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先代勇者は隠居したい(仮題)  作者: タピオカ
港町ベ・イオ編
75/192

先代勇者と闘技場 弐


「だあああぁぁっっ!?」

見事。そう感嘆の言葉が漏れる事間違い無しの回避だった事だろう。

ニヒルな感じで笑った後のエビ反りだから格好はつかないけど。

直ぐ横を掠め飛ぶ魔力の散弾を皮一枚で避けて俺はズサー、とアニメの様に地面を滑る。

「ぐふっ。……こ、のっ、ダメシスター! いきなりぶっ放すたぁどう言う……っ!」

起き上がりながら振り返ると、散弾を受け吹き飛ぶ三、四人の男達と、散弾をかいくぐってベルナデットに迫る狐耳野郎の姿があった。ベルナデットの奴、俺の背後にアイツが居たから……。


「ベルナデッ ──っ!?」


ベルナデットに向かい掛けだそうとした俺に、陰が差した。


ズガンッ!


「ほぉ、良く避けたなクソガキ」


振り下ろされた剣が岩でできたステージを砕く。

間一髪でその攻撃を避けた俺は、その剣の振った主を見て舌打ちした。


「テメェ……『人斬り盗賊』ドーメル! まさかテメェなんかが参加してるとはな」


「そっちこそ久しぶりだなァ、荷物番!」


大柄のその男、ドーメルは剣を振り上げ、勢いよく俺に振り下ろして来る。

俺はそれを紙一重で避ける。


「どうせ合法的に殺しができるから参加してるとかなんとかだろ!?」


「ご名答! 褒美に殺してやるよ!!」


この男の名はドーメル。

三年前旅をしていた際の事だ。とある街に着いたとき、シルヴィアやレオとは別行動をしていたときに、荷物番をしていた俺達に襲い掛かって来た盗賊の頭だ。


「あの時の借り、返させて貰うぜぇ?」

「自業自得じゃねぇか!!」


勿論盗賊達は軽く撃退できたものの、こいつだけは桁違いに強く、オルヴィア達を守りながら戦っていた俺は苦戦した。


……だが、今は守るものなんていねぇ。


(シッ)!」

「ッ!!??」


大きく振りかぶった瞬間にドーメルの懐にもぐり込み鳩尾に拳を叩き込む。

結構強めにやったからか、ドーメルは一撃で気絶した。


「剣いただきぃ!」


ドーメルの身に付けていた剣をはぎ取り、ドーメルを場外の海に蹴飛ばしておく。

起きあがられても厄介だしな。これで失格扱いだ。


「さて……」


ベルナデットの元に向かおうとした俺だったが、左側からブンブンと何かを振り回す音が聞こえ、反射的にしゃがみこむ。

ブォンッ!

かがんだ俺の直ぐ真上を鉄球が掠め飛ぶ。そして、避けれなかった選手達が鎖に繋がった鉄球に纏めて吹き飛ばされて行く。


「グヒヒヒヒ! 良く俺様の鉄球を避けたな、勇者一行の小僧!」

「『粉砕鉄球』ルゴロ!? テメェまで参加してたのか!?」


ルゴロはまん丸な体格に似合った棘付き鉄球を扱う奴で、これまた旅の途中に俺達に襲い掛かって来た悪漢だ。


「グヒヒッ。グチャグチャのミンチにして――ッ!?」

「!?」


今まさに鉄球を振り放とうとしていたルゴロ。だが、奴の背中から鮮血が吹き上がり、ドシン、と音を立てて倒れこんだ。

ガシャ、ガシャッ。

その背後から現れたのは血濡れの鎧に身を纏った男が現れる。


「……久しいな、……黒髪の少年よ」


ボソボソとして聞き取り辛い喋り方と騎士道精神に反した戦いを好むのが特徴の騎士、


「『外道騎士ラーバングス』!? 何だ何だ、今回は悪党大集結か!?」

「いざ、参る!」


血に塗れた剣を俺に向け振るいながら迫るラーバングス。血を飛ばして目潰しをしたいらしい。


「相変わらず姑息な手を……ッ」


血を腕で受け、迫るラーバングスに備えようとしていると、ラーバングスが腕に付けた盾の裏から小袋を取り出し、その中身を俺に投げつけてきた。


「なっ!? ちくしょうっ、目に砂がっ!」

「貰ったぞ、少年!」


血でダメなら砂で目潰し。二段構えというわけかっ!

勝利を確信したラーバングスが切先を俺に向けた(・・・)


「き、貴様!」

「残念だったな! テメェの手の内なんて読めてんだよ!」


そう、咄嗟に目を瞑り目潰しを喰らった振りをしていたのだ。攻撃の態勢になっていたラーバンクルは驚きの表情を見せる。


「殺しはしない。寝てろっ!」


奴が突きを繰り出すよりも速く剣を振り抜く。この一太刀でドーメルの剣が折れたものの、ラーバングスの鎧を切り裂き、致命傷にならない程度の傷を与えた。


「……ひ、卑怯、なり……」

「テメェだけには言われたくないわい!」


鮮血を上げて倒れこむラーバングス。……たく、この調子だとあと何人か知り合いがいそうだな(悪い方で)。


「ま、それはともかく盾ゲットー!」


今ので剣が折れたから新たにラーバングスの盾を頂戴しておく剣は血に濡れてか錆び付いていたのでパスで。ついでにラーバングスとルゴロを場外に蹴飛ばしておこう。

しかし……盾だけでどうやって戦えってんだよ。

盾っていったらゲームとかでは地雷職の一つじゃないのか?

メイン盾って言っても剣を使える騎士ならまだわかるが、盾のみってのは流石に無理がある、気がする。


「ほげあぁっ!?」

「あ、意外といけた」


後ろから迫って来てた奴に盾で裏拳を放つと、パァンッ! と小気味良い音がなり相手を吹き飛ばす。

良し良し、中々使えるぞ。

盾だけで戦う勇者っつーのも有りかもな。


「行くぜぇっ!!」


新たな戦術を得た俺は破竹の勢いで敵をなぎ倒して行く(盾で)。



「早速始まった魔装演武。開始直後からの激戦になっております。さて、ここでゲスト兼解説の紹介とさせていただきます」


「どうも、ジャン・ジャック・ユースタスです」


「あの大ベストセラー作、『勇者列伝』の著者であり今大会の出資者でもあるユースタス氏。今日はよろしくお願いいたします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


「では早速実況に移りたいと思います。試合開始直後にゼッケン番号28、ベルナデットが攻撃を仕掛けたのを皮切りに、ステージ上は途端に激戦区となりました!」


「既に約十以上の選手が脱落しております。残った中で目立つ選手は……ゼッケン番号28、『謎の美少女代行者(自称)』ベルナデット、そしてそのベルナデットと激戦を繰り広げているのはゼッケン番号1番! 『疾風繚乱のクオン』こと、ご存知クオン・ヘレオット! クオン・ヘレオットはこのベ・イオの街の長であるヴォーダン・ヘレオット氏のご子息! ヘレオット組では次代の頭として大きく期待されている存在であります。他にはゼッケン番号14番、二メートルを超す巨体を持つ『拳骨神父』ウルガン! 7番の『中年騎士』ファルハット・エンハンス! そして36番、無名の戦士ユーヤ・シロウ!!」


「フフ。ユウ……失礼、ユーヤ・シロウ選手は人斬り盗賊、外道騎士など悪名高い戦士を一瞬で無力化させてましたね」


「無力化? ラーバングス選手は血を出してましたが……」


「フフフ……。彼は殺しません(・・・・・)よ」


「?」


「あぁ、失礼。彼は殺せてませんね。あの一撃、鎧が堅かったからなのかワザとなのかはわかりませんが、剣で斬ったのは致命傷にならないような場所で、しかも血の量も少ない。私の見立てではラーバングス選手は激痛で気絶しただけでしょう。装備を奪った後に場外に蹴り落としたのも、気絶で終わらせていたからでしょう」


「なるほど、ありがとうございます。――おっと? ユースタス氏の解説の最中、ステージ上は急展開だぁっ!」




「っ!?」


轟ッ!!

直ぐ耳元を剛拳が掠めた。

速い。……拳の速度だけなら、俺をも上回る事だろう。頬を伝う血が、その予感を裏付ける。


「ふんぬぅっ!」


二メートル近い巨体から繰り出される拳は、ただ殴る事に特化したような筋肉隆々な腕により砲弾の如き破壊力を持つ。


「くそっ!」


もはや受けようなどとは思わない。常人を逸したこの身体であっても全身の骨を砕かれ殺される(・・・・)

戦場の空気、血の臭い。そして極限の緊張感の中で、俺は三年前に感じていた衝動を思い出しかけていた。

そしてその衝動に呑まれる訳にはいかない。ある意味中二病よりも厄介な物が蘇ってしまいそうだ。




「このウルガン、この世に生を受け四十四年、ここまで息を乱したのは初めてだ」

「だろうね」


巨漢の男が拳をギリリ、と握り絞め次弾の装填準備を整える。

必殺の一撃だろう。僧侶のくせに相手を殴り殺そうとしてやがる。

全くベルナデットもそうだが、教団関係者は荒事に適正ありすぎないか?


……いや、今となってはそれもどうでも良い。


「この地に戻って早数ヶ月。……こんなに燃えるのは久しぶりだ!!」


そう、俺が求めていたのは血と汗が弾ける死闘なんだから!! 

さて最新話です。二つ名とかの乗りはワン○ースからの影響でまくりですね。


ではまた次回。熱血キャラ化し始めた勇をお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
あ、もしかして前回の召喚で殺しまくったから反省してるとか? でも盗賊とかなんちゃら騎士とかほっといたら被害増えるのでは? 作者的にはその辺どうお考えで?ただのヘタレなのか、文字通り人類を救う気がないの…
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