入団②
「第10支団へようこそ、アリアネス嬢。それと、セレーナ。」
「御世話になるわ、アルフォンソ殿。そしてなぜセレーナをご存じなの?」
意気揚々と支団に乗り込んだアリアネスをアルフォンソは苦虫をかみつぶしたような顔で出迎える。
「セレーナは先日、うちの騎士団の入団テストを受けてトップで合格したというだけです。」
アルフォンソに横に立つ、金髪のたれ目の男が悔しそうに説明する。
「あら、あなたは?」
「…第10支団副師団長のルイ・ハーミットです。」
「ルイ副支団長ですね。それでは…。」
アリアネスは一歩後ろに下がり、セレーナとともに拳を胸に付ける騎士団の礼をとる。
「私、アリアネス・バレンターレとセレーナは本日付で帝国騎士団第10支団に入団させていただきます。住民の生活を守り、弱きを助け、悪をくじく騎士団の教えにのっとり、日々精進することをここに誓います!」
よろしくお願いしますと頭を下げるアリアネスとセレーナの姿にアルフォンソとルイはポカーンと口を開けて固まってしまう。
「入団の正式な許可をいただけますでしょうか?」
頭を下げたまま、アリアネスが聞くとアルフォンソがはっとして「許可する」と応える。
「やったわ!セレーナ!とうとう騎士団入りよ!」
「お嬢様、はしゃがないでください。」
「だって!だって!」
きゃっきゃと戯れるアリアネスとセレーナを見て、アルフォンソが我にかえる。
「よっ、よく騎士団入団の誓いを知っていますね。」
「もちろんですわ。国を守る騎士団になるのですから事前準備は完璧に済ませてあります。」
「…ものを知っているだけではこの国は守れませんよ、アリアネス嬢。」
ルイが吐き捨てるようにつぶやく。
「もちろん、承知の上です。ですからこの第10支団で多くのことを学ばせていただければと思っております。若輩者ですが、どうぞよろしくお願いいたしますわ。」
アリアネスはにっこり笑った。
アルフォンソside
「どうしてあんな女を我が騎士団で面倒をみることになったんだ、アル!」
支団長室に入ると同時に副支団長のルイが詰め寄ってくる。無理もない、自分の一存で決めたことでルイにも相談しなかった。
「あの女が男漁りのために騎士団入団を迫っているという噂が流れているのを知っているだろう!」
「もちろん知ってる。そして、そんな女を受け入れた愚かな騎士団だとほかの支団から馬鹿にされていることもな。」
「ならどうして!」
ルイが悲鳴のような声を上げる。支団長の椅子に座り、ふっーと息を吐いた後、ルイの方に向き直る。
「ルイ、俺は第10支団をただの雑兵集団で終わらせるつもりはない。」
「…。」
「俺達は騎士団の入りたい市民の不満を解消するためのゴミ溜めだ。どんなに頑張って誉れとなるようなでかい任務は回ってこない。」
「…それがあの女どもとどう関係がある。」
「利用するんだよ、あの女を。貴族の娘のあのお嬢ちゃんがわがまま言えば、こっちにでかい任務が回ってきて、俺達も上に這いあがれるかもしれない。」
「アル…お前、そこまで考えて。」
「貴族のお坊ちゃんごときに負けるわけにはいかねーんだよ。」
アルフォンソとルイはにやりと笑って拳を打ちあった。