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ショートショート4月~

日本一の男

作者: たかさば
掲載日:2020/04/26

俺は日本一!


この日本で、てっぺんに立つ男!


俺の下には惨めな落伍者がわんさかいるんだぜ!


俺に勝てなかったやつらが、俺を見上げているんだぜ!


俺は今日もこの勝者の山の頂上から、惨めな敗者を見下ろしてんだ!


ははは!お前らほんとに惨めだな!


俺にはかなわない、そうだろ?


俺は毎日努力を重ね!


俺は毎日勝負を挑み!


俺は毎日勝利するまで挑んできたんだ!


勝ちは毟り取るもの!


負けたままで日を跨ぐなど許されない!


俺は微塵も気を抜くことなく!


今日も戦いに挑み、勝利する!


今日の相手は・・・ん?



何だこれは!!



アップデート・・・だ・・・と・・・?



これじゃ問題の答えがわからないじゃないか!



四択問題のゲームサイトのトップを誇る俺。


毎日20時間を問題の答え収集に費やし。


すべての答えを暗記して、一位の座を守り通して来ていたと言うのに。



一気に下がる、俺の地位。



アップデートの追加問題数は・・・未公開?!


ふざけるな!



俺の築き上げた記録が、今、崩壊を始める。


俺のスマホの中の勝者の証が、消えてゆく。


手のひらサイズの栄光が、消えてゆく。


俺の努力が、塗り替えられてゆく。


俺が今まで費やした時間が、昇華してゆく。


俺の自慢の記録が。


俺の唯一誇れる記録が。


俺の手元に残ったのは。


栄光をなくした、敗者のデータ。



俺は日本一。


毎日ゲームで日本一。


俺以上の猛者はいない。


ずっとこもり続けて20年。


このゲームを始めて10年。


ゴミにまみれて。


罵詈雑言を浴びて。


それでも勝ち続けてきた、俺。


唯一の誇れる記録。


その記録が、塗り替えられた。



今から誇れる何かを手に入れるのは難しい。


今から俺は、するべきことは。




「おーい!かあちゃん!めし!!」




まずは、腹ごしらえ。


腹いっぱいになったら、何とかなるだろ。


俺の長所は、能天気なところ。


明日は明日の風が吹く。


なんとかなるさ。



働いてないけど、何とかなってるし。


髪の毛抜けてるけど、何とかなってるし。


歯が何本か抜けたけど、何とかなってるし。


右目が見にくいけど、何とかなってるし。


足の先の感覚がないけど、何とかなってるし。


たまに心臓バクバクしてるけど、何とかなってるし。


なんとかなるなる。



そうつぶやきながら、俺は意識をなくし。



意識をなくし。





目が覚めた時には。


自分すら、なくしていた。




俺は、いったい、誰なんだ。


俺はいったい、何をやっていたんだ。



おれは、なんだ。



おれ・・・?



・・・。



「兄貴もなあ・・・。ゲームばかりやっててつまんない人生だったと思うよ。」


「ひきこもりってワケじゃなかったんだけどね。」


「俺たちに自慢できることがさ、ゲームの一位の記録だけだったもんなあ・・・。」


「ドン引きしてることすら気が付いてなかったからな。」


「どこで踏み外したんだろうなあ・・・。」


「何か自慢できるもんがほしかったんだろうな。」


「自慢できると信じたものが、スマホの中の日本一の称号ね。」


「お兄さんも、一生懸命だったんじゃないの。」


「一生懸命の方向を間違えると、悲劇だよな・・・。」





ものを言わなくなった日本一の過去を持つ男は、ここに生涯を閉じた。


だれも、彼の功績を称えるものは、いなかった。


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