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コンプレックス ~心に傷を抱えた少女の一年間~  作者: 下東 良雄
二学期・後半
87/223

第七四話 文化祭(八)

 ――文化祭 二日目


 音楽研究部のライブは、大成功を収めた。

 やり遂げた達成感を全身で感じるステージメンバーたち。

 しかし、観客からの手拍子が一向に止まない。


 パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ


 パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ


 この時、コーラス部のメンバーが率先して手を叩き続けていた。


「し、駿、どうすんの?」


 想像以上の反応に焦る亜由美。


「う~ん、騒音の関係上、アンコールは出来ないしねぇ……」


 駿は悩んだ。


 パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ


 パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ


「音楽研究部の皆さん」


 そこには山辺生徒会長が立っていた。

 満面の笑みを浮かべた会長。


「カーテンコールですよ、さぁ」


 会長の言葉に、駿も笑顔で頷いた。


「じゃあ、みんな。最後に挨拶をバッチリ決めようか」


 全員笑顔で、再度ステージに上がる五人。

 観客からの歓声と拍手が一気に大きくなった。


 駿がマイクを持つ。


「皆さん、今日は音楽研究部のライブに来ていただいて、本当にありがとうございました」


 頭を下げる五人に、改めて拍手が湧いた。


「来校者の皆さま、講堂最後のイベントとして、思い出に残せそうでしょうか?」


 駿の問いに、来校者から大きな拍手が巻き起こる。


「在校生の皆さん、文化祭の良い思い出になりそうでしょうか?」


 在校生から大きな歓声と拍手が湧いた。


「色々あって、アンコールはできないけど……」


 そんな駿の言葉に、会場中からブーイングが飛ぶ。


「悪いね、またライブの機会、つくるからさ」


 笑顔で申し訳無さそうに答える駿に、歓声と拍手が上がった。


「最後に、メンバー紹介させてください」


 歓声や指笛が飛び交う。


「最初に紹介したいのは……オレたちじゃない。キララ! ジュリア! ココア!」


 手招きして、ステージに上るように促した駿。

 ジュリアとココアは二階からステージ脇まで下りてきたが、キララと戸惑っているようだ。


「三人とも早く来いって」


 駿がステージ脇まで行き、キララの手を引っ張って、ステージ上に連れ出す。

 ジュリアも、ココアも、それについてきた。


 ステージに並ぶ三人。

 観客から歓声と拍手が上がる。


「オレたちのメンバーは、ステージに立った五人だけではありません。今回のライブ、彼女たちがいなければ、成功しませんでした」


 三人に笑顔を送った駿。


「演出面を担当してくれた大切なメンバーを紹介します!」


 駿は三人に手を向ける。



「伊藤キララ! 山口ジュリア! 竹中ココア! 三人に盛大な拍手を!」



 観客から歓声と拍手が巻き起こった。

 その光景に呆然とするジュリアとココア。

 キララは笑顔のまま、静かに涙をこぼした。

 そんなキララを優しく抱きしめるジュリアとココア。

 ジュリアとココアの目にも涙が光る。

 ステージ上で抱き合うギャルたちに、観客から惜しみ無い拍手が送られた。


「続いて、ステージのメンバーを紹介します!」


 太に手を向ける駿。



「こいつがいなければ始まらない! オレたちのバンドの屋台骨! ドラム! 小泉 太!」



 一歩前に出て頭を下げた太。

 歓声と拍手が上がる。


「デブちゃーん」


 太と同じクラスの女子から黄色い声援が飛んだ。

 太も顔を赤くして照れている。


 亜由美に手を向けた駿。



「多彩な知識とテクニックでバンドを支えてくれている大黒柱! サイドギター、キーボード、サウンドエフェクト! 中澤 亜由美!」



 観客に頭を下げる亜由美。

 そして、駿に向かってハイタッチ、そしてハグした。

 観客の男子からブーイングが飛ぶ。


「やったね、駿」

「亜由美、オマエのおかげだ」


 お互いに背中を叩き合った。


 達彦に手を向ける駿。



「誰よりも熱いハートを持った男! オレの親友! リードギター! 谷 達彦!」



 歓声と拍手と共に「谷く~ん」という黄色い声援が飛び交った。

 面倒くさそうに手を上げて、軽く頭を下げる達彦。


「オマエもハグしてやろうか?」


 駿の言葉に苦笑いした達彦。

 観客から笑い声が漏れる。


 駿からマイクを奪った亜由美。


「はいはい、私が紹介しますね」


 亜由美は、駿をチラリと見る。

 アイコンタクトを取ったふたり。

 頷く駿。



「今回のライブ開催に尽力してくれた頼れるリーダー! ベース、ボーカル! 高橋 駿!」



 観客から大きな歓声と拍手が巻き起こった。

 「高橋く~ん」という黄色い声援もあちらこちらから上がっている。

 手を挙げて応えた駿。


 亜由美からマイクを受け取り、チラリと幸子を見る。

 『えっ! 私、最後なの⁉』という顔をしていた。


「最後のメンバーを紹介します」


 幸子に手を向ける駿。



「今回のライブを盛り上げてくれた立役者! 美しい歌声で皆さんを魅了したであろう我らの歌姫!」


 駿は、とびっきりの笑顔を幸子に向けた。



「リードボーカル! 山田 幸子!」



 観客から、誰よりも大きな歓声と拍手が沸き立つ。

 その光景に身動きのできない幸子。

 両手を顔に当て、身体を震わせた幸子の肩を亜由美が優しく抱きしめる。

 顔を上げ、涙ながらに頭を下げる幸子に、観客は改めて歓声と拍手を送った。


「皆さん、ありがとう! 音楽研究部でした! また会いましょう!」


 ステージ脇へはけていく八人。

 観客からの歓声と拍手は、しばらく鳴り止むことはなかった。



Next: 第七五話 文化祭(九)



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