第四話 オッサン驚く
『グルルルル』
ダンジョンに出るとすぐに、魔物と出会ってしまった。
「ではではご主人様、前方をご覧ください。前からキマイラがやって参ります」
前からライオンの頭と、猿の身体と、蛇の尻尾を持った魔物が『グルルルル』と唸りながらこちらに近寄ってくる。
「うわわわ……大丈夫かよ」
俺の戦闘力なら、まず勝てることが無い。
一噛みで終わりだ。
「はい、ご主人様。私がいるので安心してください!まずあのキマイラを異空間収納で、収納してください」
「へえっ?いやいや……生き物は大体入らないだろ!?てか触れないわ!無茶苦茶いいまんがなこのお嬢ちゃん!」
思わず怪しい関西弁になるぐらいすごいこと言ったぞ。
俺の戦闘能力で近寄ったら即死だよ即死!
「いえいえご主人様、大丈夫です。離れたこの場からキマイラを収納してください」
そう言っているうちに目の前にまで来ていて、噛みつく寸前にまで来ている。
『グガァァァァ』
「うわっあああぁあ入れ!」
フッと音も無くキマイラが消える。
「素晴らしいですわ!流石ご主人様」
えっマジに収納したぞ。今確かに自分が収納した感覚だけはあった。
「なんだこれ!これって生き物でもなんでも入るのか?触れなくてもいいのか?距離も関係なし?」
「はい、距離は今のところ約100メートルと言ったところですかね」
すげーこれなら魔物も怖くない。
「魔物の強さとかは?」
まあ俺よりもはるかに強いキマイラが異空間収納に入ったから、ある程度の強い魔物は入るのだろう。
「関係ありませんよ、異空間収納に入るのに魔物のレベルとか強さはないですよ」
「マジか!滅茶苦茶すごくないか!無条件に収納できるのならどんな相手にも勝てるってことか?」
「その通りでございます。それとその収納したキマイラを思い描いて、それを処理してください」
「処理?」
言われた通りに収納したキマイラを思うと、目の前にキマイラの姿が浮かび、頭の中に詳しいキマイラの情報が入ってくる。
何だこれ!キマイラが生まれた瞬間のことから、俺に捕まるときまでの情報が一気に頭の中に入って来る。
「それでキマイラを解体してください。思い描いたことが全て可能です」
そう言われて目の前に浮かんだキマイラを、いつもしているみたいにナイフで解体するつもりで胸を切り裂き、中から魔石を取り出すようにイメージする。
【レベルが上がりました】
レベル1→レベル12
そんな文字が、目の前に浮かぶ。
「レベルがあがったぞ」
「はいもちろんですよ、生きた魔物の魔力を全て吸収しましたから普通に倒すよりもはるかに効率がいいでしょう。それでは魔石を完全に吸収してみてください」
リルラはまるで俺と同じ画面を見ているかのように、その画面を指さした。
「俺と同じ画面が見えるのか?」
「はい!ご主人様とリルラは繋がっていますもの」
リルラが俺を見つめてぎゅっと抱きしめる。
ロリコンのつもりはなかったけどこんな可愛い女の子相手だからドキドキする。
言われた通りに魔石を吸収をするとイメージする。
【スキル獲得】 威圧 敏捷
【基礎力上昇】 体力5 魔力3 力1
「リルラこれは?」
身体から力が湧く感じがする。
「はい、魔石を吸収すると、魔物からのスキルと基礎力を獲得します。ご主人様だけの能力ですよ」
基礎力というのは体力と魔力だ。どんなにレベルが上がってもこれはレベル1からほとんど変わらないらしい。
レベルが上がると、力が1上がるぐらいと教えられた。
だからゲームとかとは違ってレベルアップしても体力と魔力はほとんど変わらない。
レベルアップして強くなっていくのは、力がわずかに上昇してスキルと魔法を覚えていく。
レベルが10上がる時に、運が良ければ体力と魔力のどちらかが1ぐらい増えていくことがあるらしい……というのも俺は基礎力が低く、魔法が使えないから戦う事が出来なかったから、レベルが全く上げれられないから、そのことはよくわからなかった。
「すごいこれからは俺にも戦えるのか!」
戦えないというお荷物ではなくなる。
「はいご主人様は、なろう系では最強の能力ですわ!」
リルラはにっこりと笑う。
なろう系とかわけのわからないことを言うが、とりあえず聞かなかったことにする。
「これで俺は魔物にビビることがなくなったぞ!無能ではないんだ」
あいつらに無能と言われることはかなりきつかった。これで人並以上になれる。
「それとまだまだ能力がありますが、それは後程にしませんか?ダンジョンの外にでて久しぶりの日光を浴びたいですし」
「えっ?吸血鬼なのに日光浴?」
吸血鬼なら灰になっちゃうよ
「やだわご主人様!吸血姫って呼んでくださいよ!あんな下劣な種族と一緒にしないでください。私はご主人様の元の世界の貧弱な種族とは全く違うものですからね」
「すひまへん」
笑顔で俺のほっぺたを引っ張るリルラが怖い。
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「うわ外に出れた」
生きて出れないと思っていたけど、無事にダンジョンから出れたよ。嬉しい!
「うーん、やっぱり太陽光は肌にヒリヒリして気持ちいいわ」
それってやっぱり吸血鬼として身体に良くないのでは?と思うがツッコミはやめておこう。
「でもすげーレベルがあがった」
ダンジョンの魔物を全て吸収していったらレベルがかなり上がった。
「はいご主人様、素晴らしいわ、ご自分でステータスを見てください」
リルラが、俺の現在のステータスを見るように勧めてくれた。
レイ
レベル 82
体力 2101
魔力 7556
力 511
魔法 火魔法 水魔法 土魔法 風魔法 光魔法 闇魔法
スキル 異空間収納 言語能力 威圧 敏捷 変身
身体強化 毒無効 熱無効 異常状態無効
成長率上昇 肉体硬化 魔力回復 体力回復
魔力操作 死霊操作 鑑定 言語能力
称号 真の力に目覚めた勇者
使い魔 リルラ
「うわ、いろいろ増えた!称号すら変わったぞ」
巻き込まれた人から真の力に目覚めた勇者に変わっている!
「ご主人様が強くなったからです。素晴らしいわ! 」
リルラが俺をうっとりしながら見つめる。
すでにユーキ達より強くなっている。
「俺はこれからどうしよう」
勇者として強くなったけど、俺を見殺しにしようとした奴らとは、もう一緒に活動する気はないし会いたいとも思わない。
「うーん、テンプレ通りに行くと、次はここは勇者達と一切関わり合いにならず、冒険者ギルドに行って冒険者になってSランクになって大儲けしてスローライフするのが筋ってものでしょうか?」
何だよテンプレって? リルラは時々変なこと言うよな?
まあ確かに、魔王討伐は奴らにでも任せて、のんびり結果を待つ方でいいや。
大体、魔王を倒して日本に帰れる確証も無い。俺は危険を冒してまで、魔王を倒す気にもならない。
日本には帰りたいけど、元々何の恨みも無い魔王を倒す気もさらさらない。
「わかった。リルラの言う通りに冒険者になるよ」
Sランク云々はどうでもいいとして、金は稼がないといけないからな。
「ありがとうございます。これですんなりとストーリーが続きます。では、街にでて冒険者になってから、収納した魔物の素材を一気に売って奴隷でも買いましょう!」
リルラはニコニコしながらさらっととんでもないことを言ったぞ。
何だよストーリーって!
いやそれよりも!
「奴隷ってなんだよ!」
奴隷なんか別にいらないぞ。
「テンプレ通りなら、このまま獣人の若い女の子の奴隷を購入して、ムフフな事をするのが筋ですわ!まあ先に、ご主人様の童貞をリルラがたっぷりと頂きますけどね」
「いやいやリルラだけでいいよ」
一般人よりコミュニケーション能力が不足している俺は、これ以上人と関わりたくない。
そうでなくてもユーキ達で、若い子はもうこりごりだ。
「まあ嬉しい!」
そう言ってリルラは俺に抱きついてキスをしてきた。
ロリコンではないけど生まれて初めてのキスは、痺れるぐらい気持ちよかった。
遂に目覚めたオッサンの能力。
さてさてこれからどうなるでしょうか?【キートン山田のナレーション風】
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テンプレ
*チート能力
*突然のチート化
*コミュ障
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