝えました。あの方は、とても喜んでくれました」


イルファスは恍惚な表現を浮かべている。


「なんて勝手な事を…君は、自分が何をしたのか理解してるのか?」

「ええ…勿論、理解しています。この忌々しい世界を私とあの方で、楽園に変えるのです。素晴らしい世界になります。サビィ様も私と一緒に楽園で共に生きましょう」


イルファスが笑顔で手を差し伸べる。


「断る」


狂気じみた言動と行動に、私は目眩を感じ彼女の手を振り払い睨みつけた。

イルファスは、一瞬驚きの表情を見せたが、すぐさま笑顔に戻った。


「サビィ様に、そのような顔は似合いません。あなたのように美しく完璧な方は、素晴らしい楽園で更に美しく輝けるようになります」

「イルファス…君は狂ってる」


私は剣を構え、呼吸を整えるとイルファスに切り掛かった。

彼女はヒラリとかわし、私の頭上目掛け剣を振り下ろしてきた。

とっさに剣で受け止めると、再びイルファスと視線が交差した。


「サビィ様、私はあなたと戦う気は毛頭ありません。そろそろ、あの方がいらっしゃる頃です」


イルファスは、そう私に告げると空を仰いだ。

空に目を向けると、たくさんの黒い鳥がこちらに飛んで来ている。

徐々に近付くに連れ私は違和感を覚えた。

鳥じゃない…


「あれは一体何だ?」


思わず漏れた言葉に、イルファスが剣を下ろしながら答える。


「あれはコウモリです。」

「コウモリ?」


初めて聞く名に私は眉根を寄せる。


「コウモリは、天使の国には存在しません。あの方が存在する世界には生息しています」


あの禍々しい声の主が存在する世界…

とても嫌な予感がする。

私は、この予感が誤想であって欲しいと願いながら問い掛けた。


「その世界とは…?」


イルファスは真っ赤な唇を不気味に歪め、ニヤリと笑いながら嬉しそうにその言葉を発した。


「魔界です」


私は絶望感に苛まれ、目の前が真っ暗になった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ