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先代勇者は隠居したい(仮題)  作者: タピオカ
リズワディア学園編
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先代勇者と一昨日話その2


「は、破廉恥?」


何を勘違いしたのか知らんが、破廉恥呼ばわりされるなんて心外だ。

俺は美人のお姉さんにしか破廉恥な事はしない!!


『マナのおっぱいを見て拝み倒したって聞いたけど?』


「そ、それは別腹……って!?」


脳に直接話しかけられ振り向くと、アリシアは自分の右耳に着けたピアスに軽く触れる。


『通信石よ。……それより私の話に合わせてね?』


アリシアが確認するように聞いて来たので、とりあえず首肯で答えた。……さて。



「せ、生徒に自分と同じピアスをつけさせる事で『自分のモノ』であると……周囲の人たちに知らしめているのですわね!? 

――――嫌がるアリシアさんに「貴女は私のモノよ」と隷属の証を刻み込み………うへへ…なんて羨まっ、けしからっ――……は、破廉恥ですわ!」


この金髪ロールちゃんの脳内構造はいろいろと可笑しくないか?

たかだかピアスでここまで考えるなんて……まるで変態じゃないか。


つーかこいつ、一瞬自分に置き換えやがったよな?


『……おい、まさかこいつ、『ソッチ』系の人か!?』


『……そう、なの』


身を切るようなアリシアの声がリアルさを物語る。そう、彼女は少なくともアリシアの事を好いている。……友達としてでは、なく。


「こうなればっ、……ヤシロ先生、私とアリシアさんを賭けて勝負ですわ!」


手につけていたロンググローブを投げつけて来た百合ロール。

この野郎、周囲に登校中の学生が居るのを理解してんのか?


「愛のために戦うヘンリエッタ様……っ、なんて美しい生き様!」


「ヘンリエッタって、二科のヘンリエッタ・デ・クレストリアさん? あっちの金髪の? あんな美人だったのか…」


「男子! ヘンリエッタ様を見て鼻の下伸ばしてんじゃないわよ! これだから男子は!」


「なんだと!?」


「何よ!?」



……なんだか男子と女子の、性別紛争に火をつけちゃったらしいな。

いやー、中学生くらいの年頃の男女は互いを意識するあまりよく喧嘩になると聞くが……それは異世界でも変わらないようだ。

ん? 俺の中学時代はって? …………女子の敵意を一身に受けて他の男子へ向かわせないようにしてた俺マジイケメン。



パンパンッ!


突然鳴った手を叩いた音に、男女の学生達が一斉に一方を見る。


「おやめなさい。……このような往来で争い事など、醜いだけですよ?」


百合ロールだ。百合ロールが手を強く叩いて、男女の意識を向けさせたのだ。

男女のいさかいを止めると言う、学生の模範と呼べるとても良い行いなのだが天下の往来で決闘を申し込んだお前にだけは言われたくねぇ。


「も、申し訳ありませんヘンリエッタ様……」


「す、すみません」


「ふふ、謝る相手が違うのではなくて?」


男女の生徒達が百合ロールに謝るが、百合ロールはそれを微笑みで返す。


「……わ、悪かったわね…」


「べ、別に……気にしてねーし」


すると、互いに照れながらも和解し、なんか雰囲気の良いまま学院へ向かって歩き始めた。

……その光景を眺めてると蜘蛛とかゴキとか投げつけて雰囲気をぶち壊したくなる衝動を覚えるも、俺は良き大人として子供の恋愛は応援する方だ。ここは耐える。


あと数年歳が上だったら良かったのに。


「って、そんな事に気を回している余裕などありませんでしたわ! それで? ヤシロ先生、答えを聞かせていただけますの?」


「やだ」


「速答!? 速答ですの!? ――ああ、そう言う事ですのね。……ふ、ふふ。怖いのですわね? 私に敗れ、アリシアさんを寝取られるのが!」


ドヤ顔で俺を指差す百合ロール。

……なんと言うか、いろいろと残念な子だなー。


「その事なのですが……このピアスは私から差し上げたのです」


「――え?」


アリシアの言葉を受け、百合ロールの動きが面白いようにぴたっ、と止まる。

まるで時を停めたかのように。


「歓迎の印に、私からヤシロ先生へプレゼントをしたのですわ。……だから、クレストリア様の仰っているような…――」


「……ゆ、ユウ・ヤシロ!!」


アリシアの言葉を遮り、百合ロールが俺を涙目で睨み、グローブを外し俺に投げつける。


「覚えていらっしゃい!」


俺が断る暇もなく、百合ロールは駆けるように学院へ向かって行った。




「えー、そもそも魔術言語とは」


その後、職員室に向かい灰色のローブを受け取った俺は生徒達の稚拙な罠を踏破し、授業を行っていた。


渾身の罠を人外じみた動きで回避した俺に殺意にも似た闘志をぶつけてくる生徒達。……お前らその熱意をどっか別の方向へ向けられないのか?


痛いくらいの闘志を受けながら、俺は授業を続けている。


「古代セルメキア語を起源とする。古代セルメキア語とは何か、答えれる人はいるかな?」


おーおー、クラスの半分の生徒が手を上げた。その中で、無言ではあるが、「はーい! オレ、オレ知ってまーす」と言わんばかりのテンションで手を上げてる少年に目がつく。

えーと、あの席の男子は?

俺はドートランジェ先生から借りた生徒名簿に目を移し確認する。


「元気があってよろし。キース君、どうぞ」


「はーい先生! 先生は恋人っていぶはぁっ!?」


元気良く立ち上がったキース君を消ゴム要らずで着席させる。


……次の子は……なんか嫌な予感がすんなー。とりあえずもう一回男子を選んでおくか。


「んじゃマックス君。答えを――」


「先生って結婚しうげっ!?」


そう言えば自己紹介の時の質問責めってされてなかったっけ………。

生徒達の目が爛々と輝いているのはそのせいもあったのか。


「…………」


クスクスと笑っているアリシアが目に入る。

野郎、質問責めを提案したのは貴様だな?


「あー……じゃあヘンリエッタ・デ・クレストリア君」


質問責めしてきそうな連中を避けると、百合ロールに行き着いた。

姿勢を正し手をピン、と伸ばしてる所が好感触。


「はい。セルメキア語とは、数千年以上も前に存在した最古の言語とされています」


スラスラと答える。……ふむ、これくらいは楽か。


「続いてその特徴を知っていたら答えてくれるか?」


「はい。……セルメキア語はイシュレール語らに比べ、文が長い事で有名です。例えば果物のリンゴを差す言葉は『シュレンルーレ』。これは、『とても赤き丸い果実』と言う意味になります。これだけでも『リンゴ』と三文字で表せられるイシュレール語に対し七文字も必要となります。単語の一つ一つが長いため、手話との併用や文字が発展して行きました」


「正解。流石は騎士の国クレストリアの『姫騎士』だ」


流石アリシア曰く優等生。模範解答、その一言に尽きるぜ。


「……先生、一つ質問をよろしいかしら?」


「ん? ……ああ、なんだ?」


何かわからないことがあったのか? 今の答えは見事だったのだが。……ああ、アレか? セルメキア語の魔法に、現代のイシュレール語が使われているって言うアレ。

ふふふ。俺も聞いた時は驚いたもんだ。だが蓋を開けてみれば納得だ。実はアレ、セルメキア語が古すぎるせいで―――、


「ヤシロ先生とアリシアさんとの、ご関係をお聞かせくださいまし!」


「……っ!?」


こ、こいつっ……良い答えをしてくれたと思ったら……答えたんだからそっちも答えろ、的な事を考えてやがったのか!

しかもアリシアとの関係とか、大声で叫びやがって!


「アリシア様とのご関係?」


「どういうことだ?」


「おい、ヤシロ先生の耳に、アリシアさんと同じピアスが!」


「え!? し、しかもそれぞれ反対の場所に…!」


「まさかヤシロ先生はアリシアさんの婚約者!?」


「きゃーっ!! 学院でお揃いのピアスだなんて破廉恥ですわー!」



くそっ、思った通り騒ぎ始めやがった!

つか最後の! 破廉恥とか言いながら喜んでんな!


「ヤシロ先生! 答えて頂けますか!?」


ビシッ! と指を俺に向け叫ぶ百合ロール。……こんにゃろ、調子に乗りやがって!!


ガタッ。


俺が百合ロールへのお仕置きを考えていると、椅子を引く音が教室に響いた。


「アリ……シア?」


席から立ち上がり、優雅な所作で教卓に……いや、俺に向かってくるアリシア。


「……私達、来年の春に婚約しますの」


そして俺の腕に自分の腕を絡めてカミングアウト。

……おい、この野郎。それは真面目にやっちゃいけない感じの――


「「「「きゃああぁーっっ!! 」」」」


まるで爆発でも起きたんじゃないかと思わせる歓声が沸き起こる。……主に女子からだ。


「アリシア、お前……やりやがったな」


「んふふ! これで学院の中で抱きついても変な噂は流れないでしょ?」


俺がアリシアの言葉に呆れていると、顔にグローブが飛んで来た。今日だけで三回も投げられるとは。


「ユウ・ヤシロ!! 決闘を申し込みますわ!!」


涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で叫ぶ百合ロール。その剣幕に負けて、俺はうなずいてしまった。




そして二日後、今俺が居る。

二日掛けて学院中に広まった噂のせいで学院生徒会が動きこんな見世物みたいな事になってしまった。


「ちくしょう……アリシアのせいで」


そもそも今日の休校日には件の制服らの発注を知り合いのアラクネーに頼もうとしていたのだだが………。

今日の決闘騒ぎで俺の計画もパーだよちくしょう。


「用意はよろしくて?」


目の間で、灰色のローブを纏った百合ロールが細剣を振り上げる。


「何時でもどーぞ」


彼女の言葉に、俺は剣を抜いて応えた。

四日もお待たせして申し訳ありませんでした。


次回漸く決闘です。

見所は手加減をした状態での先代の戦い! ……いまいち盛り上がりませんね。



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