【レッドゲート】
「確か声かけたのはこの辺りよね??」
「ええ、そうですそうです。この大樹見覚えありますし。」
あれから、【D.Card】を拾い忘れていた事に気付いた2人は歩いてきた道を戻りながらやっとの思いでたどり着いていた。
「取り敢えずここまでの道のりは分かるけど、初めに呼び出された場所はここじゃ無いよね??」
「ええ、ちょっと離れてしまっていたので記憶を辿りながら探してみます」
と、自分が初めに気付いたであろう方向に向かいながら答える。
「そういえばずっと気になっていたのですが、ベルさんはなんの用事があってこの森に居たんです?」
と歩きながら質問すると、ベルさんは「ちょっとギルマスに仕事頼まれててねー」普段この時間はルーキーハントしたりギルドハウスで寝てるから、と言って辺りをキョロキョロと見渡していた。
「ギルドにギルドハウスなんて物まであるんですね」ゲームみたいだと、付け足しながら答えていると目的の場所にたどり着いたみたいだ。
多分この辺に落ちてるはずなんだよなぁと、足元をスマートフォンで照らしながら探って行くと、黒いカードが落ちているのを見つけた。
「あった!!ありましたよ!!これですよね??」と目当ての物を見つけたので右手に持った【D.Card】をベルに見せようと振りかえるよりも先に、後方5m付近に居たベルから危機迫った声で「その場所から離れ……」と、最後まで聞き取る事が出来ず、まるで天地が逆転したかのような目眩の後に衝撃を味わい、咄嗟のことに目を瞑ってしまうのだった。
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「……ッつ、いてて……」
何事かと、今しがたぶつけたであろう首元を摩りながら目を開けるとそこは……
「ここは何処だよ??」
目前に広がるのは、空気は淀み、肉眼でも確認出来るほど紫色の霧に包まれた、おどろおどろしい雰囲気を纏った墓地であった。
彼の後ろには、高さ2.5mほどの赤く怪しい光を放つゲートがそびえている。
そして、彼の持つ【D.Card】は鈍い光を発しながら、その表面には文字が表示されているた。
ーーー『ダンジョンゲートへの侵入を感知』
ーーー『【死者の楽園】に挑戦します』
ーーー『ダンジョンLv.??』
ーーー『規定人数に達した為【レッドゲート】に変わりました』
ーーー『未確認情報が3件』
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今日、私が『裏世界』に来て真っ先にこの森に訪れたのはギルドマスター〔通称:ギルマス〕に仕事を頼まれていたからである。
「ベルちゃん悪いけど、いつものルーキーハントついでに『戒樹の森』に行ってきてくれないかな?」
とギルマスの『ルーペ』さんに言われたのである。
ルーキーハントとは、『裏世界』に来たばかりの人を見つけ手助けしてあげたり、ギルドに入らないか交渉したりなどだ。まぁそのための見回りだな。毎日大体は『裏世界』に切り替わった最初の1時間ぐらいは、ルーキーハントと称して見廻りを行なっている。
「それは全然良いけど、どうしてまた『戒樹の森』に??」
と疑問をぶつけてみた。
「情報が入ってねー『戒樹の森』に魔素が集まってるみたい」
「あぁダンジョンですか。了解です。」
私の返答を、うんうんと頷いた後にルーペさんは、ただ……と言葉を繋いで、
「今回の魔素濃度がいつもよりかなり濃い見たいだから、見つけても入らないようにね」
と最後に忠告を受けた。
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「その場所から離れて!!」
と、私は叫んだが言い終える前に彼の身体は、青色のダンジョンゲートに飲み込まれてしまった。
この時の私はまだ、なんとかなると思っていた。ダンジョンゲートは基本出入り自由だから。すぐに彼を呼び戻そうと、ダンジョンに近付くよりも早くダンジョンゲートに変化が訪れていた。
「なっ……!!『レッドゲート』だと!?」
いくら今回、魔素濃度が高いからって規定人数1人のソロダンジョン、しかもレッドゲートなんて聞いたことない!
「くっ……」
すぐに、【D.Card】を起動して電話アイコンをタップし目当ての名前を見るけると、慣れた操作ですぐに電話をかける。
「ルーペさん非常事態!!」
とギルドマスターであるルーペさんに電話をかけると、すぐさま事のあらましを説明した。
「うんうん。なるほど、ソロダンでレッドゲートか……こりゃ今回のルーキーは諦めたほうがいいね……。」もう時刻も【01:45】だし戻って来てとりあえず睡眠とりなさいとのルーペさんからの返答に、【D.Card】を持つ右手に力が入る。
「気持ちはわかるけど、例えルーキーがクリアしたとしてもいつ『ダンジョンブレイク』するかも分からない限り、ずっとそこに居るわけには行かないだろう?ダンジョンブレイクするにせよリセットされるにせよ、どちらにしても確認する必要はあるからメンバーを交代で見張りに立たせるつもりだよ」
だから一度戻って身体を休めておくんだ、とルーペからの言葉に「はい」と短く答えて、ベルは『戒樹の森』を後にした。
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