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7 追放先で冒険者ギルドを探しました


 荒くれ冒険者は、両手両膝を床につけている。

 俺様の足代わりに、馬となったのだ。


「おい、馬だろ。ヒヒンと鳴け」

「えっ? はい! ヒヒーン」


 ここから最も近い冒険者ギルドに向かって進む。


 いけね。コイツが床に置いたカネ、そのままだったか。

 まあ、いい。あんなものは店の主人にでもくれてやる。

 引き返すほどの金額じゃなかったからな。



 四つん這いの荒くれ冒険者が走る。

 またがっているのは俺様だ。

 当然ながら人々の注目を浴びた。


 それにしても遅い。

 膝をついての四つ足だから、リーチが短いのだ。


「おい、こんなノロい馬がいるか」


 頭を叩いてやった。


「も、申し訳ございません。では特殊スキル【瞬捷三十倍速】!」


 おっ。短い四つ足の動きが、シャカシャカと素早くなったぞ。

 てか……これは馬というよりゴキブリだな。


 迷馬ゴキブリ号がシャカシャカと大通りを走っていく。

 旅客馬車よりは、若干速くなったみたいだ。


「冒険者ギルドに着きました」


 ほう、ここがドルンバ王国の冒険者ギルドか。

 アスリア王国のものと比べたら、ちっちぇーな。


 建物の脇で、ひなたぼっこしている女がいた。

 冒険者にしては、ひ弱に見える。そいつに呼びかけた。


「お前はそこのギルドの者か?」


 『お前』と呼ばれたのが癪に障ったのか、女は一瞬顔をしかめた。

 しかし何事もなかったように、平然とした顔にすぐ戻った。


「はい。そこのギルドで受付をしております」

「ならば受付が何故こんなところにいる」

「本日は午後のシフトで、いま出勤するところです」


 本当はサボってたんじゃないのか。

 まあ、俺様にはどうでもいいことだ。


「そうか。だったらいい話がある」

「どんなお話を聞かせていただけるのでしょうか」

「喜べ。俺様がそのギルドに入ってやる」

「えっ、あの……。おっしゃる意味がわかりません」

「俺様をこのギルドに入れろ、と言ってるんだ」


 女は呆れ顔になったが、軽く頭をさげた。


「申し訳ございませんが、年一度の採用試験は先日終了しました。また来年お越しください」


「なんだと……?」


 ここで『馬』が俺様に説明する。


「横からすみません……。冒険者ギルドというものは他の業界と違いまして、新規採用は年に一度しかないのが普通です。それはここドルンバ王国だけでなく、このマリーリョ大陸全土において常識となっています」


 俺様はチッと舌打ちした。そして女に尋ねる。


「じゃあ、いま人材募集してる冒険者ギルドはどこだ」

「生憎、存じません。一つ一つ当たってみてはいかがでしょう」


 ギルド回りか。まあ、いい。それも面白そうだ。


「ならば、ここから一番近いギルドはどこだ」

「そうですねえ。中央公園前のギルドが最も近いかも知れません」


 すると『馬』がまた横から口を出してきた。


「そ、そこも半年前に採用試験は終わってます」


 含みを持ったような口振りだ。なんか怪しい。


「馬のくせにうるさいぞ。そこに俺様を運んでいけ」

「ですが……」

「急げ!」


 そのギルドへと強制的に向かわせた。



 中央公園前のギルドに到着。ドアを開ける。

 大勢の男がたむろしていた。皆、目つきが悪い。

 そいつらの視線は、四つん這いの『馬』に集まった。


「「「親分!!!」」」


 そういうことか。


 この『馬』はここに来たくなかったわけだ。

 馬の恰好を見られたくないために。


 ヤツらの一人が声をあげた。


「アイツ、親分を……。やっちまおう!」


 俺様を取り囲む。総勢二十人近くいるだろうか。

 集団で力を合わせ、魔導を繰りだしてきた。


「「「火球魔導っ」」」


 なかなか息ぴったりじゃないか。

 まったく仲の良いほのぼの集団だこと。

 だが……。


 余裕。はじき返してやった。


「「「氷塊魔導っ」」」


 余裕。はじき返してやった。


「「「重力魔導っ」」」


 余裕。俺様を止められるわけがない。

 どれもゴミみたいな魔導攻撃だった。


 今度は物理攻撃に切り替えるらしい。

 剣や槍を持ってかかってくる。


 ふう。ガッカリだ。


 コイツらぜんぜんなってない。

 弱すぎる。ガキのお遊戯かよ。


 てか、ふざけすぎだ!


 殺してやりたいが殺せない……。

 四年前に仙薬を飲まされたせいだ。


 仙薬によりバーサーカーから、ネオバーサーカーに変えられた。

 もし人間を本気で殺そうとすれば、途轍もなく不快な気分に襲われる。

 強烈な頭痛や吐き気にも見舞われてしまう。


 ああ、むしゃくしゃする。


 ヤツらの手足を掴んでは投げ、掴んでは投げ、あるいはそいつらの体をぶんぶんと振り回した。ヤツらの体で机や椅子を壊す。壁や床に穴を開けてやった。冒険者だけのことはあって、わりと体は丈夫なものだ。


「やめてください。もう勘弁してください……」


 そう言ったのは『馬』だ。半泣き顔だった。


「……冒険者を新規募集しているギルドを思いだしました」

「おい、てめえ。まさか隠してたのか」

「本当に忘れてただけです。場所がかなり遠いところでしたし」

「ならば、さっさと俺様を連れていけ」



 『馬』に乗り、そのギルドに向かう。


 そこは大規模な冒険者ギルドらしい。

 この国において、三大ギルドのうちの一つに挙げられているとか。



 くだんの冒険者ギルドに到着した。


 ちょっとした農園のように広大な敷地。

 そこに立派な建物がいくつかあった。


 門の銘板に何かが書かれている。


 聖クロモスフェア――それがこのギルドの名前らしい。


 門の前で、ギルド採用試験についてのチラシを入手。

 人材を新規募集しているのは本当だった。


「おい、馬。お前はもういい。とっとと失せろ」

「ありがとうございますぅーーー」


 ヤツは逃げるように去っていった。

 そんじゃ、元の俺様に戻ろうか。

 トランス解除……。



 ===  ===  ===  ===



 はっ? 僕は何を? ここはどこだ?

 そうだった。僕はネオバーサーカーになったんだ。

 たったいまトランスから戻ったばかりか。


 トランス時の記憶がないのって、本当に不便だな。

 でもここはどこだろう……。


 おや? 僕の手にはチラシがある。

 とりあえず読んでみた。


 こ、これは。 


 ギルドの冒険者募集のものだ!!



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