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幸せの翼  作者: 悠月かな
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水盤の分身

私は、食堂での夕食を終えて自室に戻ってきた。


「サビィ、おかえりなさい。ツリーハウスはいかがでした?」

「クルック、ただいま。ツリーハウスはトラブルもあったが…まぁ、順調に建築する事ができた」

「それは良かったですわ。私も、そのツリーハウスを一度見てみたいですわ。きっと素敵なのでしょうね…」


クルックは、ツリーハウスを思い浮かべてうっとりとしている。


「もう少し落ち着いたら連れて行こう」


私の言葉にクルックがピクリと動いた。


「まぁ!それは嬉しいですわ!サビィ、約束ですわよ。私、楽しみにしておりますわよ」

「約束する。明日からは、いよいよ本格的な学びが始まる。今から水盤と相談するから、大人しくしているように」

「分かりましたわ。大人しくしています」


クルックは、そう言うとピタリと動きを止めた。

私は、水盤に歩み寄り話しかける。


「水盤、明日から子供達の学びが本格的に始まる」


私の言葉に答えるように水盤の水面が揺れる。


『承知している。サビィは学びに私を使用したいと思っている…そうじゃろう?』


水盤は全てお見通しのようだ。

私は頷くと水盤に問い掛ける。


「水盤、私と共に学びに同行してもらいたいのだか…」

『それならば…』


水盤が渦を巻き始め、その中心から小さな丸い物が姿を現した。


「これは…?」

『サビィ…これは、私の分身じゃ。学びには、この分身を持って行くと良いだろう』


私は手を伸ばし、その小さな水盤を受け取った。

大きさは、直径30㎝ほどで小さいものだが、見た目は大きな水盤と同じガラス製である。


『その水盤は、必要な時だけ水が湧き出でる。子供達に様々なものを見せてやりなさい。有意義な学びを期待しておるぞ』

「水盤、感謝する」


水盤は小さな波を立てていたが、徐々に静寂を取り戻していった。

私は小さな水盤をテーブルに置いた。


「さて、試してみるか…」


目を瞑り呼吸を整える。


「水盤よ…湧き出でよ」


声を掛けると、底から水が湧き出て水盤を満たしていった。


「水盤よ…セレンツリーの林を映してくれないか?」


私の声に応えるかのように、水面がユラユラと揺れセレンツリーの林を映し出した。

日が落ち、暗くなっている林にツリーハウスの灯りが所々に見える。

それは幻想的でとても美しい。


「とても美しい…」


私は思わず溜め息をついた。


「この美しく幻想的な風景を子供達に見せたい。映像を残す事はできないだろうか…」

『ふむ…サビィは、この風景を保存したいのじゃな…』

「もしや、できるのか?」

『お安い御用じゃ。』


小さな水盤の言葉と共に、水面が瞬時に凍りつく。


ツリーハウスから漏れる光が氷に閉じ込められ、滲んだ光が幻想的に揺れている。

私はその美しさに息を呑んだ。


「これは…なんと素晴らしい…」

『私は、この風景を氷に閉じ込めた。いつでも再現できる』

「水盤…感謝する」

『子供達の笑顔が見られるじゃろう…』

「もう少し、この美しい光を見ていたいが良いか?」

『良かろう。気が済むまで眺めると良い』


私は頷くとクルックに声を掛ける。


「クルック、相談は終わったから騒いでも大丈夫だ」

「サビィ、騒ぐなどと…私はそんなに騒いでいませんわよ」

「いつも騒々しいではないか」


私はクルックに聞こえないように呟く。


「え?サビィ、何か言いましたか?」

「いや、なんでもない。それよりクルック。水盤が美しい風景を見せてくれている」


私はクルックを壁から外し、小さな水盤に映し出されいるセレンツリーの林を見せた。


「まぁ!なんて美しいのでしょう!これは…これは…素晴らしいですわ!光が滲んで優しく輝いてますわ…」


水盤を覗き込んだ瞬間、クルックは感嘆の声を上げた。


「これは、現在のツリーハウスだ」

「まぁ…そうでしたの…とても素敵ですわ…」


私達は暫くの間、美しく輝く幻想的な風景を見つめていたのだった。






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