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先代勇者は隠居したい(仮題)  作者: タピオカ
リズワディア学園編
65/192

先代勇者と新たな旅路

さて、海翔と別れたのはいいものの、エリやマナの居場所を俺は知らないわけだが、どうすれば良いんだろうか。


感動的に立ち去った後なので教室に戻って場所を聞いたりするのは無しだ。そんな度胸は無い。


となると親から貰ったこの足で探すしかないんだが……広いからなぁ、ここ。


そんな事を思ってると、差していた日の光が遮られた。

反射的に見上げると、そこには


「白、……パンティ、なのかっ!?」


箒に跨がった少女の、白い薄布がチラと見えた。


ん? 箒?


「マナ、か?」


「ふぇ?」


一瞬で真上を通り過ぎたマナが空中で止まりながら身体を向ける。

自転車みたいな止まり方だ。ズサー、って感じの。


「ヤシロさん!」


スイー、と滑るように飛ぶマナは俺の前で箒から降りた。


「胸……あ、いや。随時上手くなったもんだなむ、マナ」 


「ど、どこを見てるんですか!」


俺の視線に気づいて胸を隠すマナ。

いやそれはずるいって。小柄な身体に不釣り合いの胸がバルンバルン動くもん。

箒から降りた時とか凄く跳ねたし。


「もう、酷いですよヤシロさん」


「スマンスマン。……そうか、ヘンリエッタが言ってたのはそう言うことか」


特異な装備、ってのは箒の事なのだろう。


「エリとは別行動なのか?」


いつも一緒なエリの姿が無いので聞くと、マナはクスリと笑って足のつま先で地面を数回ノックするように蹴った。


すると、


トプン。


「マナ、呼んだ?」


「うおぉ! すげぇっ!」


マナの影から這い出るようにエリが現れたのだ。


「ヤシロ、さん?」


「おお。なんか作業中だったか? 悪いな」


「別に」


コテン、と首を傾げて俺を見るエリに謝るとエリは首を横に振る。


「今から学校ですか?」


「んにゃ、学校から来た所。タイミング良く現れてくれて良かったよ」


「「?」」


コテン、と二人が揃って首を傾ける。


「次の街へ行くから、二人にも挨拶しておきたかったんだ。いやぁ良かった良かった」


タイミング良く会えて良かったと喜んでいると、マナが今にも泣きそうな顔になった。


「そ、そんな! 突然すぎますよぉ!」


「あー、すまん」


マナが言うように確かに突然過ぎた。だけど最初から二週間くらいと決めてたから仕方ない。


「アリシア様には、……まだ?」


「ん? あぁ。まぁアイツは何かと忙しそうだしな。最悪会わなくても……」


通信石があるし、と続けようとした俺の言葉を、マナが遮る。


「そんなのっ、ダメですよっ!!」


「……え?」


眼鏡の奥で強い意志を感じさせる瞳が俺を睨む。普段の弱気なマナとは思えないような瞳と、俺を叱るような叫びに、俺は思わず聞きなおしてしまった。


「アリシア様だって女の子なんですよ!? 別れの言葉の一つくらい掛けるのが普通じゃないですかっ!」


「お? おお?」


な、なんだか良くわからんが……俺は何か地雷を踏んだのか?


「アリシア様はヤシロさんの事をっ、……大切に想っているって言うのに、そんなの酷いですよ!」


「いや、だから邪魔になるだろうし……」


「問答無用ですっ!」


言い訳と取られたのか、マナは俺の手を掴み引っ張った走り出した。


「お、おい! ちゃんと歩くから引っ張るなって!」


問答無用の言葉通りマナは応えてくれずに腕を引くばかりだ。引っ張り方が脇に腕を挟む方式なおかげでマナの横乳が微かに手に触れて幸せなのは内緒だ。




「勇?」


アリシアが俺たちに気づき振り返る。


「あー、……よう」


気の利いた台詞が思いつかず、取りあえず返事を返すと隣にいたマナとエリかは非難の目を向けられた。


「ふふふ、……なるほどね。えいっ」


パチン。


アリシアがその細い指で音を鳴らす。その瞬間、周囲の音と言う音が掻き消えた。


「旅立つ前に二人に会って……ここに連れてこられた、って感じ?」


「お、大当たりだぜ」


音が消えた世界の中、アリシアの声と俺の声だけが聞こえる。


隣に居たマナ達は、無音サイレントの魔法が掛けられたと気づいたのか、無言で頷きあって俺たちから少し距離を置いた。


「気を遣わせちゃった、かな?」


「変に気を遣いすぎてる感はあるけどな」


まあ仕方ない。アリシアが公言してたせいもあるが、マナ達にとって俺は『お姫様の想い人』なのだから。

テンプレートな物語みたいなのを 期待されてるんだろうが、正直俺には荷が重い。


「で、どうだ? 復興作業は」


「魔法陣と守護結界の修正はもうあの日に終えてたから今は結界の基点の調査をしてたの」


「調査? ……ああ、結界が壊れた理由を調べてたってことか」


俺が自己完結するとアリシアは頷いて、途端に真剣な顔つきになった。


「調査した結果、色々なことがわかったの。……結界を破壊したのはウムブラで間違いなさそう。基点周辺に古くさいルーンが刻まれてた。ルーンは錬金術師の常套手段」


「成る程な。ルーンでなら任意のタイミングで魔法を発動できるからな」


俺が使っている魔装剣の魔法も、ルーン文字をいくつか組み合わせて刻んだものだからだ。


……ん?


「刻まれてたって……誰が刻んだんだよ」 


俺がふと浮かんだ疑問を呟くと、アリシアは頷いた。


「そう、そこなの。ウムブラは学院結界に入ることはできない。ウムブラがこの学院に進入してくるには、学院結界が停止してないと不可能なのよ」


ウムブラは人間だった過去を持つアンデッドだ。リッチと言う種族、と言うより部類だな。リッチはアンデッドの中では最強クラスの存在だが、婆ちゃんの敷いた学院結界は魔族や魔物、事アンデッド系の侵入を阻む鉄壁の結界だ。


ウムブラは侵入できない。だと言うのに奴のルーン文字は刻まれていた。


「奴得意の人間操作で……」


「多分、違うわ」


多分と言う言葉がついていながら、アリシアはやけにハッキリと違うと言ってのけた。


「何か、理由があるのか?」


「ウムブラは一度この学院へ侵入し、基点周辺にルーン文字を刻んで基点の破壊、基点の効果を無しにするような魔法を使用した。これは間違いないわ……」


「いや……だから、学院結界があったんだから入れるわけないだろ?」


わかってることを再確認するような言葉に少し苛立ちながら返す。が、アリシアの真剣な表情は崩れない。それどころか、更に鋭さが増した。


「ええ、そうよ。……でも、学院結界が発動していなかったなら、ウムブラは容易に入ってこれる」


「……なんだと?」


これまた同然のことを言われたのだが、俺はココにきてようやくアリシアの言おうとすることに気づき始めた。


「そう。今より約二ヶ月くらい前。一度だけ学院結界が止まった日があったの。後から聞いた話で、その時は深く考えなかったわ。ううん。考えられなかった。ある意味、学院結界よりも驚くべきことが世界に向け発信されたからよ」


学院結界よりも……それに、二ヶ月前って……!


「そう。……当代の勇者が、この世界に召喚されたの」


俺は唐突に、本当に唐突に、ルクセリアのお姫様の言葉を思い出していた。


『 リーゼリオンの物と我がルクセリアの召喚式は違います。

リーゼリオンの召喚式は古代の召喚陣をリーゼリオン風にアレンジした物で星の並びによる魔力の収束を利 用し、局地的な魔力溜まりを作りだし、その膨大な魔力で 世界扉を開く物です。

対して我がルクセリアの召喚式は竜脈から汲み上げた魔力を円に流し込む事により循環させ、 安定した世界扉を作り上げるのです』


そして、この学院結界は、龍脈から魔力を汲み上げ続けて、発動している(・・・・・・)


「俺たちが召喚されたから、魔力が無くなった……?」


「龍脈はルクセリアからリズワディアに向け流れてる。……本来星の並びによって生じる莫大な魔力をそそぎ込み開く世界扉、そしてそれと同等の物を作り出すには、それ相応の、莫大な魔力が必要となる。つまり……」


リズワディアに流れてくる筈だった龍脈の魔力は、一日だけ《・・・・》、結界を維持できないほどに枯渇していた、と言うことか。


「……」


「そしてルーン文字を刻んでから約二ヶ月も間を開けてウムブラはこの街の結界を破壊した。結界をその場で壊さずに二ヶ月も待った理由はなんなのか、更に言うなら何故勇者召喚のタイミングを知っていたのか。今回の事件は色々と考えさせられる一件だったわ」


絶句してる俺を置いて、アリシアはそう締めくくった。


「ルクセリアに、魔族を手引きしている奴がいるのか?」


そう思い着くのはしょうがないだろう。ルクセリアが世界扉を開くタイミングにウムブラはこのリズワディアの結界の基点にルーンを刻んだのだから。


「わからないわ。……ただ、偶然で片付けるのは難しいかも」


そう言えば俺が城から出た後、イケメ……いや、海翔はアグニエラと戦ったって聞いたな。アグニエラは俺たちがこの世界に召喚される事を知っていて

襲撃してきたのだろうか……。


「今回の事件、ウムブラは俺を狙って来たのか?」


アリシアに乗り移って俺の行動を止めたウムブラ。

俺に何かしようとして、このタイミングで結界を壊したと言うのなら……いや、どこか足りないな。


「ううん。……これは憶測なのだけど、多分勇がここに居たことはウムブラにとってはイレギュラーだったと思うわ」


「え?」


「ウムブラは勇を相手にするのは二の次、として見ていたわ。でなければ私を使って足止め《・・・》なんてしないと思うの」


……そうか、奴がそんなイニシアチブを得たのなら、間違いなくアリシアを連れ去っていただろう。


そうすりゃ俺は奴を追い掛けて、奴らの陣地へ単身踏み込む事となる。


それなのに奴は俺に何もしなかった。


……だがそうなると、新たな疑問が浮かんで来る。

ウムブラの奴は、本当に何をしようとしてたんだ?


「ねぇ、勇。一つ聞いても良い?」


「んあ? ……ああ、良いけどなんだ?」


俺が思考の海に浸っていると、変に改まってアリシアが聞いてきた。


「まだ、勇者として戦う気にはなれない?」


それは、俺が思考の片隅に置いていた……無意識に考えないようにしてたことだった。


「まだ自分のためにしか戦えない?……まだ、他人の事が嫌い?」


俺は、自分を中心とした小さな世界のためにしか、戦えない。

大切な1と、見も知らない奴ら100ならば俺は100を切れる人間なんだ。

そして三年前、俺はそんな自分自身を含めて人間の事が嫌いになった。

自分のためにしか動けない。自分の欲のためにしか動けない。そんな人間が大嫌いになった。



「まだ、そんな世界を好きでいてくれてる?」


「好きさ。皆、必死に生きているだけだって、気づけたから」


……オリヴィア。俺をこの世界に召喚し、そして俺やシルヴィア達を残して逝ってしまった、リーゼリオンの第一皇女。


彼女が、俺に人間と言う物を教えてくれたのだ。


「……そう、良かった」


二人の姉に良く似た少女が、姉達に良く似た瞳を揺らしながら、俺を見る。

その宝石のような碧色の瞳に映る俺は、アリシアの瞳に、遠くを見るような目を向けていた。




「ん、……どうした、アリシア?」


突然、アリシアは俺に抱きついて来た。腰が抜けるような勢いなんてなく、駆け寄って来る程度の、優しい抱擁。


「変わってなかった。勇は、オリヴィアお姉様が好きなままだった。私はね? オリヴィアお姉様の事を好きな勇が大好きなの。……だから、嬉しくて!」


「……そうか、俺もアリシアの事が大好きだぞ? オリヴィアの次に、だけどな?」


「んふふっ! シルヴィアお姉様が聞いたらすっごく怒っちゃいそう」


「うげっ、シルヴィアにチクるのはやめてくれよ!?」


年相応の笑みを見せてアリシアは笑った




「私に黙って行ってしまうんですか? ……一人きりだと、このレインブルクは広すぎますよ?」


「何を言ってんだお前は」


ベ・イオへ向かうためリズワディアの北口から出発しようとしていたら、街道のど真ん中で腕組みしてドヤ顔のシスターが正統派ヒロインのような台詞を吐きやがった。


「え? な、なんですかその反応は? ここは無言のまま微笑んでヒロインの腕を引っ張り馬に……馬がないのでそのクルセルに乗せてくれるのが普通でしょう?」


「お前、ヒロインじゃねぇよ?」


「そ、そんなぁ!」


あー、相変わらず面倒だなおい。……まあ、相変わらず法衣から延びる生足と美乳がエロいから良いか。


「で、何でお前はここにいんの?」


「いやいや、ヤシロさんこそなんで一言も無しに旅に出ようとしてるんですか! 旅から旅への根無し草って言っても、別れの挨拶くらいキチンとしてくださいよ!」


若干マジで切れてるらしく、黒のシスター服を身に纏ったベルナデットは頬を膨らまして俺に詰め寄る。


隣で見送りしてくれるためについて来たマナやエリもベルナデットの言葉に頷いていた。


「悪かったよ、ベルナデット……」


「も~、仕方ないですね~。私とヤシロさんの仲だし、本当に仕方ないですが、許してあげましょ、ってあいたぁ!? ま、また叩きましたね!?」


「あ、すまんつい」


一瞬で調子に乗ったベルナデットに思わず飛び出た手は、ベルナデットの胸をベチン! と叩いていた。 

いかんいかん、感情を制御しきれてないせいだな。ふっ、俺もまだ青い。


「くっ、くぅ~っ。お、乙女の胸をなんだと……ま、まあ今のは後ほど怒るとして、先にヤシロさんにお伝えする事があるのでそちらを優先させて頂きましょう」


涙目で胸をさすっていたベルナデットは佇まいを直し、コホン、と軽く咳をした。


「私、執行者ベルナデットはヤシロさんの護衛の任に付き、他の執行者からのヤシロさんへの襲撃を防ぐ事に決まりました。と、言うことでこれからもよろしくお願いします!」


スリットスカートの中に手を突っ込んだベルナデットが巻かれた羊皮紙を取り出し宣告するようにそう言った。


「え? 何それ、困るんだけど」


「り、リアルに嫌がらないでくださいよぉ!」


あ、少し困らせようと演技したのだが予想以上にダメージを与えてしまったらしい。

 

「なでぽっ!」


「なっ、なんですかいきなり!」


「なでぽなでぽっ!」


「何かの儀式ですか!?」


泣き出しそうになってしまったベルナデットを止めるため、主人公に許された奥義『頭を撫でた相手は惚れてぽっ、と頬が赤くなる』略して『なでぽっ!』。

今まで成功した試しがないが、これしか無いと俺はこの技に賭けたのだ。その結果、


「うがぁ! せっかくセットした髪型が台無しですよ!」


俺のナデナデを万歳で弾いたベルナデットは怪獣のように吼える。

うん。当然成功するとは思ってなかったヨ。だってあれ許されるのイケメンだけだもん。

 

「酷いです、ヤシロさん。乙女の髪の毛をなんだと思ってるんですか!」


涙目ではなくなったがぷりぷりと怒りながらベルナデットは髪を撫でて整える。  


「で、着いてくるってこと? ……勇者を探すんじゃなかったのか?」


最後の方は小声で聞いた。ベルナデットは勇者である俺を殺すために送り込まれたエージェントなわけで、今はごまかせてるがいつバレるかもわかったもんじゃねぇ。

俺を狙うエージェントと一緒に旅とか冗談じゃねぇぞ。……ベルナデットの人となりは置いといて、な。


「それがですね? ヤシロさんの事を上に報告したところ、執行関係で迷惑をかけてしまう可能性があるため私の任を一時的に解き、ヤシロさんを護衛しなさいと言われたんです。まあ仕方ないですよね。年の頃は近く、容姿などの特徴も名前も一致してしまってる以上、執行者から狙われる可能性がとても高いんですから」

 

俺に合わせてくれたのかベルナデットは小声で言う。


いやいや、流石に気づけよ! ……こ、この教団大丈夫なのか?


俺がウルキオラ教団を心配していると、ベルナデットは羊皮紙をスリット下にしまい、何かを期待するような目で俺を見る。

 


……ベルナデットがなかまになりたそうにこちらをみている。なかまにしますか?


はい ←ピッ

いいえ


はい

いいえ←ピッ


はい

いいえ←


はい ←ピッ

いいえ



ベルナデットがなかまに加わった。


「おお、なんとなくパーティーに加入された気がします」 


「お前牧場行きな?」


「クルセルを合わせても一枠余ってないですか!?」


まあ本音を言わせて貰えば俺も野郎一人旅は寂しいと思ってたわけだし、ベルナデットは言動や行動がウザいものの嫌いじゃあない。

むしろ楽しいとさえ思ってる俺が居る。

変に断っても怪しまれるだけだし……断る理由は、特に無いか。


「改めてよろしくな、ベルナデット」


「ふふふ! ええ、よろしくされますとも!」


やけにテンション高いなコイツ。なんぞええことあったんけ?

まあ別にいいか。


「んじゃ、行くわ」


「うん。気をつけてね、勇」


俺が軽く手を振って言うと、アリシアも頷いてそう返す。


「ヤシロさん……じゃあね」


「おう」


いやぁ、エリは本当に表情の変わらん娘だな。

別れの時だって言うのにどこか眠たそうなジト目に変わりは見られない。……いや、少し涙ぐんでるな。


「……ありがとう、ございました!」


そして一歩前にマナが出てきて、大きく頭を下げて、涙声で叫ぶ。


「わたっ、わたしっ! ヤシロさんみたいな立派な魔法使いに……魔法剣士になります!」


「俺みたいな?」


「はい!」


噛みながら言われた言葉に思わず聞き返すと、マナは力強く頷いた


……なんつーか、嬉しいんだけどめちゃくちゃ恥ずかしいもんだよなコレ。何度味わっても悪い気にはならないぜ。だが、


「やめとけやめとけ。俺の戦い方なんて真似すんな。手本にすんなら百合ロー……ヘンリエッタみたいな魔法使いにしとけって。そっちの方がまだマナの戦い方に近いだろ。最悪、俺みたいにはなるな」


「でっでも! 私は!」


「あー、違う違う。多分ヘンリエッタと戦った時のアレ見て憧れてくれてんだろうけど、あの時使った魔法は『魔装剣』だけなのよ。後は全部ゴリ押し」


「え?」


マナやエリの表情が固まった。もうね、ピタっ! て感じで止まったの。


「? 何の話ですか?」


「ややこしくなるから黙ってろ」


今思えばあの場にベルナデットが居なくて良かったぜ。あんな戦い方してれば絶対に勇者だと……なんとか対処できそうに思える俺は間違ってるのか?


「ほ、本当なんですか? で、でも、あんな戦い方、高位魔法でも使わないと……」


「ホントも本当。だって俺、魔力ねぇもん」


荷物を背もたれにズィルバに乗ると、ズィルバはクケーと鳴いて歩き出す。


「え、……えええぇぇーーっ!!?」


マナの叫び声を後ろに、ズィルバはテクテクと歩き出す。


「じゃーなー」


ズィルバに乗りながら手を振ると、呆然としてるマナを他所に、アリシアが手を振り返してくれた。



また会おう、さらば我が師よ! ……なんつて


「ヤシロさん、私も乗せてください」


「うっせバーカ」


「お、乙女に向かってなんて口を!」


「俺の後ろなら良いぞ? ただし俺の腹に手を回して密着すること」


「外道です!外道がここに居ます!」


「バカ野郎、人は俺を紳士と呼ぶんだぜ?」


こんな感じで騒ぎながら、俺とベルナデットはリズワディアを後にしたのだった。




「………」


「驚いた?」


呆然としていた茶髪の少女、マナに銀髪の少女アリシアが問う。


アリシアの問いに、マナはコクン、と頷くだけだ。


唖然……その他にも、落胆も感じられる。

勇に落胆した訳ではないだろう。多分、勇のようにはなれないと思い知らせれて、自分の力量に落胆したのだろう。


「……多分、勇は「誰かの真似じゃない、自分自身になりなさい」って言いたかったんだと思うわ」


落胆し、落ち込み始めたマナに、アリシアは言い慣れたようにその言葉を口にした。


「誰かの真似じゃ、ない……」


「お手本にするくらいならまだ良い。けど、誰かの真似をし続けていると、自分の良さを無くしちゃう。そう、言いたかったのよ」


遠くなって行く男女と珍鳥(クルケル)を眺めながら、アリシアは何処までも優しい声色で、そう言った。


「……誰かの、言葉ですか?」


何故そう思ったのかはわからない。しかし、マナは聞かずには居られなかった。

少し間を置いてアリシアが口を開きかけた時だった。


「アリシア殿下ーっ!」


リズワディアのローブを纏った中年教師が汗を顔中から噴出しながら走り寄って来た。


「こ、ここに……ぜー、ぜーっ。居ましたかっ」


「コンウェル教授? どうかなさったのですか?」


アリシアが問うと、ビール腹が少々目立つその男は汗を拭い、大声で叫んだ。


「大変です! 大変なのです! 破壊されていた腐竜、いえ、古竜の核の一部から、少女が現れたのです!」





天城海翔は混乱していた。


『時の魔女』を迎えに行き、そのまま古竜の残骸まで案内をさせられ、ついでだからとあたりの瓦礫の駆除を手伝っていた時だった。


いまだ街中に残っている骨となった古竜の骸。その周囲に散らばっていた琥珀色の核。その中で妙に丸く大きく残ったのを見つけて不思議と思い近づいた時だった。




我、魂を渇望す(ソウル・ディザイア)


頭の中に声が響き、その次の瞬間に、古竜の核はドロリと溶け出したのだ。

鉱石のように堅かったそれが突然液状になった事も驚いたが、海翔はそれを越える衝撃を受ける事になる。


「女の……子?」


溶け出した核の中から、灰色の髪をした少女が現れたのだ。


「!」


意識が無いのか、死んでしまっているかはわからないが、彼女を閉じ込めていた周囲の核が完全に溶けると同時に、立つことに力を入れていなかった少女は倒れこむ。


咄嗟に手を伸ばし支えると、微かだが呼吸音がする。


生きていた事にほっとしていると、彼女の目がゆっくりと開いていった。





「貴方は……誰?」


吸い込まれるように美しい碧色の瞳が、海翔を見つめていた。

更新期間最長を記録しました、どうもタピオカです。

風邪とモンハンが連続で来たせいで随分と遅れてしまいました。


さて、次回からはいよいよ新章! グダグダとか言われないよう努力したいものです。

あと毎日とは言わないもののスピード更新したいですね。毎日とか無理ですよおかしいですよなのになんで面白いんだよちくしょう。



……さて、ではまた次回。お楽しみに!



ps

言われて気づきましたが先代勇者の表紙が公開されました!


ちなみに表紙にも伏線を入れてます。どんな伏線かはお楽しみです(笑)

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― 新着の感想 ―
「まだ勇者として〜」から「そんな世界を〜」って流れだと、人嫌いなまま自分一人のために力を振るう世界を愛せるか?って意味としか取れないんだけど? まぁ絶望した挙句、人を助けるためじゃなくて自分のために戦…
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