先代勇者はつれ歩く
死にたい。
誰か殺してください。
殺せ~!こんな絶望しかない世界なら、いっそ俺を殺してくれ~!!
はいどうもこんにちは。みんなの先代勇者、社勇です。
なんで冒頭初っぱなから鬱入ってるかと言うと、それにはこんな深い理由があったりするんですよ。
◇
全く深くなんてーよ!!シェリーさんが既婚者だったっつーだけだよバカ野郎ッ!!
……ぐすん。所詮この世は地獄ってわけかい。
修羅道を突き進む我に女人は要らぬ。
と言って退けれる程の精神力が欲しい今日この頃。
あー、叫んでスッキリした。割りと真面目に鬱入ってたんだよねー。
だってシェリーさん隣の家の大学生のお姉さんみたいな男を引き寄せる色香を放ってたし、そのくせ可愛かったり、巨乳だったりお尻は安産型だったり俺の好みにドストライクだったりしたからね。
まあ人妻だって言うんならあの色気は納得だ。
だけどNTR感が半端無いです。今度からNTR物のエロ本読めないや………。
ハッ、いかんいかん。またしても鬱入って錯乱する所だったぜ。
エルフ幼女のリリルリーを助けてから五日、のんびりスローライフを満喫してた俺は――…、
ん?なんで君たち立ち上がってんの?……そう、画面の前の君だよ君。
あ?……幼女だったのかって?。うん、そーだよ。つるぺた幼女だよ?言ってなかったっけ?
まあつるぺたはどうでも良いんだ。俺興味無いし。
……ん?何故そこで怒るんだ?……だって子供だぜ?子供に欲情するわけないじゃん。そんな事したら変態だし。それに俺お姉さん趣味だし。
OK、OK。まずはその振り上げた拳を降ろそうか。
そしてのこの話はもうやめて話を本筋に戻そう。このまま性癖暴露大会を始めるとR-18になりそうだ。
五日間ものんびり過ごしてた俺は、クエストを失敗していたと言う事実を思いだし、急遽カロット村を発つ事にしたのだ。
したのだが、
「…………っ!」
ひしっ、と俺の足に抱きつき、脚に顔を埋めているこのエルフ幼女をどうすれば良いのか、誰か教えてくれると助かる。
『リリルリー、……脚を離してくれると助かるのだが……?』
『やーっ!絶対に離さないもん!』
アレクセリア語で説得するもリリルリーは聞く耳持たず。
誰かマジで助けてくれ。
「ユーヤ君」
し、シェリーさん!?…な、なんで恋破れたガキの前に………ま、まさか…やっぱりシェリーさんも若い男の子の方が良いって事ですかきゃっほーい!
「もしユーヤ君が良かったらリリちゃんを連れて行ってあげて欲しいの」
…………なんて夢物語はなかったんや。シェリーさんの旦那さん筋肉隆々のマッチョだったし。ご無沙汰なんてさせないぜ的な旦那さんだったもんね。ぐすん。
「って、俺が、ですか?」
シェリーさんの言葉を思いだし、俺は狼狽した。
「ええ。……リリちゃんユーヤ君の事気に入っちゃったみたいだし……何よりユーヤ君となら安心だから……」
「安心、ですか…?」
シェリーさんの声が少し悲しげに揺れた。
「……リリちゃんはまだ子供。……なのに一人ぼっちで旅をしてたらしいの」
「……!」
「多分何か目的があって旅をしてるんだと思うわ。……けど、このまま旅に出させてしまってはまた今回のようになってしまう。………けど、ユーヤ君が一緒なら万が一なんて事はないでしょうし。……ね?」
そ、そんな風に甘えた仕草をしたって無駄ですよ!。
エロいお姉さんの頼みなら命を賭して受けるが既婚者、つまり彼氏持ちのお願いなんて聞いて俺にメリットなんてな―――
「任せてください。命に賭けて守って見せますよ」
俺のバカ!正直者なんだから!
自分のバカ正直さ加減に辟易しながら俺にしがみついてるリリルリーを見下ろすと、
「……っ!」
うきゅーんっ。とわけのわからない効果音のつくようなコマ撮りで俺を見上げているリリルリー。
なんで目がキラキラしてんの?なんで顔真っ赤なの?なんで更に強く抱きつくのー!?
こうして先代勇者と、エルフ幼女との長い旅が始まった。
◇
「と言う訳もなく、今日も今日とてギルドへゴーですよ」
カロット村からルクセリアの王都まで歩きで二日、馬で一日かかる距離を一時間で走り抜いた俺は街の中心部にあるギルドへ向かっていた。
『ユウってとっても速い!』
俺の肩に座りきゃっきゃきゃっきゃと喜ぶリリルリー。
俺は彼女が大物ではないかと思えて来ていた。
全力ではないものの結構本気を出して走った筈なのにケロッとした様子に驚いたのだ。
かつて勇者特急なんてふざけて真似をしたことがあったが、背負った奴等はお陀仏。
乗せた俺が吐瀉物をぶちまけられてからは禁じていただけに、なんの不都合も無いとばかりに笑うこの幼女に、
「リリルリー…恐ろしい娘!」
と戦慄を覚えていた。
「もうそろ着くからなー」
「?……何故、イシュレール語?」
エルフの言語、アレクセリア語を使わずにイシュレール語で話しかけた俺に、リリルリーは首を傾げ、イシュレール語で返す。
「アレクセリア語はここらじゃ珍しいんだ。変に探られるのも嫌だし、アレクセリア語は基本二人っきりの時だけだ」
「わかった。そうする」
聞き分けの良く頷いてくれたリリルリー。
上の理由もあるが、リリルリーにはイシュレール語を上手くなって貰いたいと言うのも理由の一つである。
イシュレール語はこの世界では一番と言って良いほど広く使われている言語だ。絶対役に立つ。
「とうちゃーく」
「到着、した!」
リリルリーと話していると、ギルドに到着さした。実に五日ぶりの出勤である。
中に入ると併設された酒場(見た目としては逆)からは男も女も、酒を飲みながら騒いでいた。
以前のように完全装備ながらも、研ぎ澄まされたような雰囲気は殆どなく、以前の様子に近いものだった。
「ども」
そう良いながらリリルリーを降ろしギルドカードをショートヘアの受付嬢に渡す。今日は巨乳ちゃんじゃないらしい。少し残念だ。
「ユーヤ…いえ、ユウ・ヤシロ様ですね?
おめでとうございます。ユウ・ヤシロ様は適正能力があると判断したため、Cランクへの昇進クエストが受注出来るようになりました」
酒場でのバカ騒ぎの中でもはっきりと、彼女の言葉は俺の耳に届いた。
「………え、…ええー?…お、俺、Eランクでしたよね?。それが何故にどーして突然Cランクに?」
俺の間違えでなければEの次はDの筈なんだが?。
あれ?俺が間違えてるのか?……英語苦手だから不安だぞ!?。
「ユウ・ヤシロ様はフェイズ3に以降したオークの巣を単騎で制圧、破壊しました。ギルドはこの功績を認め準ギルド団員ではなく、正規ギルド団員への昇進を認めました。それによって、現在ユウ・ヤシロ様はギルドランクD。そしてCランク昇進クエストを受注する権限を持っている状態になっています」
…………なるほど、ね。
つまり……俺を戦争に引き入れたいってわけだ。
まあ何も今すぐ受けなきゃイケないって訳じゃないし、気楽に行こっかな。
「へー。……で所でDランクのクエストって今なんかあります?」
そう言えば旅に行くとは目標立てていたものの、実際何処に行こうか。
南国リゾートってのも良いし、確か大陸中央部にはどデカイ闘技場を持ってる自由都市ってのがあったな。彼処の褒賞金とか取ったら楽に生きていけそーだなー。
とこれからの想像をしていた俺の考えは、次に受付嬢のおねーさんが発した一言に吹き飛んだ。
「………ぎ、ギルドでは今回の事例は特例であるものとし、ユウ・ヤシロ様が受注できるクエストは昇進クエスト『つがいのバジリスクの討伐』のみとなっております……」
明らかに可笑しいと言うことをおねーさんも理解しているのだろう。彼女は震え、掠れた声でクエストの名前を言った。
おいおい、バジリスクって……石化の邪眼を持った竜種だぞ!!?
いつからリリルリーが年頃の娘だと思っていた?
<なん……だと
感想お待ちしてますえ