6 追放先の冒険者と戦いました
僕も冒険者なのだと告げた。
「笑わせるな。こんなガキが冒険者だと? 痛い目に合わせてやる」
怪力男が歩いてくる。本当に暴力を振るってくるつもりのようだ。
それならそれで構わない。実際、怪力男が殴りかかってきた。
ただこの怪力男は、さっきのチンピラ三人組とはワケが違う。
かなりの実力者なのは、見てわかる。
だから特殊スキルを発動する必要がある。
あまりやりたくないのだが……まあ、仕方ないだろう。
この大陸では初トランスになる。
いくぞ――――。
=== === === ===
俺様はネオバーサーカーとなった。
バシッ
てのひらで怪力男のコブシを受け止める。
「ふんぐっ。手が動かない……。痛い。痛い、痛い、痛ぁーーーーい!」
大声をあげる怪力男。俺様はそいつのコブシを握りつぶした。
何故そいつは『怪力男』などと呼ばれてたんだ?
まったく怪力なんてなかったぞ。むしろ『非力男』だろ。
この非力男の腹に、軽く膝蹴りをくれてやった。
「ぐへっ」
気絶してしまったようだ。
ああ、つまらん。
冒険者が俺様を睨んでいる。
さらには文句を垂れた。
「てめえ。食事中に暴れられてると、メシが糞マズくなるんだ!」
「何をほざいてやがる。暴れる前から、マズいマズいと連呼してただろ」
「おい、その態度はなんのつもりだ! ぶっ殺されたいのかっ」
いいねえ。面白い。そう来なくちゃ。
来いよ。来い、来い、来い!
「ああ、ぶっ殺されてえよ。早く殺してみろ」
「この小僧が!」
冒険者は立ちあがり、両手を伸ばしてきた。
てのひらをこっちに向けている。
「ほう、魔導を使うつもりか。とりあえずやってみな」
「死ねぇ! 岩裂粉砕波ぁーーーーーーーーーーーー」
ドゴーーーーーーン
爆発が起きた。しかし、ただそれだけだ。
痛くもかゆくもない。なんかガッカリした。
冒険者がポカンとしている。
「あ、あれ? 効いてない……。じゃあ、これならばどうだ。煉獄大火焔!」
今度は火の玉が飛んできた。
やはりたいしたものではなさそうだ。
このまま体で受け止めても問題なかろう。
だが、服が焦げるのは……。てのひらで受け止めた。
「コ、コイツ、手で受け止めやがったぞ」
はあ? この冒険者、何を驚いてるんだ。
むしろこっちが驚いたぞ。こんなショボい魔導だったことに。
「おい、真面目にやれ。俺様をぶっ殺すんだろ?」
「くぅーーーーっ、こうなったらアレを出すしかない」
「おっ、いいねえ」
「特殊スキル奥義、瞬捷十倍速!!」
冒険者が走りながら殴りかかってくる。非力男のパンチよりも数段速い。だが非力男と比べたところで、まったくの無意味。つまり呆れるほどショボかった。
余裕で避けてみせる。
冒険者のパンチは空振りした。
「何ぃーーーーーーーーー!?」
不思議そうな顔をしている。
俺様も首をかしげた。
「なあ、さっきのって本当に十倍速だったのか?」
「んぐぐぐ。くそっ、それじゃ、瞬捷三十倍速!!!」
今度は連打で殴りかかってきた。しかしすべて俺様に掠りもしなかった。
こっちとしても、そろそろ飽きてきた。だから少し反撃に転じてみる。
冒険者のコブシを余裕でかわしながら、軽く腹パン。
冒険者は気絶した。なんだよ、呆気なさすぎる……。
つまんね、つまんね、つまんね、つまんね、つまんね。
なんで気絶する? つええヤツとやりてえよ!
冒険者の足首を掴み、その体をぶんぶんと振り回す。
「起きろ起きろ起きろ!」
床に打ちつけた。
起きたか? いいや、起きちゃいねえ。
弱ったなぁ、つまらん。
代わりに起きたのは、近くに倒れていた怪力男。いいや、非力男だった。
その非力男に「そいつを起こせ」と命じた。
非力男が冒険者の頬を何度も平手打ちし、どうにか目を覚まさせた。
俺様の顔を見て怯える冒険者。
「店には、きちんと代金を払います。お願いですから、お許しください」
そう言って、持っていた紙幣をすべて床に置いた。
「はあ? なんだ、それは」
「りょ……料理の代金です」
「そんなものに興味ないが」
「で、では何をすれば? なんでも言うことを聞きます」
ほう、なんでも? いいね。何をさせると面白い?
正常時の俺様だったら、何を欲するだろうか。
ああ、アレだ。働き口に困ってるようだった。
どっかの冒険者ギルドに入りたがってたっけ。
てことで――。
「だったら、お前、馬になれ」
「ふえっ、馬ですか?」
「早くしろ。二本足で立つ馬がどこにいる」
冒険者は慌てて膝をつき、四つん這いとなった。
その背中に俺様がまたがる。
「あ、あの……。何を?」
「おい、馬。最も近くの冒険者ギルドまで、俺様を乗せていけ」
「は、はいっ」
そういえば非力男はどこ行った?
アイツ、逃げやがったか。
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