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先代勇者は隠居したい(仮題)  作者: タピオカ
港町ベ・イオ編
73/192

先代勇者、待機中?

そもそも『ガラリエ魔装演武』とはなんなのか。

演武と言うからには、殺陣の披露などが行われる筈だ、と思った貴方。

今より数百年前まではその認識で間違いなかったのだ。


……そう、その数百年で、魔装演武は大きく変わった。

魔術や武術の各流派が己の技を披露し他の流派の技を研究する一種の研究会の様相を見せていた魔装演武は、とある演武者の一言で方向性が変わることとなった。


「やっぱ俺らの流派が一番カッコ良くてサイキョーだよな」


少し変えてはいるがこんな感じの軽い、そして他流派を小馬鹿にしたような言い方だった。

そしてその言葉を受けて黙ってられるほど、他の流派の演武者達は温厚ではなかった。


「お? 何、お前ら弱小集団がサイキョー? 笑わせんなバーロー」


「お前んちも大して変わんねーだろうが。俺らの流派が一番だし」


「あ? 何? やる? 俺らは別に構わないけど?」


「やってやんよこんちくしょー!」


そうして各流派入り乱れての乱闘が始まったわけだが、乱闘なんかでは最強の流派なんて決まるはずもない。

狡賢い戦い方で生き残る者もいるからだ。


最強を、頂点を決めようと切磋拓磨するのは褒められる事だが、称号に目が眩み邪道に走る者達は少なくなかった。むしろ大半が姑息な手を使い始めたのだ。

ご飯に腹痛薬を仕込ませたり、トイレの紙にカラシを大量に塗り込ませておいたり……。


外道行為が易々と行われると言う事態を重く見た各国の重鎮達は、互いに協力しあい、数十年をかけて彼らをルール上で戦わせる事に成功したのだった。


そして今の魔装演武へ繋がる。



「んで、時は流れ流れて世界で一番強い奴を決める大会になったと……随分と物騒なわけだ」


俺はベ・イオにある闘技場の選手控え室で、ベルナデットの持っていたガイドブックを読んでいた。

俺の周りには屈強な肉体を持つ野郎達がそれぞれの武具や肉体の調整に勤しんでいた。

ちなみに、選手控え室と言っても俺が出場するわけじゃない。


「ふっ、やぁ!」


俺の目の前で型の練習をしているベルナデットの付き添いなのだ。


「ふ、ふふふ。今日は絶好調ですよヤシロさん! このコンディションならこの間のおっきなドラゴンゾンビも退治できそうです!」


俺と海翔の二人掛かりで仕留めた古竜をソロ狩りとか、流石に無理だろ。

まああれだ、それくらい完璧な状態だって事だろう。


「私が側面から攻撃を仕掛けると、恐らく腕か尻尾で薙ぎ払うように攻撃をしてくるでしょうから、私はその攻撃してきた部位に瞬時に飛び乗りその上を駆けて……」


あ、完全に攻略するつもりだこのベルナデットさん。


「所で、ヤシロさんも参加してみてはいかがですか?」


「参加って……この大会に?」


「はい」


シュミレーションを終えたベルナデットがベンチに腰掛けていた俺の隣に座る。


「ヤシロさんは私の攻撃を紙一重とは言え回避出来ました。才能は十分にあり、肉体的にも高い水準を誇っていそうです。この前触らせていただいた時に感じましたが、一種の『完成された肉体』とも思えました」


むー。完成ねぇ……俺的にお姉様方が寄りかかりたくなるような肉体になりたいのだが……(余談だが、昔同じ事をシルヴィアに言ったら本気で止められた)


ってあれ?


「俺ってお前に身体触らせたことないよな?」


俺の方はあるけど。胸とか。


「ぎ、ギクッ」


なんだ、その今時は子供ですらしないようなリアクションは。


「ち、違うんです! け、決して!寝ているヤシロさんのお腹がセクシーでついつい触ってしまったなんて事は決してないんです! 決して!!」


「……ソ、ソウナンダ。ヨクワカッタヨ」  


触るのは馴れてるけど触られるのは馴れてないからかな……な、なんか恥ずかしくなってきた。


「予選に参加する選手は集まってください!」


ベルナデットが顔を真っ赤にしながら続けようとしていると、選手控え室にスタッフらしき人が入ってきた。やはりと言うか、選手達を呼びにきたらしい。


「が、頑張ってねベルナデット」


「急によそよそしくならないでくださいよぉ!」


涙目のベルナデットに軽く手を振りながら見送る。


にしても大丈夫だろうか。やけに張り切っていたけど。


俺がこの予選に出ようか渋ってた時に「私に任せてください!」とか自信ありげに胸張って言ってたけど……。

ベルナデットの実力を性格に把握してないせいか不安が残るぜ。


そんな事を考えてたのか、相変わらず気配の察知が苦手だったせいか、俺に近づいてくる人影に気づくのが遅れた。


「ん? ……なにか用か?」


気づいた時には金髪の、俺と同じか少し下くらいの歳の野郎が目の前に立っていた。


「アンタが出るんじゃないのか?」


ソプラノボイスが耳につく、華奢な体格のそいつはどこか呆れたようにベンチに腰掛けていた俺を見下ろす。


「いや、相方がテンション高めだから任せてようかなって思ってさ」


あんまり目立ちたくないって理由もあるけどね。


「……女の影に隠れて、それでもアンタ男かよ」


心底呆れたようにそう言って奴は、明らかに俺を見下す態度になった。


「……あ?」


「ハッ! 睨むだけしかできないのか?」


なんだ、なんだなんだ? なんでいきなりこんな空気になってんだ!?


そもそもなんてこいつは俺に喧嘩ふっかけてきてんだ?

意味がわからん。


「俺の親父に会いたいんだろ? なら女なんか頼りにしてねぇで、お前が来いよ」


そう言い捨てて、そいつは控え室を出ようとする。

親父? ……ん?こいつ、


「俺も親父も、軟弱ヤローは嫌いだぜ?」


金髪の中からぴこんと伸びた狐耳。……なるほど、だから鈴なのか。


狼人族が多く在住する港町『ベ・イオ』。

その長であるヴォーダン氏はもちろん狼人族だ。

そのヴォーダン氏の子供さんに、学院長は何故鈴を贈るのかと思ってたが、……養子か何かかだろう。

ヴォーダンの子供は、狐族だったのだ。


もちろん勇も戦いますよ~。

お待たせしました、最新話です。


2日毎がキツくて早くもギブアップしそうです(笑)


ではまた次回。お楽しみに!

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