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先代勇者は隠居したい(仮題)  作者: タピオカ
孤島の大迷宮ノルドヨルド編
99/192

先代勇者、嫌がる


 異世界迷宮と言う言葉をご存じだろうか。


 ダンジョンと言えばわかるかな?

 ダンジョンは剣と魔法の異世界ファンタジーには無くてはならない存在だろう。


 魔物の巣窟となったダンジョンを踏破し、ダンジョンに眠れる秘宝を入手する。


 そんなロマン溢れる迷宮は、この異世界レインブルクにも勿論存在する。


 とある孤島ノルドヨルドには、その迷宮がある。

 近年に発見されたばかりのノルドヨルド迷宮(迷宮の名は基本的にその迷宮が存在する地名を冠する)はまだ再奥まで踏破した者がおらず、その迷宮の広大さと難易度から大迷宮(だいめいきゅう)(大迷宮のみダンジョンではなく、だいめいきゅうと読む)と呼ばれていた。



 さて、このノルドヨルド迷宮だが、冒険者や傭兵達の間では今一番ホットな迷宮として知られている。


 ・魔物の質の高さ。


 ・魔石が採掘できる。


 ・最下層まで到達した者がいない。 


 この三つだ。


 魔物の質は、魔物から回収できるアイテムの希少度に直結する。


 魔道具などの機関部によく使われる魔石が採掘できるのは、この迷宮が昔魔石の鉱山だったからと言えばわかるだろう。

 良質な魔石は小指程度の大きさでも高く売れるので人気だ。


 そして、このダンジョンの初攻略者となれば間違いなくギルドから功労者して祭り上げられ、世界広く名を知られる事になる。


 勿論それぞれデメリットがある。


 魔物の質が高ければ高い程魔物は強く、良質な魔石なんて易々と手には入らない。

 踏破者になるには未開の階層をなんの予備知識もなく突き進む事になる。


 だが、冒険者や傭兵達にとってそれぞれのデメリットを鑑みても、やはりメリットが大きく勝る、垂涎物な迷宮なのだ。




 「俺は行かんぞ。迷宮なんて」


 「えー!?」


 少女が、少年の放った言葉に不満の声を上げる。


 「折角ノルドヨルドに来たんだ! 迷宮に潜らないなんて何しに来たかわかんないじゃんかー!」


 ショートヘアの金髪に狐の耳の、ボーイッシュな少女が掴み掛かる勢いで詰め寄るが、黒髪の少年は変わらず憮然として態度で拒否する。


 「迷宮になんか潜っても、少なくとも俺に利点は無い。だから行かん」


 聞く耳持たずの問答無用。もはや頑固の域に感じる態度に、狐耳の少女は対照に、艶やかな黒髪を腰に届くまで伸ばした少女は首を傾げる。


 「ヤシロさんなら寧ろ、「ダンジョン潜らにゃ男に非ず!」とか鼻息荒く突撃するのかと思ってましたけど」


 「そうだぜアニキ! 男に生まれたなら世界に名を刻んでやろうぜ!」


 「俺はそれが嫌で名を隠して勇者やってたんだよ」


 人に溢れる酒場の一角、酒場の摘まみを口に運びながら少年は溜息をつく。

 彼が成人で、酒が手元にあったなら自棄酒をする勢いだ。


 勿論、先代勇者の社勇と教会の代行者ベルナデット。

 そして新たに旅をする仲間クオン・ヘレオットの三人だ。


 「そもそも俺、金には困ってねぇんだよ」


 勇はまだノルンより渡されたギルドカードを所持してる。

 およそ一般人が一生を掛けても使い切れない程の金額が、そのギルドカードがあれば引き下ろせる。

 故にダンジョンの魅力の一つ、『儲け』が勇には通じない。


 ダンッ!


 クオンがテーブルを叩いて立ち上がる。


 「まだ見たことのない魔物が、誰もたどり着いた事のないボスがいるんだぜ!? それを前に尻込むなんて見損なったぜアニキ! 尊敬してるけど」


 迷宮に潜って好きなだけ戦いたいたくてウズウズしていなクオンは若干涙目になりながら勇を睨む。


 強い視線に晒されて、勇は大きな溜息を漏らし、心の中で呟きを漏らした。



 どうしてこうなった……。


 それは、少し時間を遡ることになる。



 波に揺られること三日。

 船員総動員のポーカー対決や巨大イカとの死闘なんかもあったが無事にガラリエへ向け海を進む輸送船『ゼカマシ号』。


 後数日でガラリエへ着く筈だったが、『ゼカマシ号』の航路は大きく逸れる事になる。


 「シケだーーーっっ!!」


 船員の誰かが叫んだ数十分後、『ゼカマシ号』は大嵐に巻き込まれた。


 「大幅ってわけじゃあねぇが、予定の航路を大きく逸れちまった」


 それは大幅にってことじゃないの? と内心思った勇だったが黙っている事にした。


 『ゼカマシ号』号の船長と言う男は勇とベルナデット、クオンの三人の前で数枚の海図を取り出した。


 「今俺達が居るのはこの島、『ノルドヨルド』。大分西に流されちまったぜ」


 海図の上にかかれた島を指さした船長は今の状況に対して焦ったような素振りは全く見せない。


 「まあこのシケも明日にゃ止むだろう。それまではこの島で待機だな!」


 海図をくるくると筒状に丸める船長。


 「クオン坊ちゃ、お嬢さんらは如何します?」


 どうやら船長とヘレオット一家は知古らしく坊ちゃんと言いかけた船長にクオンは苦笑する。


 「仕方ねぇからオカに上がるよ。宿が空いてりゃ揺れないベッドで夜を明かせるってもんだ」


 煙管でもあれば姐さん! とか叫びたくなるくらいの口調だ。様になってる。


 「私達も行きましょうよ、ヤシロさん!」


 流石に船の食料は大量に食ったら船員の生死に関わると理解していたベルナデットは最近不満げだ。

 陸地の飯屋でなら馬鹿食いしても出禁くらいで許されるだろうと思ってるようだ。

 その証拠に口からよだれが垂れている。


 「先ずは口を拭け、フードバスター。……うーん、確かに船の上じゃやることも限られてるしなー。……俺達も一度降りるよ」


 あいよ、と答えて船長は俺達の部屋から出て行った。



 「ふぃー……なんか疲れちまった」


 「すっごく揺れましたからね。船が沈んじゃうかと思いましたよ」


 『ゼカマシ号』がたどり着いた島、ノルドヨルドには大きな街があった。

 ベ・イオなどと比べると流石に小さいが、孤島の街にしては随分活気があり、酒場も人で溢れて返っていた(単なる雨宿りなのかもしれないが)


 「アニキも海の上じゃあまだまだみたいだな! シスターの姉ちゃん、転覆はなかったろうけど、波に流されて街に着くなんて奇跡に近いんだぜ? 神さんとやらに感謝してなよ」


 海を産湯に、なんて本気で言いかねない海っ子なクオンは大きな揺れに若干疲れた俺やベルナデットに対し全然疲労したようには見えない。


 「なぁなぁ、アニキ達はこの後直ぐに宿に泊まる? もしそうでないならさぁ……」


 そして、冒頭に戻る。 

シリアス皆無(予定)の第四章、始動! 


今回は投稿間隔を大きく開けずに上げて行きたいです。


ではまた次回。お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
この世界のダンジョンってなんだろうか 魔族っていう負の感情の集積装置が別にある以上、そういうシステム的なもんでは無いと思うが つーか、魔王軍の発生地点以外は随分のんびりしてるんやな
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