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捨てられ伯爵令嬢は野獣に勝てるか  作者: めろめろす
第二部
53/58

騎士団本部

アリアネスside

アリアネスとセレーナは廊下を歩いてるキウラ達の後ろをそっと離れる。アルフォンソに騎士団の場所は大体聞いていたので、セレーナに目線で合図したアリアネスはその方向へと急ぐ。

(…だんだんと騎士が増えてきたわね。)

騎士団の建物が近づいてきたのか、訓練をしているような野太い声が大きくなっていく。セレーナと廊下を進んでいると、開けた場所に出た。そこでは大勢の騎士が剣を振り下ろして鍛錬している。

(ここだわ!)

広場の向こうに大きな建物がある。どうやらそこが騎士団の本部のようだ。セレーナに指で合図して、広場を突っ切る。もう少しで建物の入り口に到着しそうになった時。

「お願いします!どうか、オネオンに会わせてください!!」

「しつこい!お前のような女は知らないとオネオン副団長はおっしゃってる!」

「お願いします!」

騎士団の本部は、外の大通りにすぐに出られるようになっており、本部の前の城壁は頑丈な扉になっているようだ。その扉の近くで騎士団と女性が騒いでいる。

(何かしら?)

その女性のあまりに悲痛な声を聞いてしまい、気になってしまったアリアネスがそちらに視線を向ける。

「っ!マリアさん!」

「お嬢様!?」

扉の前で警備をしている騎士団にすがっている女性がマリアだと分かったアリアネスは、アルフォンソの言いつけを破り、思わず声を出してしまった。

「!なんだ、お前たちは!」

アリアネスとセレーナに気づいた訓練中の騎士たちが、集まってくる。

(しまった!)

本部入口への道を塞がれ、アリアネスはその場に立ち止まる。

「お嬢様…。」

セレーナもアリアネスの後ろに付き添う。

「お前たち、いったい何者だ!どうやってここに入った!」

筋骨隆々の騎士が剣を抜いてアリアネス達を警戒する。

「わたくしたちは、この国の王族を見つけ出したアルフォンソ様の部下ですわ。」

アリアネスが姿勢を正して男に返答する。

「ほぉ、それを信じろというのか?」

男がにやつきながら距離を詰めてくる。

「真の騎士であれば、迅速に真実を確認する必要があるのではなくて?もし、わたくしがあなた方の王族の命の恩人であれば、わたくしを傷つければあんたはとんだ恩知らずということになります。」

「生意気な口をきく…。」

男は短気なのか、剣を振り上げ、アリアネスに対して振り下ろす。

「もし大事な賓客であればこのような所に来るはずがない。愚かな女め!」

「お嬢様!!!」

「ありがとう、セレーナ!」

男の剣がアリアネスに届く前に、セレーナが隠し持っていた短剣をアリアネスに投げる。それを受け取ったアリアネスは男の剣を受け流した後、その懐に入り、みぞおちに膝蹴りを入れた。

「ぐぅあ!!」

突然の攻撃に対応できなかった男は、まともに蹴りを喰らってその場に倒れこむ。

「くそ!お前ら!」

倒れこんだ騎士を呆けてみていたほかの騎士がやっと正気に戻り、剣を構える。

「セレーナ、もう構いません。暴れていれば加護を受けた騎士も出てくるでしょう。」

「…行き当たりばったりの性格は少し直されたほうがよろしいかと。」

「行きますわ!!」

アリアネスは淑女にあるまじき、ダークな笑みを浮かべてまわりの騎士を蹴りや投げ技で倒していく。

「え?アリアネスさん!?」

その騒動に気づいたマリアが驚愕の声を上げる。

「マリアさん、どうしてこちらにいらっしゃるの?」

雄叫びを上げながら突っ込んできた騎士を回し蹴りで沈めながらアリアネスが尋ねる。

「えっと、私の夫がマゴテリアの騎士だからです。どうしてアリアネスさんたちがここに!」

扉にへばりついたマリアが声を張り上げて返してくる。

「マリアさんの旦那様は騎士なんですか?」

冷静な顔で騎士の攻撃に応戦しているセレーナが聞き返す。

「えぇ、そうです。こちらの騎士団で副団長をしています。」

「副団長!?それは本当ですか!」

襲いかかってくる騎士を投げ技で放り投げるアリアネスが聞く。

「え、えぇ。本当です。オネオンはマゴテリア騎士団の副団長です。」

「いったい何の騒ぎだ!!」

マリアが叫ぶと同時に、騎士団の本部から二人の男が出てくる。

1人は青い髪を肩のあたりまで伸ばし、メガネをかけた軽薄そうな男と、黒い短髪の精悍な男だった。

「リィル団長、オネオン副団長!」

アリアネスに倒された騎士が声を上げる。

「んー?いったい何をしてるんだ、お前たちは?まさか女二人にやられている訳じゃないよね?」

リィルと呼ばれた男はニコニコと笑っているが、明らかに怒りのオーラを放っている。

「それは!!」

「…情けない。お前らがやっていた訓練など、所詮遊びに過ぎなかったということか。女ごとき倒せないとは。」

オネオンが鼻で笑うと、アリアネス達に倒された騎士は悔しそうな顔をしながらも「申し訳ありません」とうなだれる。

「それにしても、君たちは一体誰なのかなー?」

「…ですから先ほどから申しております。マゴテリアの王位継承権を持つザガルダント様を城にお連れしたアルフォンソ様の部下ですわ。」

「…。」

リィルが後ろに控えていた騎士に目で合図すると、騎士が急いで本部の方へ引き返す。

「ふーん、そんな賓客がどうしてこんなところにいらっしゃるのかな?」

「わたくしたちは王女様のお部屋に招かれたのですが、途中で道に迷ってしまったのです。こんなに大きなお城ですので。」

アリアネスがにっこりと笑うと、リィルも笑みを返してくる。そんな問答を続けいてると、先ほど本部に引き返してきた騎士が急いで戻ってきた。

「団長!!」

そして、リィルに耳打ちする。話を聞いていたリィルの表情が引き締められる。

「…どうやらあなた方のお話は事実のようだ。…私の部下が失礼な真似をして申し訳ない。」

リィルとオネオンがその場で頭を下げてくる。

「すぐに王女の部屋まで案内させよう。」

リィルがアリアネスとセレーナを促すが、「少しお待ちください。」とアリアネスが制止する。

「申し訳ないと思ってらっしゃるのであれば、どうかひとつ願いを聞いていただけませんか?」

アリアネスがコテンと首を傾げると、リィルが「なんなりと。」と言って恭しく頭を下げた。

「扉の前にいらっしゃる女性は、オネオン副団長の奥様です。どうか面会を許可していただけませんか?」

「っ!」

アリアネスの言葉を聞いたオネオンの体がびくっと震える。マリアはオネオンを見て、悲しげな笑みを浮かべていた。


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