21 バーサーカーに会いに行きました
なんと、僕のほかにもバーサーカーがいるらしい。
「とても恐ろしいヤツだ。あの強さは人間ではない」
ノーロが言った。彼もそのバーサーカーについて知っているようだ。
はたしてどのくらい強いんだろう。まさかトランス時の僕より上なのか。ライバル心が芽生えたわけではないけど、ちょっと気になった。だからノーロに尋ねてみる。
「僕の暴れっぷりは見たよね。そのバーサーカーと僕とで、どっちが強そう?」
「どっちも格上すぎて判断つかないよ。でもたぶん同じくらいじゃないかな」
ネオバーサーカーと同等ってこともありえるのか。へえ、すごいや。一気に興味が湧いたぞ。このまま連れられていくのもいい。てか、ぜひとも会わせてもらいたい。
僕を拘束している男たちに言う。
「早く連れてってよ。さあ、急いで!」
「「「えっ???」」」
首をかしげる男たち。
僕はもっと話を聞きたかった。
「そのバーサーカーってどんな奴なんだ?」
ノーロを足先で小突くと、説明してくれた。
「親分って人は若くてイケメン風……。だけどバーサーカーになったとたん、狂った猛獣のように暴れ出すんだ」
忘我状態となるんだな。てことはネオバーサーカータイプではなく、通常のバーサーカータイプだと思われる。さらに聞いてみると、こんなことも話すのだった。
「連れの女の人がいて、ビックリするほど綺麗な人なんだ」
「そのバーサーカーは彼女連れってことか」
「うん。羨ましいよ。彼女、清楚系って感じで……僕のタイプなんだぁ」
アジトに到着したようだ。
「ここが親分の邸宅だ」
邸宅……?
それにしては簡易すぎる。ただ大きいだけだ。
「さあ、入れ」
男たちに押されて入っていく。
ノーロは歩きながら手グシで髪を整えている。
「髪がどうかした?」
「だって……あの人がいるから」
ああ、そうか。とても綺麗な人がいるんだっけ。
でもノーロは泥棒として捕らえられている身だぞ?
髪型なんて気にしてどうする。
その人ってそんなに綺麗なのか。
……見たくなってきた。
「ひったくりを捕まえてきました」
男たちに前方へと押し出される。
「まあ、ひったくり?」
女の声だ。隣の部屋から出てきた。
ノーロの言っていた清楚系の綺麗な人って……。
うん、確かに。彼女はとてもとても綺麗な人だ。
「エアス! 無事だったのね」
「驚いたよ。カーニャがいるなんて」
別の部屋から男も出てきた。
「何っ、エアスだと?」
「アリク、元気そうだね」
「おお、本当にエアスじゃないか」
ノーロが僕たち三人の様子にポカンとする。
「えっ? えっ? えっ? どういうこと」
かつて僕はアスリア王国で、ギルド『天使の羽音』の一員だった。アリクとカーニャも『天使の羽音』に所属していた。しかしギルドの冒険者たちは、王妃イェルネの命令により、国外の別々の港へと追放された。だけどこの二人だけは、兵士長の計らいで、同じ船に乗せてもらっていたのだ。
二人は美男美女の新婚夫婦であり、現在アリクが二十六歳、カーニャが二十歳。ちなみにギルド仲間に婚約を打ち明けたとき、最もショックを受けていたのがジャイだった。ジャイは清楚系美女カーニャの大ファンだったのだ。
で、なんでアリクとカーニャがここに?
二人に話を聞いた――。
……アスリア王国を追放された二人は、この町から程近い港に到着した。職を求めて冒険者ギルドの門を叩いた。だけどアスリア大陸出身ということで、どこからも門前払い。それについては僕も似た経験をしたばかりだ。
断られたギルドの建物から出ようとしたときのこと。ちょうど、町長が魔物退治の依頼にやってきた。魔物とは二体のミニドラゴンだった。しかし驚いたことに、ギルドはそれを無理だと断ったのだ。
それでもギルドだろうか。臆病にも程がある。
アリクとカーニャは町長に声をかけた。自分たち二人ならば退治できると。さっそく宣言どおり、町を襲う二体のミニドラゴン退治に成功。空き家だった邸宅に、しばらく泊めてもらえることになった。その後も魔物退治で活躍し、町の守護者のような存在となった……。
「バーサーカーって聞いて驚いたけど、そういうことだったのか」
「そうなの。エアスの力をちょっと借りちゃった」
カーニャは肩をクイッとすぼめた。
綺麗なだけでなく、可愛らしさもある。
旦那のアリクが羨ましい。
それはさておき、実際には力を貸したわけではない。そもそも遠く離れていたわけだから、僕が貸すことなんて無理だ。ではどういうことかというと、それこそがカーニャの特殊スキルと関係するのだ――。
彼女の持つ特殊スキルは【コピー&付与】。他人の特殊スキルを、別の他人に付与するという能力だ。つまりスキルのない人を、スキル持ちに変えられるのだ。
ただし制限がある。スキルの『コピー元』も『コピー先』も、カーニャの『親しい人』でなければならない。また、コピーしたスキルを自分に付与することもできない。
「だけどさあ、今回どうして僕のスキルをコピーしたの? いつもだったらギルド長のスキル【超爆破】をコピーして、アリクに付与して使わせてたのに」
「【超爆破】は町の中じゃ無理! もちろんわたしのスキルは『劣化』コピーよ。確かに威力は半減するわ。でもギルド長の【超爆破】は危険すぎる。それをアリクに付与して使わせたら、一瞬で町全体が消滅しちゃうから」
「危険なのは僕の【トランス】も同じじゃないか。劣化コピーとはいったって、周囲に甚大な被害をもたらしちゃうよ」
「大丈夫。短時間ならば、アリクが暴走したって問題ないわ。もしヤバそうになったら、わたしが止めた息を吐けばいいだけのこと」
まあ、それは言えるかぁ。カーニャが誰かにコピーを付与していられるのは、息を止めている間だけだもんな。彼女が息を吐けば、付与したコピーは解けるのだ。
つまりバーサーカーのアリクに魔物と戦わせ、もし町や人々への攻撃を始めそうになったら、スキルを解除してやめさせればいいわけだ。
カーニャの特殊スキル【コピー&付与】は便利だ。
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