訓練②
「「はぁ!?」」
ルイとキウラが急いで第10支団の門に通じる大通りに目を向けると必死な形相で走るアルフォンソとあくまで優雅な笑みを崩さないアリアネスがいた。
「この化け物女!ほんとはどっかのサーカス団にでもいたんじゃないのか!」
「うふふ、また口調が崩れていらっしゃるわよ、支団長様?」
「もう今更だろうが!大体なんでそんなに余裕そうなんだ!」
「わたくしはラシード様の妻になる女。清く正しく美しくあるためには体を鍛えることも当然ですわ。」
「そんなもん、必要あるか!」
「おほほほ!あと少しでゴールですわよ!団員の前でわたくしに負けるという醜態をさらされるつもりかしら?」
「このがきぃぃぃぃぃいい!」
二人が第10支団の門をくぐったのは同時だった。
「お二人ともタイムは5分32秒11です。」
「おまっ、えはっ、並走してた、のか!!」
ぜーぜーと息を整えるアルフォンソが無表情で二人と並走しタイムを計っていたセレーナに声をかける。
「もちろん。お嬢様についていこうとするならばこれくらいできて当然です。」
「支団長!これは何事ですか!」
キウラがアルフォンソに駆け寄る。
「はっ、はっ、ふー。この化け物女たち4時ごろ部屋から抜け出すのが見えたから逃げ帰るのかと思って声をかけたんだよ。そしたらこれからランニングをするとかいうから、慣れないことはやめとけって言ったら、だらけた老人はもう一眠りしておけばいいとかほざきやがるから!」
「それでランニングに付き合っていたわけか。」
ルイが苦々しい顔で汗だくのアルフォンソに布を投げる。
「助かる、ルイ。ただランニングしていただけだったんだがな。いつの間にか競争になっちまって。」
「いい準備運動になりましたわ!これから本格的な訓練が始まるのね。セレーナ!列に並ぶわよ!」
「承知いたしました。」
アルフォンソと違い息を切らしてもいない2人は急いで団員の列の後ろに並ぶ。
「支団長、早く訓練を始めましょう!」
「わかった。」
キウラに応えたアルフォンソは深呼吸して息を整え、団員たちの前に立つ。
「これから朝稽古を始める。まずは素振り!よーい!はじめ!!」
「「「「「「「「「「「はっ!!!!!」」」」」」」」」」」
団員全員が発声した後、木刀で素振りを開始した。




