百科事典と読書家ラフィ
「さてと…」
僕は、抱えていた百科事典をテーブルに置いた。
改めてパラパラとめくってみる。
「見事に白紙だ…一体これをどうしろと言うんだ?」
半ば諦め気味にソファに身を沈め、読みかけの本に手を伸ばす。
元々、本は好きだけど…悩みがある時や、答えが導き出せない問題がある時に本を読む事も多い。
頭がクリアになり、リフレッシュされるから不思議だ。
今読んでいる本は「惑星の文化と文明」
惑星により文化も文明も違う。
それぞれの惑星が、独自の文化や文明を築いてきている。
それは、とても興味深い。
「どこまで読んだかな…そうそう、地球からだ」
地球と言えば、サビィが大好きな惑星だ。
彼が初めて地球を目にした時、その美しさに驚き暫く固まっていた。
僕はその時の様子を思い出しクスクス笑った。
「あの時は、サビィにいくら声を掛けても無反応だったな。僕の声が全く聞こえないようだったし」
それ以来、サビィは地球に夢中になった。
時折、神殿に備え付けられている望遠鏡で地球を見ているようだ。
そんな事を思い出しながら地球のページを開く。
青と白のコントラストが美しい地球が描かれている。
「うん。やっぱり地球は綺麗だね。サビィが夢中になるのも分かるよ。」
呟いた瞬間、テーブルに置いた百科事典がなぜか床に落ちた。
「どうして突然落ちたんだ…?」
僕はそれを拾う為に近付いた。
「ん?」
百科事典は見開きの状態で落ちている。
拾おうと手を伸ばした時、異変に気付いた。
「何か書かれている…?」
僕は拾い上げ、その見開きを見た。
「これは…地球だ…」
不思議な事に白紙だったページに、美しい地球の姿が描かれていた。
それだけではない。
地球についての説明文も記載されている。
僕はハッとして、先程まで読んでいた本を見返した。
「やっぱり…」
百科事典に描かれていた地球は、僕が読んでいた「惑星の文化と文明」に記載されていたものとソックリだ。
僕はパラパラと本をめくると、ラメール星のページを開いた。
〜ラメール星は紫色で輪がある美しい惑星である。
この紫色はガスの色で、このガスが惑星を守っている。
高度な文明が発達しており、宇宙に存在している全ての惑星の中心となっている。〜
ラメール星について記載されているページを読み、すぐさま百科事典を見た。
すると、ひとりでにページがめくられ、白紙に徐々にラメール星の姿が浮かび上がり始めた。
そして、あっという間にラメール星についての解説や絵が記された。
「今読んだ内容が百科事典に記載されている…」
僕はハッとし本棚へと向かった。
この部屋には、壁一面に大きな本棚がある。
その本棚の両側には、小さな木がが生えている。
ある日突然、一部の床が土に変わり、そこから木が生えてきたのだ。
僕は、小さな木から本棚に目を移した。
ぎっしりと並んだ沢山の本達…
「さて…この本を全て読めば、百科事典にも記されていくのかな…」
既に読み終えた本もあるけど、百科事典に記すにはもう一度読む必要があるだろう。
「よし!やるか。」
僕は、この百科事典が子供達の学びに役立つ可能性を信じ、気が遠くなるような作業に取り掛かる事にした。