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捨てられ伯爵令嬢は野獣に勝てるか  作者: めろめろす
第一部
26/58

真実

なんかラシード様が思った以上にアリアネスにメロメロなっちゃった…。

「妖精の諍い?どういうことなの?」

ミストレイアとアリアネスの会話を黙って聞いていたトレスが尋ねる。

「うふふ。妖精は長命で不思議な力を持つ存在であることは、妖精狂いのあなたなら知っているはずよね。」

「えぇ、もちろんよ。それがどうしたの?」

「ならいたずら好きで嫉妬深いことは?」

「…それも知っているわ。自分が気に入ったものへの執着はたとえその身が滅びようとも続くと。」

「その通りよ。すべての始まりは、オルドネア帝国建国時に、ある妖精が帝国騎士団の前身の傭兵団のビルハウンドに加護を与えたことから始まるわ。その妖精は、妖精の身でありながら人間を愛してしまった。そのことを許さないものがいたのよ。」

「許さいないものって?」

「…当時の妖精王よ。」

「妖精王?妖精にも王様がいらっしゃるの?」アリアネスが驚く。

「いるわ。もっとも力の強い妖精が頂点に立つのよ。その妖精王はビルハウンドに加護を与えた妖精を愛していたの。だから自分を捨てて人間を愛したことが許せなかった。そして敵国の人間に加護を与えて、オルドネアを滅ぼそうとしたの。」

「まさか、それがオルドネアの建国時の戦争の発端なの?」

「そうよ。人間は妖精の諍いに巻き込まれただけ。本当なら妖精王の加護を受けた国が勝つはずだった。でも妖精の加護を受けたビルハウンドはとんでもない強さだったわ。軍神ともいわれるぐらいだったのよ。」

すっごくかっこよかったのよね~とミストレイアが熱に浮かされたように顔を赤く染める。

「…まさかあなたが加護を与えた妖精なんじゃ。」

トレスが顔を青くしながら聞くがミストレイアは「違うわ」と即答する。

「結局ビルハウンドが率いるオルドネア帝国が勝利した。そして、ビルハウンドに加護を与えた妖精は妖精王をぼこぼこにして、王の立場をもぎ取ったの。」

「ぼこぼこに…。」

「えぇ!それで、元妖精王は力もなくなったからおとなしくしていたはずなんだけど、しぶといやつでね。また力を取り戻して、オルドネア帝国と敵対しているマゴテリアの騎士に加護を与えたみたいなのよ。」

困っちゃうわね~とミストレイアが笑う。

「ビルハウンドに加護を与えた妖精は、自分が死んだ後のオルドネア帝国も守ってほしいっていうビルハウンドの願いを聞き入れてずっとオルドネアを守ってきたの。元妖精王はそれが気に入らないみたいでオルドネア帝国自体を滅ぼしたいみたい。ほーんと嫉妬に狂った男っていやよね。ファニアもかわいそう。」

「え?」

「あっ!」

アリアネスが思わず声を出すと、ミストレイアがしまったという顔をして自分の口をふさぐ。

「今、ファニアっておっしゃったわよね?」

「いっ、言ってないわ!何も!」

「おっしゃたわ!確かにファニアって!トレスもリフォールグも聞いたわよね!」

「聞いたわ。」

「聞きました。」

「じょ、冗談よ~。受け流してちょうだい。」

「できないわ!」

アリアネスが身を乗り出し、ミストレイアを問い詰める。


「まったく!いたずら妖精はすぐ口を滑らすんだから!」

「そもそもミストレイアに話すなって方が無理だろ。根っからのしゃべりたがりなんだからよぉ。」

店の古ぼけたドアがぎぃぃという音をたてて開く。呆れたよう口調でしゃべりながら入ってきたのは、ファニアとラシードだった。

「ごきげんよう、みなさん。」

ファニアがにっこりと笑う。

「どういうことなの…?」

トレスが困惑してファニアを見たり、ミストレイアを見たりする。

「ミストレイアの話のとおりよ。私がビルハウンドに加護を与え、ずっとこの国を守ってきた現妖精王のファニアスタスなの。」

ファニアは楽しそうに笑っているが、アリアネスは頭の整理が全くついていない状態だった。

「まったく、俺がなんのために秘密にしてたと思ってんだ、馬鹿妖精。アリアネスになんかあったら二度といたずらできないように滅ぼすぞ。」

ラシードが苛立たしいのか、自分の髪をぐしゃぐしゃとかき回す。

「ぶ、物騒なこと言わないでよ!そもそもラシード、あんたがアリアネスたちをここに来させないようにすればよかっただけの話でしょ?」

ミストレイアがカウンターの下に引っこみ、顔だけ出しながらラシードに反論する。

「オルドネアの妖精の気配がしたんだよ。あれ以上接触してたらアリアネスのことが知られちまうじゃねーか。そんなこともわかんねーのか。」

「こらこら、やめなさいラシード。」

ファニアがどうどうとラシードを落ち着かせる。

「アリアネス様。妖精のばかげた争いに巻き込んで申し訳ないと思ってるの。でも、妖精王の加護を受けた人間に勝てるのはこの国ではラシードしかいなかったの。もし婚約破棄をしなければ、あなたの身が危なかったの。」

許してちょうだいとファニアが頭を下げる。

「…頭をお上げにあって、ファニア様。」

黙っていたアリアネスがファニアに話しかける。

「あなたのことをすぐには許せないわ。わたくしが国王主催のパーティーで婚約破棄を言い渡されたおかげで、お父様とお母様にも心配をかけたわ。伯爵家としてのプライドも傷つけられた。」

「…そうね。申し訳なかったわ。」

「アリアネス、ファニアは…。」

「それ以上に!信じられないのはあなたよ、ラシード様!」

「うぐぅ!!」

口を挟もうとしたラシードにアリアネスは自分が履いていた靴を脱いで投げつける。

「あなたは!私に相談せずにすべてひとりで決めてしまったということね!許せない!許せないわ!!」

「アリアネス…。うごぉ!」

苦悶の表情を浮かべるラシードがアリアネスに近づこうとするが、「近寄らないで!」ともう片方の靴をアリアネスに投げつけられ、その場に膝をつく。

「嫌いよ!嫌い!何も話してくれないラシード様なんか大っ嫌い!妖精の争いなんかどうでもいいわ!どうしてわたくしに話してくださらなかったの!わたくしが!どんな思いで!!」

叫びながらボロボロと涙を流すアリアネスを見て、ラシードはアリアネスよりも辛そうな顔で「すまなかった」とうつむく。

「お前を危険な目に合わせたくなかったんだ。ここ数年、加護を受けた騎士の出現でマゴテリアの動きが活発になってきた。元妖精王に従う妖精も出始めてたんだよ。俺がお前のことを大切に思ってるってことがばれれば、すぐに妖精が告げ口してお前が狙われる。できるだけ、お前とは関わらないようにすることしかできなかったんだ。」

「それで!ほかの女性と会っていたっていうの!」

「そうだ。…許せ、アリアネス。お願いだから嫌いだなんて言うな…。」

「いやよ!離して!」

ラシードは一瞬の隙をついてアリアネスに近づき、その体を強く抱きしめる。

「アリアネス、頼むよ…。」

「いやよ!嫌い!嫌い!」

泣きながらじたばたと暴れるアリアネスを困った顔で見つめながらなんとかあやそうとするラシードを、ミストレイアに頼んで酒を飲み始めたファニアが楽しそうに眺める。

「騎士団長も好きな女の前では形無しなのね、うふふ。」

「男を困らせる女…。素敵よ!」

「妖精ってホントに自由ね…。」

はぁとトレスが溜息をついて、攻防を繰り返すアリアネスとラシードを見る。

「筋肉馬鹿のあんな顔初めて見るわ。ざまぁみなさいってところね。」

私のも一杯ちょうだい!強いのを!とトレスはミストレイアに頼んだのだった。


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