贖罪の心
「よしっ、と。こんなもんでいいかな?」
「ああ。……悪いね、どうも」
「気にしないでくれよ、社君」
寝具を始めとした生活用品を縄で一纏めにし、ズィルバの背に載せるのをイケメン君に手伝って貰った。何も言わずとも「手伝うよ」と言う言葉が出る辺り人格者だなぁ。
こりゃモテて当然だって。
「クケー」
「ちくしょう、嬉しそうにはしゃぎやがって」
荷物を載せたズィルバが間の抜けた、けど機嫌良さげな声で鳴く。
こんにゃろう、俺を逆さ吊りにして振り回した事などこれっぽっちも悪いと思ってないようだ。
「これから社君はどうするんだい? もし時間があるなら、茜達とも会っていかないか?」
あのツインテールちゃん達ハーレムね。つってもツインテールちゃんに対して俺はあんまり良い思い出が無いんだよねぇ。
「あー……。でも茜に会うのはちょっとやめておいた方が良いか」
俺が断る言葉を考えていると、イケメン君は頬を掻きながら苦笑する。
なんだ、その反応は……。い、いやな予感が……
「社君が居なくなった後なんだけど、茜は結構心配してたんだ。強く言い過ぎた、とか色々さ。……で、ノルンさんから伝わった後、今度会ったら心配かけさせた罰を与えてやる! ……って息巻いちゃってさ。多分今会うと一発二発食らっちゃいそうだね」
笑いながらイケメン君が言う。
おいこら、笑ってる場合じゃないでしょうあんた。
「だから……そうだね、茜達には口伝えになるけど、何か伝えたいことはあるかい?」
「あー、……心配かけてごめんって言っといて」
他に特に伝える事もないし。
「わかったよ」
頷いたイケメン君は右手を差し出してきた。
「ん? ……握手?」
「ああ。ルクセリアの時はろくに挨拶も、送り出す事も出来なかったろ? だから、」
そう言ってイケメン君は強い意志を感じさせる目で俺を見た。
「元気で。……また会おう」
俺の旅を止めるわけでもなく、彼は俺に再会の約束を求める。
俺が勇者だと知らない彼は、俺を魔力の無い一般人だと思ってる。
普通ならそんな危ない事はやめろ、と言う事だろう。そう、危ないのだ。
ここは異世界。危険度で言うなら日本のそれを大きく上回る。
殺人や強盗も多くあり、魔物なんて言うもんまで出現する世界だ。
だが彼はそれを知って尚、俺の旅に祝福の言葉を送って、必ず生きて会おう言ってくれた。
……本当に良い奴だ。俺も、態度を改めないと失礼だな。
「おう、またな。……えーと、天城君?」
「海翔で良いよ、社君」
俺が手を握りながら聞くと、彼は苦笑しながら答えた。
「なら俺も、勇で良い」
「! ……わかった。勇」
俺とイケメン君、いや……海翔はここで初めて、元の世界から一緒に来てしまった知人ではなく、『友人』となった。
◇
「じゃーなー!」
「クケー!」
「ああ! 気をつけてな!」
「おう!」
僕と同じ黒髪の少年が隣に荷物を載せた大きな鳥と並んで歩く。
大きく手を振りながら、彼は別れの言葉を叫ぶ。
社勇。僕達の召還に巻き込まれてしまった、ただの一般人。
名前を教え合ってすぐ、ノルンさんの元に修行に行ってしまい、そのまま旅に出てしまった、同郷の少年。
魔力が無いと知った彼は、ルクセリアギルドの長、ノルンさんの元で己を護る術を教わりっていた。
最初お姫様にそれを聞いた時は驚いたと共に、申し訳無いと思った。
僕達の召還に巻き込んでしまったせいで彼の生き方は大きく変わってしまったのだ。
そして喚ばれた僕らはと言うと、魔族アグニエラ相手に手も足も出ず、騎士を夢見た少女を死なせてしまった。
申し訳無いと思った。勇にも、……彼女にも。
そして力の無さを痛感し、死に物狂いで奴ら魔族と同等の力を得た。そしてそのおかげで、僕は彼を救えた。
「良かった。……俺は、彼まで死なさずに済んだんだ」
つい先日起こった死霊使いが操る魔物達との戦い。
その最中にも、彼は居たようだ。
僕らが来るのが遅ければ、勇を……そして勇だけでなく多くの人を死なせてしまっていた事だろう。
「……そうだ、忘れてた!」
そう、僕はもうそろそろ到着するであろう人達を向かいに行くために復興作業の途中に抜けて来たのだ。
「………元気で」
僕はもう一度勇が去って行った方を見た。
道を行き交う人混みに消えてしまいもう彼は見えなかった。
◇
人混みを抜けるのは時間が掛かるから建物の上を走る。
魔法で強化された身体は、そんなアニメの様な事を可能にさせる。
迷いの森方面に続く南口につくと、そこに豪華な作りの馬車が二台と、それを牽く馬が居た。
先頭の一台から黒い肌をした金髪の女性が降り、視線を海翔に向ける。
「レディは待たせるもんじゃないよ?」
まだ若く、二十代前半くらいのその女性は海翔が近づいて行くと、少しふざけるようにそう言った。
「すみません、久し振りに会った知人と話し込んでしまい……」
謝ると、彼女は蠱惑的な笑みでクスリと笑い、そして馬車へと視線を向ける。
「構いません。我々も、今来たばかりなのですから」
褐色肌の女とは別に、もう一人が馬車から降りて来る。
白い肌に緑の瞳。若葉を思来たわす美しい碧の髪は陽光を受け宝石のように輝く。
紅白が特徴的な所謂巫女服のような装束を身に纏った少女、と言うにはまだ幼く、歳で言うなら8歳くらいの小柄の女の子がゆっくりとした所作で馬車から降りて来る。
「トーレ。勇者様をからかうのはやめなさい」
「ふふ。わかりましたよ、『時の魔女』様」
耳が尖った碧髪の少女と金髪の女は主従のようで、どこか砕けたような関係に見える。親友のようで、まるで姉妹のようで……
そんな事を思っていると、『時の魔女』と呼ばれた少女は海翔へ向き直る。
「では行きましょう、勇者様」
強い意志を感じさせる瞳が、海翔へ向けられたら。
お待たせしました、最新話です。
二代がイケメン過ぎてヤバい(笑) 彼は彼なりに心配していたんですねぇ。
そして最後に現れた謎の二人組は一体……!?(笑)
さて、次回いよいよ学院編最終話。
ある伏線の回収と、新たな伏線を張りに行きます(笑)
ではまた次回!
さ挿し絵マダカナー




