護身用ネックレス(ブランカ)
私は、すぐさま天使長室に駆け付けた。
「ザキフェル様、ブランカです」
扉をノックし声を掛けると、優雅なザキフェル様の声が聞こえてきた。
「入りなさい」
私は扉を開け中へ入ると、ザキフェル様は装飾の施された美しい椅子に座っていた。
いつも側にいるアシエルの姿はない。
「アシエルは、間もなくこちらに来るところだ」
私の考えを見透かしたように、ザキフェル様は言った。
「早速なんだが…君を呼んだ用件はサビィについてだ」
「サビィについて…?あの、サビィに何か…?」
私は、何となく悪い予感がした。
ザキフェル様は、深い溜め息をつき言葉を続けた。
「実は…イルファスの事だ。彼女がサビィを慕っている事は知っているだろう?」
「ええ…知っています」
「イルファスは、ただ慕っているわけではない。サビィに異様なほどの執着を見せている」
何度弾き飛ばされても、サビィに近寄ろうとするイルファスの姿が頭に浮かぶ。
あの時の形相は尋常ではなかった。
私は背中に冷たいものを感じ、思わず身震いをする。
「私も常にイルファスを注視しているが…どうも彼女の動向が見えなくなる時が多々ある」
「それは、一体どのような意味ですか?」
私は不安を覚え、ザキフェル様に尋ねた。
「私にも良く分からない。何かが介入してるようなのだが、それが何か検証しているところだ」
何かが介入している…?
そんな話し、今まで聞いた事がない。
漠然とした大きな不安が、私の胸に広がっていく。
「あの…サビィは大丈夫でしょうか?先日のイルファスは、私から見ても尋常ではなかったと思います。以前の彼女とは様子が違っていました」
ザキフェル様は深く頷いた。
「私もイルファスの変化には懸念している。彼女は今もサビィに執着しているからな…しかし、それだけではない。ブランカ…君も用心しなさい」
「え?私もですか?それは一体なぜ…?」
「君は、サビィに一番近い女性だ。今、イルファスはサビィに近寄れない。それでも、諦めきれず遠くから彼を見ている。君に嫉妬している可能性は高い。」
「私に嫉妬…」
まさか…イルファスが私に嫉妬…
彼女のねっとりした視線が頭をよぎる。
サビィへの執着は、相当なものだと私も感じている。
その苛立ちをどこにぶつけるか…
私は考えるとゾッとした。
「イルファスが、私を狙う可能性がある…と…」
私の呟きにザキフェル様は頷く。
「そうだ。サビィには、身を守る為にサークレットを渡しているが…君の身も守る必要がある」
(サークレット…あれは、サビィの身を守る為の護身用具だったのね…)
「ブランカ、君にはこれを…」
ザキフェル様が、自身の両手の平に息を吹きかけると、眩いばかりの光が放たれた。
その光が少しずつ弱くなると、美しいネックレスが姿を見せた。
「このネックレスは、君を守ってくれる。今すぐ身に付けなさい」
私はネックレスを受け取ると、その美しさに心を奪われた。
優しいピンク色の石が連なっている。
光が当たると、キラキラと輝く不思議な石だった。
私は、早速身に付ける。
すると、私の体が優しいピンク色の光に包まれていくのを感じた。
胸に広がる大きな安心感。
私、このネックレスに守られている…そう強く感じられた。
「凄く綺麗…ザキフェル様、ありがとうございます。」
「気にする事はない。ブランカ…サビィには、この事は内密にしてほしい」
「それは…なぜですか?」
私は、首を傾げザキフェル様に尋ねた。
「イルファスの問題は、かなり深刻だ。サビィ1人では抱えきれない。君にも危険が及ぶと知ったら…恐らく彼は、自分の身はさておき君を守ろうとするだろう。私も細心の注意を払う。イルファスの動向についても、近いうちに答えが出るはずだ。そのネックレスは、シッカリと君を守るから安心しなさい」
確かに…サビィなら自分の事よりも私の心配をするだろう。
「分かりました。サビィには話しません。このネックレス大切にします。」
私は、深く頷き答えると天使長室を後にした。




