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喪失から始まる物語  作者: 高畑
1/1

フリージア

R15指定しています。

遺体の描写がちょっとだけあるからです。

もしかしたら、人間のどろどろもこれから書くかもです。

また、死を題材にしているので、感受性が豊かな方にはあまりお勧めできません。

宜しくお願いします。

あの日、俺は全てを喪った。

富、名声、家族……そして命。


足元にごろりと転がっている自分を見下ろす。

着てるシャツは真っ赤に……いや、既に血は乾いて赤黒い。

溜息を吐こうとして、自分が息を吐きだせないことに思い至った。

衝動的な笑いが込上げるが、笑うのにも息が要るらしい。笑えない。

なんと可笑しなものか。こんなに可笑しいのに笑えないとは。

その上、舌打ちさえもできない。

生きていれば、できていた当たり前の事。

それが、できない。

死とはこういう事なのか。


諦めと共に取り留めのない事を考えながらも、あたりを見回す。

どうしてこんなことになったのだろうか。

自業自得。

そう言ってしまえばそれだけの事。

溜息ばかりが……吐きたくとも吐けないが。


俺は今、俗に言う幽霊という存在か。

生前、得た知識を思い出そうとする。

意識した瞬間に、言葉や画像や音やらが雑多に頭の中へ流れ込んできた。

それらの波にのまれて危うく、自分を見失いそうになる。

意識の端から、ひょいと聞きかじった知識を摘まむ。

-物理的な容れ物から弾き出された虚数体。-

今の俺が正にそれということか。


ところで、ここはどこなのだろう?

再度、周りを見回してみる。

時計とは反対周りに、ゆっくりと一周。

一周?

何かがひっかかった。

そうだ。俺は体を動かした覚えがない。

見た景色も、滑らかに動いていた。

下に視線を落とす。俺がいる。

更に真下を意識する。何もない。

俺は、俺の体を足元にある、と思っていた。

だが、今の俺には足がない。手もない。体もない。

多分、顔もないのだろう。

俺は何度目かの溜息を……いらいらが募るだけだな。これは。


さて、ということは意識すれば見たいものが見れる訳か。

これはこれで面白い。


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