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先代勇者は隠居したい(仮題)  作者: タピオカ
港町ベ・イオ編
68/192

先代勇者と闇夜の襲撃者

雨音が激しくなるにつれて、灰色の外套から少しはみ出た勇の肌を打つ雨も強くなる。

勇は雨がっぱ代わりの外套を頭から被り、キャラバンの荷馬車の上で座っていた。

ここならば周囲を見渡せられるからだ。

商隊の人達が荷馬車の中やテントの中で眠る中、勇は周囲の気配を気にしながら異変が無いかを見続ける。

本来気配の察知を不得手とする勇は、常人と比べてずば抜けた視覚と聴覚をフルに活用し周囲の警戒をする。


三年前もそうしていたように、勇は視覚と聴覚を駆使し、寝ずの番を取っていた。


(にしてもすげーな。台風かなんかかってくらいの豪雨だぜ)


外套は最早勇の視界を濡らさないだけにしか役立っておらず、全身がずぶ濡れだ。


全身を雨に濡らしながらも、勇はただただ周囲の警戒に精を出す。


そして何分、何時間か経った後、唐突に異変に気づいた。


(なんだ? ……雨音に混じって、変な音が聞こえる)


それは本来聞き取れる筈のない音だった。森に住む獣達ですら、気づけるか否かという類の音だった。


だが何かの間違いかもしれない。

その可能性もあり様子を伺っていると、


(……何かの、足音だ)


パシャ、と水溜まりを踏む音がした。


(獣か? それなら倒せば良いだけだが……)


荷馬車の上で膝立した勇は、出来る限り姿勢を低くしながら周囲の森に視線を向ける。

水溜まりを踏んだ音がどこから聞こえたかは気づけなかった。故にどこから来るかわからない。


(山賊の類なら……面倒な事になるぞ)


後ろの腰に付けたポーチに手を伸ばし、スローイングナイフを手に掴む。

直ぐにでも投擲できる体勢になる。


そしてその体勢のままでいると、周囲からぬかるんだ地面により消音された、だが消し切れなかった足音が聞こえて来た。段々と近づいて来たのだ。


(囲まれてる!? それに……なんて数だ!)


足音が次第に大きくなってくると、その足音の数にも驚かされた。

四つ脚の獣なら十数体。人に換算すれば二十人以上の足音が聞こえてくる。


足音の主達は明らかにこのキャラバンを狙っている。

取り囲んでジリジリと近づいて来ているのだ。


ベルナデットや商人達を起こすべきかと思案した瞬間に、弓の弦を引き絞る「ギリリッ」、と言う特殊な音がなった。


(盗賊か!)


音がした方にナイフを投擲し、それと同時に荷馬車を蹴って弓を持つ盗賊へと襲いかかる。


「っ!?」


矢を放とうとして、弦が投擲したナイフで裂かれた事に気づき慌てた奴の前に降り立ち、


「……ケン…タウルス?」


その馬と人とが合体したような姿に、俺は思わず立ち止まってしまった。


「くっ!」


俺のように雨具を羽織っていたケンタウルスは俺から距離を取り、代わりとばかりに他のケンタウルスから文字通りの横槍を入れられた。


人馬族ケンタウルスは狩猟民族であり、槍やハルバードを用いた戦闘をこなす戦闘集団だ。

人馬族は誇り高く、常に高潔であろうとする部族の筈だ。


「それがなんで……こんな盗賊みたいな真似してんだよ!」


人が寝静まる夜に集団で襲いかかる、それはまさしく盗賊のようではないか。

自身の横腹を狙う槍の穂先を握り締め、そのまま槍をへし折りながら勇は叫ぶ。


「!?」


槍を折られたケンタウルスは息を呑み、目で追えぬ速度で放たれた手刀を首筋に当てられそのままバシャッ、と大きな音を立てて倒れ込んだ。


「テメェら全員ケンタウルスだな!? ケンタウルスの戦士は皆誇り高く高潔と聞く! それがなんでこんな真夜中、それも雨の中コソコソとしてやがんだ!!」


倒れ込んだケンタウルスの頭を割らない程度に踏みつけ、首に剣先を向けながら雨音に負けないほどの大きな声で勇は叫ぶ。


雨の音すら一瞬止み、再び雨音が鳴り始める。


「答える気がねぇなら、コイツの首跳ぶぞ?」


そして人馬族は身内を大切にする。

人質を取られ明らかに動揺したケンタウルス。


「待って! 兄さんを殺さないで!」


弓の弦を切られたケンタウルスが、雨具を放り捨てて勇に向け駆け出す。


「殺す気は無い。お前等が答えてくれたらな」


碧色の宝石剣を倒れたケンタウルスに向けたまま、勇は言う。


「お願いっ……兄さんをっ」


雨具で顔や身体が見えなかったケンタウルスは金髪の美しい女性だった。

いつもならそれに反応する勇も、女のケンタウルスを一瞥する程度に終わった。


「テメェらを率いたのは誰だ。こいつか?」


倒れたケンタウルスの頭を少し強く踏みつけながら問うと、右手から雨具に身を包んだケンタウルスが現れた。


「私だ」


同胞を人質に取られ気が立っているのか、そのケンタウルスは苛立った声でそう言った。


「何故襲った。金目の物でも狙ったのか?」


勇が問うと、そのケンタウルスは雨具を外し顔を見せながら叫んだ。




「浚われた同胞を、救出するためだ!」


淡い栗毛の女が、勇をまるで親の仇のように睨んだ。

お待たせしました。新話です。


ケンタウルス娘とか個人的に大好きです(笑)

この章からバンバン人外娘が出る予定なので楽しみにしてください(笑)



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― 新着の感想 ―
キレるのはいいけどやっぱスタンスがよく分からんよな 今までハッキリとした悪人出てきてないから人殺しするのかも分からんし デブを失脚させた時も命取らなかったせいで今面倒なことになってるのに…… 1度酷い…
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