告白
私は、ブランカの部屋の前に立っている。
ラフィの部屋を飛び出し、勢いで来てしまった。
彼女は、天使長室から帰っているのだろうか…
まだラフィの部屋にいる可能性もある。
私は扉をノックし声を掛けた。
「ブランカ…私だ」
すぐさま扉が開き、ブランカが笑顔で私を迎える。
「サビィ、どうぞ中へ入って」
私は頷き部屋の中に入る。
「ブランカ、突然すまない。ラフィの部屋には行ったのか?」
「いいえ、もう少ししてから行くつもりだったの。お茶を淹れるわ。掛けて待ってて」
私は木製の丸テーブルの席に着く。
程なくすると、ブランカがマレンジュリテイーに満たされたティーカップを置いていく。
マレンジュリの香りが鼻腔をくすぐり、ささくれ立っていた私の心を癒していく。
「サビィ…大丈夫?顔色があまり良くないわ」
ブランカが私の顔を覗き込む。
(顔が近い…)
早鐘を打つ胸を押さえ、自分に言い聞かせる。
(サビィ…落ち着くのだ…)
私は、心を落ち着かせる為に話題を変えた。
「いや…大丈夫だ。そう言えば…ザキフェル様の用件は済んだのか?」
「え…ええ。大した話しではなかったから、すぐに済んだわ」
「大した話しではない?確か…火急の用件だったはずだが…?」
私は不思議に思い首を傾げる。
「そうなのよ。急いでザキフェル様の部屋に行ったんだけどね。大した話しではなかったの」
「そうか…それなら良いのだが…」
ふと、ブランカの首元のネックレスに目が止まった。
初めて見るネックレスだ。
「ブランカ…そのネックレスは?」
「え?あ…ああ…これ?気分転換に作ってみたのよ」
「この短時間でか?」
「えっ!ええ…作りかけで放って置いたのを思い出して…」
「そうか…」
いささか不自然な気もするが、それよりもブランカに笑顔が戻った事が嬉しかった。
「どうやら、多少は元気が出たようだな…」
「ええ、サビィのおかげよ。話しを聞いてもらって良かったわ。あんな酷い顔で、天使長室なんていけないもの」
ブランカは、ちょっとおどけたように笑った。
彼女の笑顔が眩しく、私はソッと目線を外す。
「サビィ、百科事典届けてくれてありがとう。それから…あの…ラフィはどうだった?何か…言ってた?」
笑顔で尋ねるブランカだが、私にはその瞳に不安の色が見えていた。
「いや…特に…」
ラフィは、エイミーとの事については否定しなかったが友人の1人だと断言していた。
矛盾するラフィの言葉が頭に浮かぶ。
それと同時に、また荒々しい感情が心を蝕み始める。
そして、少しずつ侵食し広がりを見せていく。
再び押さえ込もうと試みるが、到底無理な話しであった。
「そう…ラフィが何を考えているか分からないのよね…」
溜め息混じりに呟くブランカの表情は、不安と悲しみが入り混じっていた。
「私なら…君に…そんな表情をさせない…」
思わず出た言葉に、ブランカが私を見る。
「え…ごめんなさい…ちょっと良く聞き取れなかったわ…」
私は手を伸ばし、ブランカの手を握る。
「サビィ?どうしたの…?」
「私なら!君にそんな顔をさせない」
「え?それは…どういう意味…?」
私は、大きく息を吐くとブランカを見つめる。
「ラフィの話しをしている君は…とても苦しそうだ…私は、そんな君を見ているのが辛い…」
「サビィ…」
「私なら…君を大切にする。そんな苦しそうな顔をさせない…」
ブランカは驚きから目を見開く。
私は、呼吸を整えて思いを言葉に乗せる。
「ブランカ…君が好きだ…」
ブランカは、更に目を見開き動揺を見せる。
「え…?あの…サビィ…?」
私からの告白に、ブランカは明らかに混乱している。
「ブランカ…混乱させてすまない。君に、どうしても気持ちを伝えたくなってしまった…返事はいつでも良い。ゆっくり考えてくれ…」
私は握っていた手を離し立ち上がった。
「サビィ…今まで、あなたの気持ちに気付かなくて…私…」
私を見上げる瞳には戸惑いが見て取れた。
「ブランカ…気にしなくて良い。君を更に悩ませてしまって申し訳ない」
ブランカは、左右に首を振った。
そんな姿も愛らしい。
彼女を抱き締めたい…
強い思いが胸に広がる。
私は、その想いに蓋をする。
「では…ブランカ…また…」
「ええ…サビィ…また…」
ブランカの部屋から出ると、後ろ手で扉を閉めた。
「思わず、気持ちを伝えてしまった…」
信じ難い自分の行動に半ば呆然としながら、私は自室へと戻った。




