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先代勇者は隠居したい(仮題)  作者: タピオカ
リズワディア学園編
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代行者と勇者特急

皆さんこんにちは。

神聖ウルキオラ教団『代行者』のベルナデットと申します。


とある任務を秘密裏に行うために派遣されたわたしは、このリズワディアの地で、一人の男性と出会いました。


お名前はユウ・ヤシロさん。最初は暗殺対象と同姓同名、更に同じ外見特徴を持つと言うだけでコロ☆っとしてしまいそうになりましたが、咄嗟に別人だと感じ取ったわたしは魔銃の銃口を上に逸らし、間一髪の所でバキューンと撃ち抜かずに済みました。


彼はわたしがドキューンと撃ち抜きかけたと言うのに黙ってわたしにご飯をくださりました。

そう、彼はとても優しくて心の広い男性なのです。

少し……いえ、とてつもなくエッチなのが傷ですがね。

しかしこの出会いは神の思し召しと言えるでしょう。良き出会いに感謝。





と思っていました。


そんなヤシロさんに今、殺されかけました。



「うええええぇぇ」


四つん這いになり、私は朝食で食べた大量の食材を大地に還元している最中でした。


もう二度と、人の肩になど乗るものですか!


「俺が悪いみたいな言い方すんなよな。お前が付いてくるってうるさいから連れて来たんじゃないか」


「乙女に吐瀉物を撒き散らせるとは思いもしないじゃないですか!」


ヤシロさんの呆れたような表情にカチンと来たわたしは、足をふらつかせながら立ち上がりました。


「まだ殴打された方が耐えられますよっ! それに、なんなのですかあの機動は!」


ヤシロさんに肩車をしてもらい楽しんでいると、突然の急加速がわたしを襲い、上下左右、回転など様々な動きをこの身で受けさせられ数時間が経ち……いえ、驚きました。陽の角度を見るとまだ数十分しか経っていませんよ。


「おや?」


陽の角度を見ようと顔を上に上げていたわたしの視界に大きな影が入り込みました。

なんだろうとそれをじっと見ていると、とてつもなく巨大な大樹だと、わたしは理解しました。


「……まさか、霊樹『エーアスト』?……、つまりここは、『アルティエラ』、なのですか?」



大陸西南部には雲にまで届くとされる巨大な樹が存在する。


天気が良ければ、大陸中から見る事が可能とすら言われているその大樹は、霊樹『エーアスト』と呼ばれている。

エーアストとは古代イシュレールで原初、起源、最初、と言う意味を持つ言葉で、神話において世界で初めて誕生した『生命』とされている。


その霊樹を中心として広がる、広大な樹海『アクトヴァルト』。


そして霊樹の根本で『アクトヴァルト』に囲まれるようにして存在するエルフを始めに様々な亜人種達の集落。


亜人達の王国『アルティエラ』。どこかの言語で『心の国』、と言うらしいです。


わたし達がいるのは、霊樹の根本、亜人種達の集落でした。集落と言えど、その広さから一つの街ほどの広さを誇っています。辺りにはエルフを始めケンタウロス、ハーピィなど比較的ポピュラーと言える亜人種の方々が行き交い、賑やかです。どうやらわたし達が居るのは大通りみたいなもののようです。


我々の住むようなレンガ作りの建物ではなく、木や藁を使った比較的簡易な建物ばかり。

霊樹周辺は地震も無く、台風も来ないのでこのような建物なのでしょうか?



「ベルナデット。お前……亜人は、嫌いか?」


どこか冷めたようで、どこか辛そうな表情のヤシロさん。

……なるほど、ヤシロさんは親亜人種の方なのですね。


「いいえ。亜人種絶つべしはタカ派のでっち上げです。

もともと聖書には区別はすれども、亜人種が悪しき存在とは、一文たりとて書かれていないのです。

そもそも区別という言い方がもう差別だとわたしは思うのです。人が優れていると言うのも、もともと世界の均衡を保つ作業を我々の先祖の人間が行っていただけですし。

だと言うのに最近の信徒の方々は亜人種の方々を自分達より下の存在と軽視する人が多くいます。

均衡を保っていた我々が、均衡を崩し頂点にあろうとするなんて皮肉としか思えませんね。そうそう、これも最近の事なのですが―――」


「あーっ、もう良いもう良いっ。ベルナデットが亜人が大丈夫だって事がわかったからもう良いよ、ありがとな」


なっ、なんて失礼な! わたしが折角教団の裏事情を交えながらお答えしたと言うのに軽くあしらうようにっ……。


「むー。……所でヤシロさんは何故アルティエラへ? ………と言うよりも待ってください。ここアルティエラはリズワディアから馬車で一週間は掛かりますよね? わたし達お昼前に出発した筈なのにまだお昼前ですよね?」


地図で中心に近いリズワディアから西南部のこの場所へは一週間程度で着く。


それはこの霊樹からなる大森林からリズワディアには、平原が続き道を塞ぐものがないからなのです。


魔物は出ないし盗賊は一々そんな場所に来ない。隠れられず奇襲ができないからだ。

故にある程度のスピードを出せば一週間程度でリズワディアからは到着する。


……だと言うのに、先程リズワディアから出発して陽が傾いてすらいない。



「……く、高速移動(クイックムーブ)の魔法は極める事によって転移に近いほどの高速移動が可能となるんだ。欠陥として肩に乗せると吐くくらい気持ち悪くなるらしいのだ!」


「な、なんですってー!?」


凄いです! 風の初級魔法と言われる高速移動を極めると転移と並ぶ程の移動力を持つことになるだなんて!  と言うか知っているなら先に教えてくださいよ!


「ま、まあそれは置いておいてだ。前に来たときから引っ越ししてなけりゃ、ここに知り合いが居るんだ」


「知り合い……女性ですか?」


「ん? ……そうだけど、なんだ?」


ふーん。……またエロな話ですかそーですか。

身近にわたしと言う魅力的な女性がありながらこんな遠い場所の女性に会いにくるなんて、それはもう失礼だと思うのですがどうでしょうか色男さん?


「また変な誤解をしてんだろうが、多分お前が考えているようなのじゃねぇぞ。……強いて言うなら、『同志』だ」


その猛禽類のような笑みに、わたしの視線も鷲掴みされてしまいました。


…………こうして真面目にしてればなかなか格好いいのに、なんでいつもあんな残念オーラ全快なのでしょうか?


「ほら、来いよ」


「ぅっ………」


手を引かれ人混みを突っ切ります。痛くもなく、なのに力強く………なんと言うか、本当にヤシロさんはいろいろ残念な男性です。


なんかもう短くて申し訳ないです。

明日休みなので連日投稿出来ればいいなー。




次の話もベルナデット視点で行くかもです。

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