真実と後悔(ラフィ)
僕は、部屋を後にするサビィの背中を見送った。
「参ったな…まさか、ブランカに見られてたなんて…」
力なくソファに座ると、先程の出来事を思い返してみる。
ーーー2時間前ーーー
エイミーから相談があると言われ、彼女が属する神殿に向かった。
到着し階段を昇っている時に、エイミーが駆け寄り抱き付いてきた。
「エイミー?どうしたんだい?」
突然の事に驚き、彼女の顔を覗き込むと頬が涙で濡れている。
「ラフィ…私…きっと、あの人を怒らせたわ…」
「え?あの人って…誰なんだい?」
僕の問い掛けに、エイミーは涙を拭い答えた。
「アシエルよ。私達…付き合ってるの…」
「え!付き合ってるって…ちょっと待って…アシエルと?」
「そうよ」
「えっと…恋人同士…という事…?」
「ええ…」
僕は混乱していた。
まさか、アシエルとエイミーが恋人同士だなんて…
「ラフィ…?」
あまりの衝撃に動きが止まった僕を、エイミーが不思議そうに見る。
「いや…あまりにもビックリしてね…一瞬、頭が真っ白になったよ」
「そうよね。驚くのも無理ないわ…内緒にしてたし…」
エイミーは唇を噛み俯いた。
「とにかく…場所を変えて話そう。ここは人目につくしね」
「そうよね…それじゃ、私の部屋で話しましょう」
その後、僕はエイミーの部屋に行き、彼女が泣き出した理由を聞いた。
「それで、一体何があったんだい?」
エイミーは、俯きティーカップを両手で握りしめている。
(やっぱり話しにくいのだろうな…)
エイミーは、暫く俯いていたが意を決したように顔を上げた。
「私…アシエルの気持ちが分からなくなってしまったの…彼はザキフェル様に仕えているでしょ?2人で過ごしている時でも、ザキフェル様から声が掛かると彼は駆け付けるの。私も、それは仕方がない事は分かってるの…だから、笑顔で送り出していたんだけど…最近は、頻繁に声が掛かるのよ。理由をきいても教えてくれないし…」
「なるほどね。エイミーは淋しいけど我慢してきたんだね」
「そうなのよ…ずっと我慢してきたの。我儘を言って困らせてもいけないと思って…」
エイミーは、ずっと俯いたままだ。
すっかり冷えてしまったティーカップを握りしめている。
「さっきまでアシエルと会っていたけど…またザキフェル様から声が掛かったの。私…どうしても我慢できなくて、行かないで…って言ってしまったの」
「我慢の限界だったんだね。それで…アシエルはなんて?」
「困った顔で…謝ってた。私…謝ってほしいわけじゃなかった…それで、思わず言っちゃったの…そんな言葉欲しくない!って…」
エイミーの瞳から涙が溢れ、ティーカップに落ちる。
「アシエルは…それなら、私はどうすれば良いんだ…って言ってたわ。私は、不安なの…アシエルに愛されいるのか分からない…」
「エイミー、ちゃんとアシエルと話した方が良い。お互いの気持ちを確認する必要があるんじゃないかな?」
エイミーは、顔を上げ涙を溜めた瞳で僕を見た。
「でも…もし、それで別れる事になったら…」
エイミーの瞳が不安と悲しみだ揺れている。
「それでも…逃げてはいけないんだと思うよ。アシエルを愛してるなら尚更ね。」
「私…怖いわ…もし、アシエルに嫌われたら…それなら、いっそこのままの方が…」
「エイミー、それでは君はずっと苦しいままだよ。それでも良いのかい?確かに、我慢をしていれば君達の関係は壊れないかもしれない。だけど…我慢の上でにしか成り立たない関係は、愛…とは呼べないんじゃないかな?」
エイミーはハッとし息を呑んだ。
「私…アシエルと付き合うなら、我慢しなくちゃいけない…そう思っていた」
「アシエルは忙しいから、我慢しなくちゃ…と思うのも分かるけどね。でも、今の状況は良くないと思う。なぜ苦しいのか、ちゃんと話さないと…アシエルなら大丈夫。君の話を聞いてくれるよ」
僕は笑顔でエイミーを見た。
「そうだ!これを君に…」
僕が指を鳴らすと、テーブルに可憐な淡い黄色い花が一輪現れた。
「エイミー、これはリラムーンの花だよ」
「え!リラムーンの花?初めて見たわ…」
「この花は、僕の部屋に生えているリラムーンが咲かせてくれたんだ。この黄色い花を見ると幸せが訪れると言われてる」
「そうなのね…知らなかったわ…」
「今は、この花を見る事は皆無だと言われているからね。さぁ、この花を君に…」
僕は、リラムーンの花をソッと摘み、エイミーの手の平に乗せた。
「この花をお守りにすると良いよ。怖い時はリラムーンから力を貰うんだ。きっと助けてくれるから」
エイミーは、手の平のリラムーンを見ると嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、ラフィ。私…アシエルと話してみる。このリラムーンの花…大切にするわね」
「うん。エイミー、もう大丈夫そうだね」
「ええ、ラフィに話して良かったわ。誰にも相談できなくて悩んでたの。やっと、前を向けた感じよ」
「それなら良かった」
「ラフィ…この事は内緒にしてもらって良いかしら?」
「勿論だよ。誰にも言わないよ」
「ありがとう。アシエルとの事、後で報告するわね。」
「分かった。検討を祈ってるよ」
僕は笑顔で頷くと、エイミーの部屋を後にした。
エイミーの一件を思い出し、溜め息をつく。
「何が、逃げてはいけない…だ。僕だって、ブランカと向き合えていないのに…」
その結果、ブランカもサビィも傷付けた…
「最低だ…」
僕は自嘲気味に呟き、再び深い溜息を吐いた。




