理系による地の文、分解!
皆さん地の文がなかなか書けなくて困ったことはないでしょうか?
かくいう私もいつも地の文が短くなってしまったり、ただの説明文になってしまっていました。
しかし地の文が何で構成されているのか、分析してみたところ、ただの説明文を卒業することができました!
このエッセイは、そんな私による私のための地の文解説です。
私が忘れてまた説明文を書いてしまった時に、思い出すためでもあります。
もちろん『わたしがかんがえたさいきょうのじのぶん』ではなく、上手な作家様の作品を分析した結果ですのでご安心ください。
これを読んだあなたはただの説明文を卒業して、小説らしい地の文が書けるようになっているでしょう!
なお、視点についてはいろんな方が書かれているので、あえてここでは説明しません。
少なくとも、一人称視点・三人称単視点が分かっている状態で読むことをお勧めします。
まずは例として、ひとつだけ説明文を書きます。
-例---------------------------------
その少女は短いスカートをはいている。
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これは見たまんまのただの説明文です。
これを一人称視点で小説のように書くとこうなります。
-例1--------------------------------
その少女は短いスカートをはいている。
昔はこんなのはいていなかった気がする。
長いスカートだって似合うのに、今は敢えて短いスカートをはいている。
僕はそれを見て、彼女らしいなと思った。
おそらく十人が見れば十人可愛いと思うだろう。
彼女もそれを分かって、その短いスカートをはいているに違いない。
歩くとひらりひらりと揺れるスカートに、もしかして見えるんじゃ……なんて動揺する人は多いだろう。ちなみに僕は断じて動揺なんてしてない。断じてだッ!
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ちょっとおおげさに書きましたが、それはパターンを網羅する為です。
この文を分解していきたいと思います。
1. その少女は短いスカートをはいている。
冒頭で書いたように、見たまんまのただの説明です。
2. 長いスカートだって似合うのに、今は敢えて短いスカートをはいている。
この文は比較です。
短いスカートに対して、長いスカートという対照的なものと比較して、短いスカートを強調しています。
3. 僕はそれを見て、彼女らしいなと思った。
この文は心理描写です。
「僕」から見て、どう見えたか、どう思ったかを書きます。
一人称視点・三人称単視点でのみ書くことができます。
ちなみに三人称単視点だと、「Aはそれを見て、彼女らしいなと思った。」となります。
また「僕」が予想していたこととどう違ったか、同じだったか、なんかも印象を比較して描写することができますね。
予想が願望だったりすると、また地の文に深みが出てきます。
4. おそらく十人が見れば十人可愛いと思うだろう。
この文は周りからの評価です。
主人公と相手(ここでは少女)以外の他の人たちから見てどう映るかを書くことで、客観的な見方を表現することができます。
5. 彼女もそれを分かって、その短いスカートをはいているに違いない。
この文は相手の心理(の予想)です。
この例文の場合だと、短いスカートをはいている少女自身がどんな思いでそれをはいているかを書くことで少女の人となりを知ることができます。
ただ少女の心理まで描写してしまうのは、やるべきではありません。
なので「違いない」と最後につけることで、視点主(僕)から見た「少女はこう思ってるんだろうな」という予想になるようにしています。
6. 歩くとひらりひらりと揺れるスカートに、もしかして見えるんじゃ……なんて動揺する人は多いだろう。
この文は4とほぼ同じですが、周りへの影響を書いています。
短いスカートをはくことによって、周りへどんな影響があるか。
人の反応だったり、物理的な影響だったり、さまざまな影響を描写することができます。
それによって未来への想像をかきたてます。
7. ちなみに僕は断じて動揺なんてしてない。断じてだッ!
最後は曖昧ですが、なんか面白いことを書く(笑)です。
文章がうまい人は、地の文の塊の最後の一文でくすりを笑わせるのがうまいです。
例えば揶揄ってみたり、少し外した別の例を出したり、おどけてみたりなどで面白くすることができるかもしれません。
揶揄う例:
短いスカートなんてはくやつの気がしれない。
外した別の例:
かぼちゃのパンツをはいた方がいいんじゃないだろうか。
おどけてみる例:
僕が代わりにはいたらどうなるだろうか。
8. 昔はこんなのはいていなかった気がする。
(「ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される」で有名なとびらの先生に教えていただきました!)
この文は前後の時間との比較です。
昔(以前)と今を比較して、少女の心理の変化を描写しています。
数日経てばもうはかないだろう。
のように未来と比較して書くこともできますね。
位置は2や3の前後あたりに書くのが良さそうです。
以上が私が分解してみた地の文の内容です。
これを複数の事実に向けて、必要なものだけ選択して書きます。
上の例では、少女のスカートにのみ着目して書きました。
ですが実際はスカートだけに着目することは稀で、髪型だったり、顔立ちだったり、着方だったり、いろんな事実に目を向けます。その他にも少女はどんな仕草や動作をしていたか、なんかも地の文でよく書きますよね。
それら全てに対して2〜8全てを書くと、さすがに重たい文になってしまいます。
なのでその文を書くことによって読者にどう見せたいのかを意識して、書く書かないを選択します。
地の文が書けない!
地の文が説明くさい!
もっと格好いい地の文を書きたい!
と思った方は、ぜひ事実+2〜8を考えて文章に厚みをつけてみてください。
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例2
街にネオンの明かりが灯った。(1)
暗い街道を歩いてきた人たちにとっては、灯台のように見えるだろう。(4)
街は少しずつ賑やかさを増していった。(6)
例3
彼はグラスを落とした。(1)
僕はやはりやったか……と苦笑いした。(3) (1)
彼もしまったという顔をしている。(5) (1)
グラスではなくプラスチックのコップだったら、もう少しマシな結果になったというのに。(2)
一瞬で地面まで到達したグラスは、予想通り甲高い音を立てて割れた。(3) (6)
他にもこんなのあるよ!という方は、感想欄などで教えていただけると私が喜びます。