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39 王妃の兄との決戦になりました


 ジャガーコンドルは、俺様を乗せて飛び立った。

 地上からベスが見送っている。


 しかしこのまま王宮へ帰るつもりはなかった。

 これから向かうのは内陸部。敵軍の片割れが進んでいったという方向だ。


 ふう、と溜息が出た。まったく……。

 どうしてこの俺様が、面倒な仕事をやろうとしているのだろう。


 見つけたぞ。敵軍だ。


 軍隊の規模は一万人といったところか。

 ジャガーコンドルから飛びおりた。


 敵兵らが大騒ぎする。


「おい、魔物だ!」

「魔物が来たぞ」

「まさか魔王か?」


 慌てすぎだろ。魔物でも魔王でもねえし。


 敵兵らをジロッと睨みつける。

 どこからか声が耳に届いた。


「二人の魔仙を殺害し、軍をほぼ壊滅にしたのは貴様だな。やはり魔王か」


 姿は見えない。


「魔王なんかじゃねえ。だが、魔仙とやらをったのは俺様だ。お前こそなんだ」


 ちなみに多くの兵士を殺したのは、その魔仙だけどな。


「我が名はボーグ。魔仙の一人だ。この国の王妃イェルネの兄でもある」

「また魔仙か。やれやれ。いったい何人いやがる」

「かつて六魔仙などと呼ばれていたが、いまではこの場の三人のみとなった」


 どうせ三人とも、さっきの赤兜や黒兜のように、たいしたことないのだろう。

 魔仙ボーグが姿を見せないまま叫ぶ。


「死ね!!!」


 突如、この地一帯を包む爆発が起きた。


 赤兜・黒兜の放った魔導よりも、遙かに威力は大きかった。

 舞いあがる砂埃が視界を塞ぐ。やがて空気が澄んできた。

 兵士どもが死体となって転がっているのが見えた。


 当然、俺様はその程度で死ぬわけがない。

 つまり巻き込まれた兵士どもは、またもや無駄死にだったのだ。


「馬鹿な……。まったく効いてないのか」


 魔仙ボーグの声だった。

 ところが……死体の中から立ちあがる者もいた。


 アンデッドか?


 そうではなかったようだ。

 立ちあがったのは二人の兵士。


「ボーグ、貴様なんてことを!!」

「ボーグ、姿を見せろ!!」


 なんと仲間割れか。


「いいだろう」


 黒い影が現れた。


 その影は五十歳前後の男の姿を形作った。

 どことなく王妃イェルネに似た顔立ち。

 そいつが声の正体だったようだ。


「なんてことをしてくれたんだ、ボーグ!」

「仲間をなんだと思ってる、ボーグ!」


 二人がボーグに対して怒っている。

 ボーグはその二人を見て微笑むのだった。


「そうか、そうか。さすがは魔仙。二人とも生き残ったか。これは好都合」


 黒い空気が周囲一帯に広がっていく。

 二人の魔仙は次第に苦しみ始めていった。


「ううう。これは……ボーグの闇魔導か」

「間違いない。ボーグの魔導ドレインだ。魔力が吸われていく」

「ボーグめ、好都合ってこのことか。我々の魔力を奪えるからと……」


 へえ、面白い。

 ボーグは周囲から魔力を吸えるのか。便利な魔導があるものだ。

 てことは俺様の魔力も奪われてる? まあ、勝手に奪うがいい。


 魔仙二人が倒れた。


 俺様はまだピンピンしてる。

 もっともっと吸われたって構わない。


「ニセ魔王よ、遊びはココまでだ。地獄の苦しみを味わえ!」


 俺様がニセ魔王扱いされてる……。


 黒い空気の中に歯が生じた。歯が集まり、口となった。

 あっちにもこっちにも口がある。なんて空気だ。


 だが面白い。これがヤツの闇魔導か。


 何百あるいは何千とある口は、兵士らの死体をバリバリと食い始めた。

 倒れた二人の魔仙も、全身を食われていく。


 俺様の体も例外ではなかったらしい。

 腕や足、顔、腹などに噛みつかれている。


 しかし俺様の皮膚や体は硬過ぎて、噛み砕けないようだ。


 鬱陶しいし、くすぐったい……。

 無数にある口をすべて叩き落としてやった。

 俺様にかかれば、もちろん一瞬だ。


 ボーグが歯ぎしりする。


「このニセ魔王め……」

「次はお前の番だな」

「貴様の攻撃がここまで届くかな?」


 黒い空気がボーグの方へと流れていく。

 ボーグの周囲の空気は、ますます黒さを増した。


 なんだ?


 まだ食われていない死体を、そっちに蹴り飛ばしてみた。

 死体は途中で止まって落ちた。なるほど……。

 ボーグの周囲の黒い空気は、防壁のようになっていたのだ。


 再度、死体を蹴り飛ばす。今度はもう少しだけ強く。

 結果は同じく黒い防壁を越えられなかった。


「カッカッカッ。この闇魔導バリアはどんなものも通さない!」


 しかし笑っていたボーグは、途端に表情を変えた。


「何っ!? どうしてだ……」


 こっちが訊きたい。どうしてだ。


「おいおい。何も通さないんじゃないのか」


 俺様の体はあっさり闇魔導バリアを越えられたのだ。


「闇魔導は無敵のはずなのに」

「無敵? おかしいな。余裕だったぞ」


 ボーグの頭を軽く叩くと、黒い空気は晴れあがった。


「ま、負けを認める……。どうか命だけは助けてほしい」


 大勢の兵士の命を奪っておいて、面白いヤツだ。


「ちなみに命を助けると、何かメリットがあるのか」

「ある! カネをやる。ヨーブル諸島に属する国々の国家予算をすべて回す」

「カネか。カネはあまり嬉しくないのだが」


 ボーグが考え込む。


「だったらヨーブル諸島ごとすべてくれてやる。そこの国民も財産もすべて貴様の所有物だ。自由に使って構わない」


「ほう。それは魅力的だな」

「ふううう、助かった。これで貴様との戦闘は、平和的に終了だ」


 よくわからんが。


「そんじゃ、終りょ……」


 俺様が言い終わる前に声が聞こえた。


「戦いはまだだぁーーーーー」


 戦闘はまだ終わりじゃない? まだ戦える? いいねえ。

 だがコイツは戦意を失っている。代わりが他にいるのか?


 てか、その声は……。

 空から着地する人物がいた。


「お、お前っ」

「戦いなさい、エアス!」

「望むところだが、俺様は誰と戦えばいい?」


 美しい口元が笑う。


わらわが相手になる」

「ミリカが?」



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