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10 採用試験でダンジョンへ行ってくることになりました


 各班すべての試験前検査が終了。


 本試験の一つ目の内容が明らかになった。

 あるダンジョンから魔石を持ち帰ってくるというものだ。


 ちなみに魔石は魔物の生命源。魔石を得るには魔物を殺せばいい。


 今回使用されるダンジョンは、大小二つのものだ。どちらもこのギルドが所有しているらしい。ギルド員のトレーニングのために購入したものだとか。さすがは大手ギルド<聖クロモスフェア>だ。


 ただし大小どちらのダンジョンにも、超高難度の魔物は出現しないとのこと。

 その点は安心していいそうだ。まあ、採用試験なのだし当然だろう。


 僕たち受験者は、二班に分け直された。

 一つのダンジョンに入るには、人数が多すぎるからだ。


 大きなダンジョンには約六百人、小さなダンジョンには約四百人が挑むこととなる。僕は前者の大ダンジョンに振り分けられた。


 それぞれ指定されたダンジョンへと入っていく。


 こっちの大ダンジョンでは、皆が我先にと進んでいった。僕はマイペースで行くことにした。時間がたっぷりあるからだ。もしかして、これがダンジョン経験者の『余裕』なのかもしれない。


 この試験で僕の実力を見せつけてやろう。

 もう「エース君」なんて呼ばせないぞ!


 前方で誰かの声が聞こえた。


「わっ、スライム見っけ」


 魔物を発見したようだ。


「くそっ、隠れやがった」


 受験者が悔しがっている。

 ほかの受験者たちは冷めていた。


「スライムだろ? そんなやつの魔石がポイントになるもんか」

「そうそう。難易度の低い魔石じゃ、試験突破は無理ってことなのに」

「でも珍しいことに、全身ピンク色だったわ」

「マジ? レアってことでポイントが高く……なるわけないな」


 えっ、ピンク色のスライムだって?

 もしかして、それってきのうの……。

 まさかな。


 だけど気になったので、僕も岩陰を探してみた。


 さっきの受験者は、早々にスライム探しを諦めたらしい。

 この付近には、もう僕しか残っていなかった。


 うーん、駄目だ。やっぱり見つからない。

 僕もピンク色のスライムを諦めることにした。


 先へと進む。


 遠く前方に、三つの分かれ道が見えてきた。

 どの通路を選ぶべきか。右か、左か、真ん中か?


 左に行ってみようかな。

 といっても、その分岐点はまだ先だ。



 ピキーーーー



 後方からスライムがひょっこり現れた。


 あっ、ピンク色……。

 間違いない。神殿廃墟にいたスライムだ。


 こんなところにいたのか。

 さっきは見つからなかったのに。


「きのうは回復魔導、ありがとう」


 スライムに近づこうとする。しかし逃げられてしまった。


 いいや、スライムは完全に逃げたわけではない。

 ただ僕から大きく距離を取っただけだ。


 臆病なのは当然だ。スライムといえば最弱クラスの魔物。人間が怖いのだろう。

 だけど困ったぞ。このスライムを狙う受験者がいないとも限らない。

 さっきの受験者だって、また探しにくるかもしれないし。


「いま多くの人間が、魔物を狩るためにここに来てるんだ。キミはダンジョンから早く逃げた方がいい」


 しかし逃げようとしてくれない。

 やはり人間の言葉はわからないのか。


 このままだと受験者たちに殺されてしまう。

 ああ、心配だ……。


 ピンク色のスライムは、僕の背後にずっといる。

 僕が振り返ると、逃げるように距離を取る。

 それでも歩きだせば、後ろからついてくる。


 少しずつ距離は縮まった。懐いているってことか。

 なんだか可愛い。ぴょこぴょこ跳んでる。


 手持ちの堅パンがある。僕の非常食だ。

 ちぎって投げてみた。食うか? 

 堅パンに近寄るが、食べるようすはない。


 やっぱりスライムはパンなど食べないか。

 それでもスライムはさらに寄ってきた。


 そして……肩に乗った。

 激カワイイぃーーーー。


 しかしすぐにおりた。また距離をとる。


「おいで」


 呼んでみた。

 スライムはじっと動かない。


 おっと。遊んでいる暇はなかった。


 分岐点の真ん前に到着。

 そこから左へと進もうとした。



 ピキーーーー



 飛び跳ねて騒ぐスライム。動きが激しくなった。

 どうしちゃったのだろう。


「キミ、危険だから早くダンジョンから出ていきなよ」


 僕は分岐点を、そのまま左の道に入った。

 ピンク色のスライムは、もうついてこなかった。

 可愛かったけど、ヘンなスライムだったな。



 しばらく歩いた。


 分岐点からは、ずっと一本道が続いている。

 さっきのスライム以外、なかなか魔物が現れない。


 まいったな。この道はハズレだったのか?

 試験をトップで突破するつもりなのに……。


 どこまで一本道が続くのだろう。


 足音が聞こえてきた。受験者たちのものだった。

 ぞろぞろと引き返してくる。まさかこの先、行き止まり?


 かなりの大人数だ。こんなにも左の道に進んできたのか。


 足音には話し声も混じっている。

 僕は様子確認のため、岩陰に隠れた。

 話し声に聞き耳を立てる。


「くっそ、行き止まりだったなんて」

「長い通路だったのにな」

「しかも魔物は一体も出てこなかったし」

「こりゃ、ついてねえや」


 どうやら本当に行き止まりだったらしい。


 あっ、もしかして……。

 スライムはこの先の『行き止まり』を、僕に知らせようとしてたのか。


 引き返す集団の中に有名人がいた。


 あの巨漢……。多くの武闘大会で名をあげたガウガってヤツだ。

 向こうの金ピカ武具男は、大商人の息子ルキルクとか言ったっけ。

 あっ、大神官の娘『聖女様』もいる。シールラって名前だったよな。


 有名人がそろいもそろって、こっちの通路に来てしまったようだ。

 皆、ドジだな。ちょっと笑える。おっと、僕もそうだった。



 ドドドドドドド



 ん? なんだろう。

 この音は地震か。



「うあーーーー」



 大きな叫び声が聞こえた。

 さらに別の叫び声もあがる。



「ドラゴンだ!!」



 この大ダンジョンにドラゴンが現れた?

 僕は岩陰から出た。叫び声のもとへと走る。


 うわっ、本当だ。

 大きなドラゴンがいる。


 大勢の前に立ちはだかり、通路を塞いでいる。

 これでは皆、分岐点まで戻れない。


 受験者たちの顔は青ざめていた。



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