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先代勇者は隠居したい(仮題)  作者: タピオカ
リズワディア学園編
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先代勇者の熱血指導? その3

「くっ……チョコマカと!」


「これ、面白い」


ある程度襲踏をモノにしたヘンリエッタとエリが模擬戦をしている。


降り注ぐ雷雨を襲踏で回避しつつ一瞬の隙を狙うエリ。


そして雷雨を掻い潜って来たエリを襲踏で一気に肉薄し一撃を決めようとするヘンリエッタ。


うむ。使い手でこうまで使い方が変わるとは。中々面白いな。


『テレストリアスさんの襲踏が理想形かしら?』


『いや、回避と攻撃両方に活かすのが理想形だろ。エリは回避に重点を置きすぎている。

そうだな……編み出したのがシルヴィアって点からしてみれば百合ロールの方が理想形に近いと思うぞ?』


『シルヴィお姉ちゃんは良くも悪くも攻撃特化だしねぇ』


『敵の攻撃が当たるよりも(はや)く自分の攻撃を当てる………が持論だからな』


ピアスを通しての会話に、俺とアリシアが互いに苦笑する。


「どああぁ!?」


「うはははっ! キースすげぇ!」


「今うえに三メートルはとんだぞ!?」


「ビックホッパーみてえだ!」


男子連中は男子連中で楽しそうに修行中だ。

ちなみにビックホッパーと言うのはその名の通り巨大なバッタだ。

人の赤ちゃんくらいある体躯でぴょんぴょん飛びながら襲いかかってくるのは意外と精神的に来るものがある。


「っ! 頂きましたわ!」


「むだ、むだ!」


おっと、決着が着きそうだ。


刃を潰した剣の切っ先を向け突撃するヘンリエッタとそれを精霊の無数のパンチで迎い打つエリ。


「勝負、有りですわね!」


「っ!? ……私の、負け」


ヘンリエッタの突撃は(ブラフ)だった。


ヘンリエッタを向かい打つために足を止めたエリの背後に方向転換を加えながら回り込んだヘンリエッタはエリの首筋に剣をピタリと当てた。一瞬の攻防を制したのはヘンリエッタだった。

敗北を素直に受けたエリが降参のポーズを見せて、模擬戦は終わった。


さて次は……


「ふっ、……ふぅん!………ふぁ!?」


俺の頭の高さくらいまで浮かんだ箒とその箒に跨がるマナ。


バランスを保てず逆さまになる度に俺が箒を回転させることで元の位置に戻す。


「はぁ、はぁ……マナ、楽しそう」


「た、楽しくなんかないよぅっ……きゃあ!?」


ヘンリエッタと戦っていたせいか肩で息をしているエリが、くるくると回るマナを見ての言葉に、マナが否定するもバランスを崩しまた逆さまになる。


「飛ぶ魔道具と聞いて驚きましたが……そんな訓練法が必要になるとは」


バテてるエリに比べ汗を少しかいた程度で済んでるヘンリエッタ。二人とも中々良いバトルだったがやはり地力が違ったか。


「ほれ、もう一度」


「は、はひっ!」


くるっ、と箒を回すと一緒に逆さから戻るマナ。

そう、この魔法の箒はそんなに万能ではないのだ。


最大の弊害が、バランス感覚が良く無ければ重力に負け、マナのように逆さになってしまうのだ。

勿論、俺が手伝わなくても復帰の仕方は有るには有る。が、やはりバランス感覚の低そうな彼女にはこの訓練が先だ。

元の位置に戻し、手を離すとマナは全身をプルプルと震わしながら逆さまにならないよう堪える。


「ある程度まで出来るようになったら今度は飛行だ。気張れよ?」


「はいっ!」


逆さになりながらも、マナは大きな声で返事をした。





「あん? ……なにやってんだよ、アクアディーネ」


「あら、フラム。貴女こそどうしたのよ。今ごろ勇者の元へ行っていると思ったのに」


魔界と呼ばれる地の底で、二人の女が互いに意外そうに問う。


女は二人とも青白い肌をしていて、蒼と紅色の対照のような色の髪をしていた。


六刃将最強の一柱『アグニエラ』。そしてもう一柱の『アクアディーネ』。

天災に及ぶほどの圧倒的な力を持つ、魔王軍の二柱だ。


「今から殺りに行こうと思ってたところだっつーの」


「はぁ。……良いわよね貴女は。自由に行き来できて」


アクアディーネがため息を漏らしながら、あるものを見上げる。


「……もう三年か」


釣られるように見上げフラムの目に写ったのは、巨大な氷の中に封じ込められた黒い影。

……魔王だ。


三年前社勇率いる一行に敗れ、強大な封術により生きたまま捕らえられている魔王の姿が、そこにはあった。


「ええ、もう三年よ」


フラムの言葉に答えたアクアディーネは苦虫を噛み潰したように答えた。


「……ああ、そうだ。お前アイツ見なかったか?」


「アイツ? ああ、『ウムブラ』ね?」


突然、本当に突然だ。突然機嫌が悪くなったように眉をひそめたフラム。

アクアディーネは苦笑しつつ聞き直す。


「ああ。あの野郎を見なかったか? ユーヤには手を出すなって槍を刺そうと思ったんだが」


聞きながらそのウムブラの事を考えたのだろう。

みるみるうちに表情が怒りに染まって行き、イライラし始める。


「選定に向かわせたわ。やっぱり人間は人間のスペシャリストに任せるに限るわ」


「ケッ、あんな成り損ないを使うなんてテメェも堕ちたもんだな」


ここで一つ訂正をさせて貰いたい。

勇はアグニエラ、つまりフラムに対していつもキレてる、キレ易いと思っているようだが、


「……言ってくれるじゃない。大口叩いていたわりに勇者に手も足も出ずに逃げ帰って来た、ひよこさん」


実は六刃将の殆どの奴がキレ易い。


「あ゛? どうやら蒸発してぇみたいだなお前」


途端に怒りが臨界点を突破したフラムが、炎の槍斧を手に作り出す。


「全く、燃えカスさんは焼き尽くすことしか考えてないから使い辛いのよねぇ。まだ成り損ないの方が駒としては有用だわぁ」


妖艶な仕草で、フラムをバカにするアクアディーネの手には水が集い作り上げられた弓が現れる。


「上等だ、テメェ。……ここまでブチキレたのは久しぶりだぜオイ」


フラムの身体から炎が吹き出し、精霊化する。

炎を司る不死鳥(フェニックス)の化身、フラムは魔属でありながら最高位の精霊なのだ。

精霊としての力を解放し、最大の一撃を放とうとしたフラム。


その身体を、落雷が襲った。


「ぐっ…!? ……テメェ、トーニトゥルス!!」


横槍を入れられ、思わず精霊化が解除されてしまった怒り心頭のフラムは、落雷を放った張本人を凄まじい形相で睨み付ける。


「然り。我が名トーニトゥルス。……御前だ、何をしている」


濃い紫の髪をした青白い肌の男は片手に雷の槍を携え、ゆっくりとした歩調で二人の間に立ち入った。


見るとアクアディーネにも落雷が放たれたようで、雷の耐性の低いアクアディーネは地に伏せてしまっている。


「コイツを焼き付くそうとしただけだ」


「把握。……またいつもの発作のようだな」


「んぎぃっ!? て、テメェ……ブチ殺してやろうか、あ゛ぁ!?」


脳天に落雷を落とされ一瞬意識を失ったフラムが膝をつきながらトーニトゥルスと彼女に呼ばれ、そして名乗った男に食らい付く。


「了承。幾らでも相手をしてやる。……だがここは御前だ。控えろ」


右手に稲妻の槍を顕現させたトーニトゥルスは全身に雷を纏わせて二人に警告をする。


「……ケッ。てめぇは良いよなトーニトゥルス。この三年間、なんども自分専用の相手と戦って鬱憤なんかねぇんだろう?」


二つの炎の槍斧を両手で構え、殺気を垂れ流しにしながらフラムは怒りを顔に張り付かせながら言う。


「そうそう。何度も逢瀬(おうせ)を繰り返していてご機嫌なのでしょうねぇ」


背後に無数の水の槍を浮かばせながら、クスクスと笑う。が、目は笑っていない。


「承知。……相手になってやろう。……掛かってこい」


雷槍を構えて、ニヤリと口元を吊り上げたトーニトゥルス。やはり魔族の定めか、戦うなと言っていたくせに、今のトーニトゥルスは自分と同格の相手二人との戦いに心を震わせていた。


「ハッ、ユーヤの代わりと言っちゃなんだが、……纏めて相手してやるよ雑魚ども」


「さっきから殺すだの雑魚だの………程度が知れる(・・・・・・)わよ?」


……一瞬の間、そしてその次の瞬間には、炎、水、雷の属性の最高位の魔族三人が全くの同時に攻撃を仕掛けていた。





指導編は一応の終わりです。


制服にたどり着くまでに少し時間を掛けすぎた…………



そして、感想の返信が滞り大変申し訳ありませんでした!


少しずつ返信して行こうと思います!

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