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お出かけ

しばらくはのんびりしてそうですね。

 落ち込みこそしたものの、魔物と戦うというのは幾分楽な仕事なのかもしれない。というのは魔物は単純だからだ。

 事情もなければ思惑もない。そこにあるのは純粋な生への渇望と弱肉強食の姿勢。

 人間と違って向こうの感情や目的、心理までいちいち計算しなくても力でごり押しできれば倒せて、倒せれば勝ちなのだ。


 俺は人間相手に戦っているといろいろと考えすぎてしまうくせがあるようだ。

 本当の目的だとか、裏で手を引いているやつだとか。

 その姿勢は決して間違っちゃあいないのだが、如何せんめんどうくさくなるときがある。


 思考を放棄してはならない。


 それは俺が俺に課した決まりである。

 そんなの後でもいいじゃないか。と言ってられるのは甘い。次々イベントが起こって謎が解けていくなんて現実はヌルゲーじゃないんだ。

 俺が見過ごしたことで何に囚われるかわからない。

 だからこの決まりをやめようなんて思わないが、たまには休憩しても構わんだろう。


 魔物を相手にしていると獣の楽さがわかる気がした。


 何が言いたいかというと、シンヤに後始末とこれからの鉱山への交通路の整備を丸投げしようって話だ。


 この前はバシリスクを倒した報告と素材を預けるまではしたのだが、その金額が多すぎてすぐには払えないとのことだった。

 それにたいして払いにこいというほど狭量ではない。空間転移も使えてそこまで忙しくもないこの身としては、


「また取りにきますので素材だけ預かっておいてください」


 と言い残したのだ。

 だから今日は冒険者組合ギルドにもう一度向かわねばならない。


「倒した奴ら全員で行くか……」


 いや、アークディアとホームレスには待っててもらってもいいだろう。

 アークディアはあまりそういうことには興味なさそうというか面倒くさがりそうだし、ホームレスは言わずもがな。

 とりあえず聞いてみるか。


「俺と一緒に冒険者組合ギルド行きたい人挙手っ!」

「はい!」

「私も行きたいですわ!」

「儂も行くのじゃ」


 はあ?

 アイラにレオナ、ミラって。

 見事に女性陣が揃ったな。


「カグヤとロウはいいか?」

「いいよいいよ。交渉事はレイルに任せてるしよ」

「ええ。ちょっと魔法で試したいこともあるしね」


 そのセリフは魔法使いのもんじゃねえか?

 見た目には剣士というか武士というか。


「ああ、じゃあ行ってくるよ」






 ◇

 町の中を美少女三人を連れて歩く男がいた。俺である。

 たまに不躾な視線が飛んでくる。怪しいもんな。

 俺としては眼福で、この光景だけでも金を払いたくなるような神々しさがある。

 死の君とお姫様の間にいて見劣りしないアイラがすごいと思う。

 俺なんかオーラだけですでに負けそうなのに。


「で、どうしてレオナもついてきたんだ?」


 ともすれば「お前場違いだろ」ともとられないキツ目の発言ではあるが、レオナは別に俺が責めているわけでないことを的確に見抜いてくれるはずなので問題ない。

 というかビジュアル的に場違いは俺だからな。


「そろそろレイル様の名前に私の印象をつけておきたかったのですわ」


 なるほど。冒険者組合ギルドにわざわざ姫であるレオナが一緒に訪れることで俺の重要性をしらしめるわけだな。

 そんな重要か? まあ国の一つの宣伝材料であるわけだから、あまり無能っぷりを見せるわけにもいかないってのはあるだろうけど。


「勘違いしてらっしゃるようですが、レイル様の名前は嫌というほど知れ渡っておりますわ」


 そんなことがあるのか。できるだけ情報を隠してきたつもりの俺からすればやや意外という他にない。


「今回はレイル様がこちらの味方であると保証するという意味と自治区の責任者としての姿をお披露目する目的があるのですわ」


 へえ。確かにあそこは今、ギャクラにとって重要な拠点だもんな。

 というか俺って味方かどうかさえ疑われるほどなのか?

 結構ギャクラの為になるように立ち回ったつもりだったんだけどな。

 まあ所詮、高校生までの人生を二回繰り返した程度の思考では限界ということか。

 自治区だって細かいことはシンヤに任せてあるんだからそんなに気にしなくたっていいのに。


「ふっふっふ。儂がいるとわかっておればレイルに下手な手出しはできまい…………」


 ミラが悪い笑みを浮かべている。

 お前みたいなのがいたら誰も手出しできねえよ。俺だってごめんだ。


「別にバシリスク、私の腕輪にしまっておいてもよかったんだけどなー」

「それだと向こうが売ってもらえるか不安になるだろ? こっちは支払ってもらえると思ってんだから預けときゃいいんだよ」

「それにこうして私も仕事を終わらせて息抜きに励めるというのですからいいのですよ」


 そういってレオナが俺の腕に自分の腕を絡めてくる。

 ムッとした顔でアイラは一歩近寄ったがそれ以上はするつもりはないようだ。

 久しぶりの休暇だし好きなようにさせようと思う。

 お金には余裕があるし、何か食べていくのもいいかもしれない。

 置いてきた奴らには悪いが、まあそんなことでいろいろというタイプでもないだろう。

 特にロウとカグヤなんかは夫婦水入らずで来た方がいいだろうしな。


「ま、最初は仕事を終えてからかの」


 冒険者組合ギルドの建物が見えてきた。

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