表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先代勇者は隠居したい(仮題)  作者: タピオカ
リズワディア学園編
51/192

月夜、骸の行進【4】

「……『一節(アイン)』から、『六節(ゼクス)』まで開放。……再結合、術式循環」


そこは異様な光景だった。


「結界の連結を確認、同時修復を、開始します」


すぐ外では、今尚血は流れ、怒号が飛び交い、悲鳴が響いている。

だが、そこだけは、まるで世界が違うように思えた。


胸焼けのするような血の臭いと、耳に木霊する断絶魔は離れない。


だが、そこだけは、まるで神聖な場所のように思えたのだ。


「『(クラスト)』を描き、陣を形作る……」


銀色の髪の少女が地を走る淡い光の集約点に立ち、祈るように膝をつく。


「我立つは六芒星(ヘクサグラム)始点にして中心点(メルクマール)

我が爪先より繋ぎの(リーニテ)は走り、陣を刻む」


魔法の詠唱のような、だが、それとはまるで違う方法でその少女はリズワディア学院にある結界の要点と中心点である時計塔の魔法陣を繋ぐ。


ベルナデットは時計塔の魔法陣を転移陣と見たが、ベルナデットはこの魔法陣が存在する真意(・・)に気づけなかった。


この魔法陣、かの『時の魔女』が製作に関わったらしく、一見するとただの転移陣なのだが、専門家が見れば無駄(・・)が多いと気づくだろう。


だが、その魔法陣には無駄などなかった。ある筈が無い。


無駄と思った魔法陣の文字、線、点、紋様など、ありとあらゆる物が互いに干渉しあい、街一つを包むと言う巨大な、そしてこの数千年の間、魔物の侵攻を許さなかった強大な守護結界が作られていたのだ。


陣地成形の天才でもある『時の魔女』ノルン。


だが、彼女が天才があるが故に、この魔法陣には重大な欠陥があったのだ。


一度壊れては、彼女か彼女と並ぶ(・・・・・・・・)程の技量と才覚を持った魔術師でしか修復ができないと言う点だ。


もちろん彼女も、もしもの事は考えた。

竜脈から流れる膨大な魔力を使うことを前提とした魔法陣だから、つぎ込められる魔法はつぎ込んだ。

対劣化防止や六ヶ所の要点を繋ぐ回路の循環による魔力溜まり(・・・・・)の解消など、あらゆる可能性をクリアした筈だった。


だが、壊された。


理由は未だわからない。だが、『時の魔女』の仕掛けた守護結界は確かに破られたのだ。


「『走る(リーニテ)は我が言の葉を一節(アイン)に繋げ、二節(ツヴァイ)三節(ドライ)へと紡ぐ。走る(リーニテ)は我が言の葉を《ゼクス》に繋げ、四節(フィーア)五節(フュンフ)へと紡ぐ』」


銀髪の少女は膝をついたまま、続ける。




「い、一体、何が起こっているんですか?」


その光景を眺めていた者の一人、学院の生徒がそう呟いた。

淡い光を放つ魔法陣の上で、神に祈るように膝をつき、魔法の詠唱ではない、別の何か(・・)でこのリズワディアの守護結界の魔法陣を修復して行く少女。

幻想的な姿とは裏腹に、緻密に描かれた魔法陣が、徐々に変わって行く。


彼女が、魔法陣を書き換えているのだ。


「目を離さないで。……かの『神童』が『時の魔女』の守護結界を修復するなんてこんな歴史的な事、もう二度と見れませんよ?」


リズワディア学院の生徒会長コニスはその言葉を、相手も見ずに答える。


生徒会長の彼女だけでは無い。

結界の要点修復や戦闘に駆り出された教師達以外の教師が彼女の守護結界の修復作業を食い入るように見ていた。


外ではまだ、戦いが続いている。


だが魔道の探求者たる魔術師達は、 数千年に一度有るか無いかの状況に興奮しきっている。

『時の魔女』ノルンをもってして天才と言わしめた、『神童』アリシア・ラーク・シェリオット・リーゼリオンが『時の魔女』が施した守護結界に、手を加える(・・・・・)のだから。


他者が敷いた魔法陣を修正すると言うのはとても難しい。術者の敷いた魔法陣を深く知らなければならないからだ。


術者が何を考え、何の為に敷いたのか。

その魔法陣が発動している魔法の種類、規模、その他様々。全てを把握した上で損耗箇所や不備を修正しないと、魔法が発動しなくなる(・・・・・・)


そして何より、術者は手を加えられない(・・・・・・)ように、手を加えているのだ。


(本当にいやらしい手口ですね、ノルン様。私だから良かったけど他の人が解呪をしようとしていたら、脳が焼き切れて廃人確定じゃないですか!)


アリシアは頭の中に流れてくる膨大な情報を読み取り、選別しながら思わず苦笑する。


湯水の如く溢れ、熱湯の如くアリシアを苦しめるのは、守護結界の情報だ。その情報量、質、共に最高峰。


アリシアは苦笑しながらも感嘆しため息を付いた。


「『我はここに新たな陣を敷くヒーア・ノイ・ディアグラム』」


アリシアが呟いた瞬間、足元の魔法陣が激しく光り、彼女を包んだ。



「ぬ? ……この光、もしや!」


魔法学院リズワディアの長、ルーガローンは時計塔を中心に、各方向に走る光を振り返って見て、叫んだ。


「閣下! 倒したスカルウォーリアーが灰に!」


「愚か者! わしの事は学院長と呼ばぬか!!」


教師に呼ばれ怒鳴り返すルーガローン。ルーガローンが視線を光から前に戻すと、彼の従えるゴーレムが鋼の剣で竜牙兵を両断した所だった。

両断された竜牙兵はカラカラと音を立ててバラバラになり、そして灰となった。


「おおぉっ!!」


大通りを死守していた教師と学院の上級生達が思わず叫ぶ。それもその筈。

竜牙兵達は何度倒しても立ち上がって襲い掛かって来ていたのだ。

故に後ろを見せないために迎撃に止まっていたのだ。


「ホホッ! 時は満ちた!!」


灰となり風と飛ぶ骸を越えて、鋼のゴーレムが行進を開始する。


「わしに続けぇ! 若人達よぉ!!」


「「「おおおぉぉぉっ!! 」」」


ルーガローンの号令と共に教師やリズワディアの学生達が魔法を繰り出し、つい先ほどよりも激しい戦いが繰り広げられる。


火球が飛び、剣閃が走り、不死を誇っていた竜牙兵を屠って行く。


先ほどまで追い込まれていた人類は、ここで漸く反撃を開始した。



「あ……っ」


守護結界が起動し、役目を終えたアリシアは歩こうとして一歩目で倒れかけた。

常人なら廃人となるであろう膨大な情報と、高い集中力を求められた修復作業、いくら彼女が神童などと言われていても、彼女は齢12の少女だ。

気が抜けてしまい足を支える力も抜けてしまったのだ。


「殿下!! っ!?」


その様子に駆け寄ろうとしていたコニスは叫び、そこで足を止めた。


「う……あ? …勇?」


倒れかけたアリシアは風のような速さで現れた黒い何かに抱えられ、倒れずに済んだ。


自分でも倒れてしまうと理解した瞬間の出来事で驚くも、覗き込むように自分を見る黒い瞳に見覚えがあり、彼の名を思わず呟いた。


「あぁ。お疲れ様だ、アリシア」

一週間以上も更新せずに遅れて本当に申し訳ありませんでしたあああぁぁぁぁぁっっ!!!!(土下座!)


いやぁ、難産に加えソーシャルゲームのイベントとか積みゲー消化とかIS二次書き溜めとかネタ書き溜めとかアニメ視聴とか重なりあって遅れてしまいました~。



……なんか本当にすいません(土下座!)





ようやく我らが主人公の登場です! 学院編も遂に佳境一歩手前! ……そう、まだ佳境ではないのです(笑)


次回から先代無双になる模様! 漸くチート主人公っぽくなりますよ~!(笑)



ではまた次回。感想お待ちしてま~す!






ps:


諸事情によりクルケルと、二代目ことカイト君の名前を変更します。

特にクルケル。一応パクッたわけではなかったのですが、とある犬の日々にセルクルなる種族が登場していたのを思い出したのです。


意識してやったわけではなかったのですが、個人的にやっちまった感がヤバイので変更します。


二代目は読みがとあるカードゲームのアニメに登場するキャラそのまんまなので……って理由です。


まぁ二代目はそのままでも、と思いましたが、鳥はヤバイです。




んで、名称募集します。


ズィルバの名前は変わりませんが、ズィルバの種族名ですね。鳥の名前を募集します。



可愛い名前とかカッコイイ名前とかネタな名前とか大歓迎!


名前の由来とかあるなら由来も書いてもらいたいです。



二代目? ……んー




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ