転職したいサラリーマンが女神様に勧誘される話
テンプレ物を書いてみようと思いました。チートって良いよね。週一更新を目指すというスロー更新です。
1
「お疲れ様です。お先に失礼しますね」
「はい。お疲れ様。また来週~」
株式会社エンジリア・カスタマーサビースは俗に言うグレイ企業である。
いきなり何の話かと思うかもしれんがこの理不尽さを分かってほしいのだ。
月給で月23万。ボーナス無し。週平均15時間弱の残業に月一程度の休日出勤。代休は無いが残業代はきちんと出る。そんな企業は世の中に沢山ありブラック企業にお勤めの人に言えば代わってくれと言われるであろう会社。
俺こと、大籠飛鳥は自身が務める会社をそう評価する。
我が社の業務を端的に言えば人材派遣が主になる。
紹介先はIT関連のエンジニアからアイドルイベントのスタッフ、外食チェーンのホールスタッフなど多岐に渡る。俺の仕事は派遣の方とお客様との橋渡し役が主になるのだがこれが大変なのだ。
多岐に渡るお客様の業務内容を把握しそれに見合ったスキルを持つ派遣を送り込む。お客様との賃金交渉やら派遣員がミスをすれば頭を下げに行き派遣員の方からは派遣先の愚痴を聞きたり、挙句には紹介出来る人材が居なければ自分自ら派遣員となり畑違いの仕事をするのだ。正直、やってられなくなる。
大学を卒業し内定を勝ち取り入社しはや2年が過ぎた。仕事を一通り覚え抱える案件は三ケタを超すぐらい。会社の中では中の中ぐらいの実績だろう。
要は可もなく不可もなくという所か。体力的には問題無いのだが派遣員とお客様との板挟みが精神的につらいのだ。何となく転職したいと頭に浮かぶ事が増えてきた。
「大籠先輩は帰らないですか?今日はハナキンですよ。華の金曜日!」
「ディスコなんて今時、行かないし、タクシーに万札渡してお釣りは要らないぜ!とかいう余裕も無いしね」
昨年、事務で入社してきた中箱さんがバブル世代の死語を言うが構ってられない。何故か?
今度の日曜は祝日なので月曜日は振替休日。つまりは三連休なのだ。この派遣員契約更新の書類の山を処理すれば三連休。三連休なのだから。本当は火曜日にやっても良いのだか嫌なモノは先に片づけるタイプなのだ。
「私が言うのもなんですけど、先輩って一昔、二昔前に妙に詳しいですよね」
「うん。ムカシハヨカッタ」
「棒読みですね。偶には仲間内で飲み会とか息抜きしないと病んじゃいますよ」
俺が居る部署、人財管理部では飲み会なんぞ会社全体で開かれる忘年会と新年会だけだ。新人歓迎会やら送別会などはやりたい奴がヤレという感じである。
俺としては飲み会とかは苦手なので我が社の一番の良い所だと思う。まぁ、みんな忙しく飲み会できる時間が無いのが現実なのだか。
「うん。まぁ、この仕事は精神的にくるものがあるから病んでる人は多いよね」
「先輩っていつかふらっと辞めてそうですよね」
「宝くじが当たるか、いい転職先が見つかればね」
あ~あ、今週もロト7外れたしな。毎週買っているが6等が3回ぐらいしか当らず収支としては赤字だ。いや、いつか一等さえ当たれば大黒字になる!
「じゃあ、宝くじが当たるように祈ってあげます。」
中箱さんの実家は神社だそうだ。いつだったかあぁ、新人歓迎会の時か。そう聞いた。
当時、無理やり幹事をさせられ珍しく出席した時を思い出す。
三次会でのことだ。参加者も少なくなり酔いもあって素がでたのであろう。バカな新人が彼女にセクハラ紛いの質問したのだ。
『(Q1)家が神社って事は巫女服とか着たことあるの?(Q2)って事は処女?(Q3)俺と付き合わない?』
それに対して彼女が淡々とこう返答したのだ。
『(A1)ありますよ。着るのがめんどくさいですよね。(A2)あとそれだとお母さんとか着れなくなるじゃないですが。(A3)えっ?嫌です。お断りします』
何故かその新人君が逆ギレしたのだが一体、人事の方はどこを評価して採用したのか。本当に疑問である。わーわーと五月蠅く迷惑だったので×××して×××したのだ。
巫女さんが処女じゃなくてもなれるという現実を教えられ幻想をぶち殺されたのだ。当然である。
いや、実はそれは知ってはいたさ。民俗学とか好きだしな。忘れていたのに、記憶から取り除いたはずなのに。コノウラミハラサズベキカ...。
なおその新人はもう辞めていない。
確か歓迎会の次の日が生ごみの収集日だったのでゴミ捨て場に捨てた気がする。次の出社日から来なくなり途中で帰っていた部長が「これだから最近のゆとりは・・」とか言っていた。今、思うと燃えないゴミの時の方が良かった気がする。反省している。
ただまぁ、人妻巫女というジャンルを新ジャンルを開拓できた事は良かった。
そう言えば、その頃からか。中箱さんにちょくちょく話かけられる様になったのは。
「あれ?転職は祈ってくれないの?」
「先輩は宝くじに当たっても仕事に対する責任感でズルズルと仕事を続けそうですけど、他の仕事を見つけると直ぐに辞めそうですから」
いや、辞めるね。引き継ぎとかきちんとして辞めるね。うん。辞められるよね?
その後も2時間ぐらい雑談しなから書類の山を片付け終えた。何だか中箱さんを付き合わせてしまった様で申し訳なかったので帰りに晩飯を奢る事にしたのである。
2
中箱さんと晩飯を食べ駅で別れ俺は帰り道、コンビニでチュウーハイと適当なツマミを仕入れた。時刻は間もなく0時を回るがこれからの三連休なのだ。もう少しばかり夜を楽しみたい。まぁ、飲み屋に行く余裕も先の食事で消費したのだか。
そんなこれから小さな楽しみを思い浮かべていた時である。
「大籠飛鳥さんですね。突然ですが今の仕事に不満はありませんか?」
場所は駅から10分ほど離れた住宅地。間もなく自宅に着くかという所で不信な女性に声を掛けられてしまった。
銀髪翠眼の外国人(しかも美人である。まぁオツムが足りていなそうな感じで残念だが)
顔立ちは北欧系で日系ハーフとかでは無さそうだが日本語がやけに上手い。
会った事もない彼女から名前を呼ばれた。非常に気味が悪い。
不信に思いながらもこんばんはって英語で何だっけ?などとズレた事を考えていたら目が合ってしまった。
彼女は一歩こちらに移動し続けてこう切り出してきた。
「もしご不満なら転職してみませんか?」
「(外資系の会社からのヘットハンティング?いや、そんな他社から誘いが来るような成果を挙げた覚えは無いしな)えっと君は?お会いしたことありましたっけ?」
仕事柄、外資系とも付き合いがあるのだが記憶には無い。名前を知っているから恐らくは仕事関係で知ったのだろうか?
もしかしなくとも、これはへんなのと関わってしまったか。
「何やら失礼な事を考えていますね。まぁいいですけど。改めてお聞きします。転職したいと思いませんか?やりがいのある仕事をご紹介しますよ」
そういって彼女は笑ったのだがものすごく胡散臭い笑顔だった。
3
とりあえず一旦、駅前の24時間営業のマッ○で話す事になり来た道を戻るはめになった。
正直、関わるのは嫌だしダッシュして逃げたいのだが、俺の感が逃げても無駄と囁いている。
しょうがなく話だけを聞く事にしてが万歩ゆずっても家に招くのは絶対にしては嫌だった。
「ではまずは自己紹介から。初めまして。私、有限会社運営委員会、第三級運営神のオペラス・グローリアと申します」
テーブル席の上に薄いピンク色の名刺が置かれる。
いや待て、座ったままでしかも名刺を手渡しせずに置くとか営業どころか社会人失格だろう。外資系はこんなモノなのだろうか。
それと、肩書きについてツッコミたいが我慢だ。突っこんだら負けだ。
「…。ご丁寧にどうも。ただいま名刺を切らせておりまして、株式会社エンジリア・カスタマーサビース人財管理部の大籠飛鳥です」
真っ赤のウソである。
先程から俺の第六感から危険信号を出っぱなしである。
なるべく接点を持ちたくないのだ。
「もう、ダメですよ。社会人たるもの名刺は常に持ち歩かないと」
やべ、×××して燃×したい。
どう、後始末しようかと悩んでいると急にオペラスさんは襟を正し真剣な表示でこう切り出してきた。
「まぁ、いいでしょう。さて、時間も時間なので本題に入りましょう。俗に言うヘットハンティングです。大籠飛鳥さん。こことは違う場所でご自身の才能を活かしてみませんか?」
「お断りします」
あっ、反射的に断ってしまった。ナイスだ俺!
「そうですが。理由をお聞かせ願えますか?」
おや?「断るのはや!!」とか「なんで断るん!?」とか言うかと思ったが。まぁいいや。
「幾つかありますが、一番は貴女が信用できないからです」
はっきりと言ってみたが、これはある意味、俺からの誠意だ。
オペラスさんとやらは終始ふざけているが誘い文句を言う時は真剣だった。今の表情も真剣その物である。
最初からそうすればもう少し話を聞いてたかもしれん。
まぁ、初対面でいきなり転職しませんか?と言われて「はい」と応える人はまず居ないだろうし話を最後まで聞いても断っただろうが。
「では、もし貴方の信用をされている方から私と同じ業務に誘われ待遇も現在の職場よりも良かったとしてらどうします?」
「どうって…。即決で断りはしないだろうな」
事実としてして仕事を替えたい。転職したいと思っている。中箱さんが言っていた通り良い転職先があればすっぱりと辞めていたかもしれない。
「私がお誘いしてる仕事は命を落とすかもしれない危険な物です。しかし、遣り甲斐は命を賭す価値があると断言します。今日...あぁもう昨日ですか。お誘いしたのは大籠飛鳥さんならやり遂げられると確信しているからです」
いや、そんな危険な仕事とか言われたら更にお断りなのだが。どうやらオペラスさんへの評価は上がったらその倍は下がるらしい。
「地球とは違う星で冒険者とかやってみたくないですか?」
「はい?あの、どういう意味でしょうか?オンラインゲームかなんかの勧誘ですか?」
学生時代には多少、やり込んだのだが社会人になると時間が無くて自然に辞めてしまったのだ。今更、やりたいとは思わないし。てか、やはりこの人は中々、頭がおかしいらしい。これは俺が病院へ連れていく必要があるのだろうか?やだな~。
「また、失礼な事を考えてますね。端的に言うと私は神様です。貴方は神に選ばれた勇者様。勇者は異世界を救うために旅立つのです。そう思って頂ければ結構です」
「意味がわからん。仕舞には×××して×××すんぞ」
「ナチュラルに本音が出てます!?いやいや、私、神様、女神様です!!敬いましょう!?」
何だが堂々巡りになりそうだな。何だよ神様って。名刺の肩書きに第三級運営神って書いてあるけどこれの事か?そもそも有限会社運営員会って何を運営するんだよ。
「兎に角、私の話を聞いてください。その上で断る分には構いません。他のところみたいに強制とかはしないので安心してください。大籠飛鳥さん。少なくとも貴方は現状からの脱出を願っていますよね?私はこう見えても女神です。悩んでいる人がいれば時には導く事もあります」
ですからと自称女神さんはこう言う。
「決して損はさせないとお約束しましょう。命を賭ける代価に見合う報酬もあります。良く話を聞いて考えて決めてください。お願いします」
事象女神様は人に向かい頭を下げる。綺麗な金髪がサラリとテープに靡き何故か美しいと感じた。
女神様は簡単に人に頭を下げるのだろうか。
仕事柄、謝罪する方が多いが時には謝られる事もある。
仕方なく。嫌々する。言葉だけの謝罪が殆どだが中には真摯に謝罪してくれた人もいた。
彼女の姿は真摯な人達に被ってみえた。
「解りました。話を聞くだけですからね」
これでくだらない話だったら、本当にゴミ捨て場に捨ててやる。