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先代勇者は隠居したい(仮題)  作者: タピオカ
港町ベ・イオ編
81/192

先代勇者の技

 「その構えを見せてくれるってことは、全力を出してくれるって事で、良いんだよね?」


 念を押すように聞いてくるクオンに、剣の切っ先を揺らす事で答える。

 『掛かって来い』、と挑発をするのだ。


 「上ッ、等ぉぉーーっ!!」


 すると、クオンは不敵な笑みを浮かべ、握り拳を手刀に変えて、俺に向け走り出す。

 ドドドドと板張りの床を走る音がして、次の瞬間には、フッ、と足音が消えた。


 「!?」


 咄嗟の反応だった。視界の隅に影が現れたのを見て、身体が動いたのだ。

 しゃがむように姿勢を低くした俺の頭上をクオンの蹴りが通り過ぎる。

 俺から見て、右横から繰り出された蹴りは勿論クオンのものだ。

 俺が避けたとわかるや否や、手刀による突きを繰り出すクオン。


 俺が少し後ろに下がり避けると、ボクシングのインファイターのように一気に距離を詰め懐に入って踏み込んで来やがった。


「なろっ」


 振り払うように槍を振るうと、片腕で柄を防ぎ、更に手刀の突きを放ってくる。

 それを上体を大きく反らし、所謂マトリックス避けで回避すると、奴は突きで伸ばした手をそのまま振り下ろしてきた。


 上体を反らしたまま縮地法(俺のは地面をただ蹴ってるだけの力業)で大きく距離を取って回避する。


 「お? ……なるほど」


 距離を取りながら体勢を直すと、服を切られたらしく胸からヘソ辺りまでがひらりと捲れてしまった。


 どうやら素手だと思って甘く見てると大怪我してしまいそうだ。


 「今のが、本物の縮地っての?」


 追撃に備えようとしていると、クオンが手刀を振り下ろした体勢のまま、俺を見て固まっていた。


 「え? ……まぁ、そうだけど」


 俺がそう応えると、クオンは前傾姿勢になり、次の瞬間、


 ギィンッ!


 俺が突き出した剣に衝撃が走り、鋼がぶつかり合ったような衝撃音が鳴った。

 

 「……見様見真似で出来るようなもんじゃねぇんだが、なっ!」

 

 縮地の速度で放たれた突き。クオンは防がれるとそのまま押し切るように腕に力を込めて来る。

 手刀相手に鍔競り合いと、なんとも情けないような状況の中で、俺はジャンを呪っていた。

 

(ジャンの野郎、縮地のやり方教えてやがったなっ!?)


 縮地は俺の力技を、シルヴィアが魔力を使用する事で再現した技術だ。当然俺達の仲間内しか知らない。

 なのに何故クオンが使えたのかと言うと、多分(ほぼ確信してるが)ジャンが教えたのだ。

 魔装演武に俺を参加させたのも恐らく俺と、ジャンの教え子のこいつを戦わせるためだったのだろう。

 回りくどいし面倒だし、何より気に食わない。

 

 俺好みのお姉さまや女の子でも無く、イケメンに教えたのが!


 「ぐっ!?」


 タックルで軽くクオンを吹き飛ばし、距離を開ける。

 すると、距離を開けると不利になると理解しているのか、再び足に魔力を纏わせようとするが、


 「させねぇよ!!」


 一息で槍の射程距離まで踏み込み、俺は槍を逆さに持って目にも留めさせない速度で突きを放つ。

 槍の穂先ではなく、反対の、石突き部分での攻撃だ。しかし、ギリギリで避けられてしまう。 

 それでも構わない。

 俺は崩した体勢を直そうとしているクオンに向け剣を横薙ぎに振るいながら踏み込み、槍の穂先近くを握って突きを放つ。

 そんなシンプルな動作を最速で行い、これで終わらせる、くらいの意気込みで攻撃を繰り出す。


 だと言うのに、


 「飛燕脚!」


 槍の穂先を足場に飛び上がり、奴は俺の首を狙ってしなる蹴りを放ってきやがった!


 「身軽な奴!」

 

 軽業師みたいな事をやってくる。まぁ体格からして、真っ向から打ち合う、なんてパワーファイターじゃないとは思ってたけどな。男の癖に少女マンガの王子様みたいな細い体つきだし。

 蹴りを額で受けながら俺が更に踏み込むと、クオンは体勢を変えつつ空中で踵落としを繰り出して来た。

 

 「っ、!」

 

 それを身体を少しずらして避け、剣の腹で奴を叩き落す。

 クオンが痛みに呻き、大きな音を立てて板張りの道場に落ちる。更に追撃しようと槍を構えると、クオンは頭を下げ、所謂土下座の体勢をとっていた。


 「参りましたぁ!」

 「へ?」


 アグニエラなどと同じような戦闘狂いかと思っていたのだが、意外にもクオンは自分の負けを素直に認めたのだ。

 とことんやるまで終わらないと覚悟していたので、少々拍子抜けだった。

 しかしクオンは今の戦いで十分に満足したのか、参ったの一言の中に怒りや悔しさは感じ取れない。むしろ嬉しそうなくらいである。 


 「ええと……こんなもんで良かったのか?」

 「はい!」


 勢い良く顔を上げたクオンの瞳は無駄にキラキラと輝いていた。

 やな予感がしまくりんぐ。


「オレを……オレを弟子にしてください!!」



 ……やっぱか。やっぱりこんな展開か。上げた顔をまたしても下げたクオンを見下ろしながら、俺は大きくため息をつくのだった。

お待たせしました、最新話です。もう少し戦闘に力を入れたかったのですが、そろそろ物語が進まないとグダグダしそうなので大幅カットです。



ではまた次回。お楽しみに!



表紙絵まだかな~

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