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捨てられ伯爵令嬢は野獣に勝てるか  作者: めろめろす
第二部
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ザガルードの真実②

「いったいどういうことなのか詳しく説明してください!」

「んー、お前の腕の中にいると眠くなるな。」

「まぁ、ラシード様。」

「…イチャイチャするのは国に帰ってからにしてくれませんか。」

ラシードに詰め寄っていたが、すぐに籠絡されてしまったアリアネスをロヴェルがたしなめる。

「ロヴェルー、お前、国に帰ったら覚えとけよー。」

「そんな横暴な!」

子猫は悲鳴を上げているロヴェルを無視する。

「…それでこの男は本当にマゴテリアの王族なのか。」

キウラが地面に座り込むザガルードを警戒しながら子猫に尋ねる。

「間違いないぞ。なぁ、ザガルダント。」

子猫が目の前に来るのをザガルードは忌々しそうに睨み付ける。

「何を言ってるんだい?僕は山賊の頭領、ザガルードだ。そんな名前じゃない。」

「その緑の髪と瞳はマゴテリアの先代の王とそっくりだな。生きていてくれて助かったぞ。」

「っ!だから違うと言っているだろう!人の話を聞け!」

「ラシード様!」

激昂して立ち上がり、子猫を踏みつぶそうとしたザガルードの腹にアリアネスが回し蹴りを食らわせる。「ぐっ!」と苦しそうな声を出してその場にしゃがみこむザガルードのまわりを子猫は楽しそうに歩き回った。

「昔はあんなに可愛かったのに随分とひねくれちまったなー。」

「黙れ!」

咳き込みながらも未だ鋭い視線で自分を睨み付けてくるザガルードの顔を子猫は尻尾でぺしっとたたく。

「いくら俺でもお前が王族から除名された理由までは掴めてねーんだよ。だから教えてくれると助かるんだがなー。」

「僕は王族なんかじゃない!」

「強情だねーこりゃ。」

子猫が飽きたように大きなあくびをする。キウラ達もラシードの言っていることが本当なのか嘘なのか判断できずに押し黙っている。

「…そういえば。あなた、わたくしにマゴテリアの王女にしてあげるというようなお話をされていましたわね。」

アリアネスは腕を組んで先日のことを思い出す。確かに、ザガルードは自分と結婚すればこの国の王女にしてあげるというような発言をしていたはずだ。

「まさかそれは事実なの?」

「っ!余計なことを覚えているみたいだね、オルドネアのお嬢さん。」

ザガルードが苦笑する。

「ほぉ、俺の婚約者と結婚すると。随分となめたこと言ったみたいだな、小僧。」

「ちょ!やめろ!」

不機嫌そうに唸る子猫がザガルードの頬を尻尾で強めに何度もたたく。

「本当にお前がマゴテリアの王族なのか。」

キウラがザガルードの首筋に剣を押し付けながら聞くと、ザガルードはにやりと笑う。

「僕が王族に見えるのかい?山賊も僕がこの国の王族だなんて馬鹿げてるよ。オルドネアの民っていうのは馬鹿ばっかりなんだね。」

「貴様!」

キウラが怒鳴ろうとするのを子猫が尻尾を振って止める。

「お前が王族じゃないって言うなら聞き流せ。…お前の姉貴のミリアンネが妖精に操られてるみてーでな。このまま行くとたぶん死ぬぞ。」

「っ!」

ザガルードの体が一瞬だけ震えるがその表情は全く変わらない。

「ついでに言うと、その妖精はなー、お前の国を乗っ取るつもりだ。それはマゴテリアを自分が治めてやろうとかそんな腹積もりじゃねーぞ。マゴテリアの全精力を持ってオルドネアを打ち取るためだ。たとえ戦争に勝ったとしても、この国はボロボロになって崩壊するだろうな。」

「…だからなんだ。山賊である僕にこんな国のことは関係ない。盗賊稼業ができなくなるなら、別の国に行くだけさ。」

「…そうか、ならいいさ。お前の姉貴とお前の国が亡びるってだけだ。大したことはないな。アリアネスー、行くぞ。」

「あ、ラシード様。」

しばらくの間その場に座り込んだまま黙り込むザガルードを見ていた子猫は、顔を上げないザガルードに興味をなくしたようでアリアネスの腕の中に飛び込んでくる。

「キウラ、お前たちもだ。ロヴェルはその女を抱えてこいよ。」

「どこに行く!」

ザガルードが声を上げるが、ラシードは見向きもしない。

「さっさと王都に行かねーと大規模な戦争が始まっちまうぞ。今のところ、できる外交官が頑張ってくれてるみたいで、小さな小競り合いしかねーけどな。」

「アルフォンソ様が王都で交渉をされているんのですね!」

キウラが嬉しそうに笑う。

「そうだ。だからお前たちもさっさと加護を受けた奴を探して始末しろ。…猶予は一刻もない。」

「分かりましたわ。」

低くなったラシードの声を聞いて、ことの深刻さを理解したアリアネスが表情を引き締めて返事をする。

「…それと、マゴテリアの王女であるミリアンネはバライカから長年の精神侵略を受けている可能性が高い。王女の注意を引く存在がいない今、その意識を回復させることは難しいだろう。助けようなんて思わず、そのまま捨て置け。」

「っ!!!」

子猫の言葉にザガルードが一際強く反応する。アリアネスはその様子を黙って見ていた。

「アリアネス、分かったな。決して王女を助けようとするな。」

「…。」

「アリアネス、返事をしろ。」

子猫がアリアネスに寄ってきて、足を肉球でぺしぺしとたたく。


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