女の敵と口説き方
「あれだけ興味が無いと言っておきながら手を出そうとするだなんて、ヤシロさんは本当に変態ですね!」
「いやぁ、それほどでも」
「褒めてないですよ!?」
俺は今、床に正座しながらベルナデットに説教をされていた。
おっぱい揉みしだき未遂事件。
寝ているベルナデットのおっぱいに触れようとした俺は、実は起きていたベルナデットに宿の一室と共に吹き飛ばされ、おっさんに修理費を渡すことを約束した後、ベルナデットが始めた説教を受けさせられてしまっているのだ。
これがまた、話がコロコロ変わるもんで聞くに耐えなかった。
だが、それもようやくおわったみたいだ。プンスカ、と言う擬音が似合う状態のベルナデットは腰に手を当てながら深いため息をついた。
「全くっ………も、もう少し雰囲気を大事にしてくれたなら、……す、少しくらいならって思えてたのに…」
おや? ………もしや、これは脈ありだったのかい?
ゴニョゴニョしてて聞き取り辛かったが、俺は確かに聞いた。少しくらいなら、って。
「雰囲気を大事にするので揉ませてください」
「もうぶち壊してるじゃないですか!」
ふ、雰囲気か、……難しいぞ。
「そ、それにっ、なんで聞こえてるんですか! わ、私は小声で言って……」
「俺をそこらの鈍感系イケメン主人公と同じ扱いしてもらっちゃあ困るぜ。俺はハイエナのように貪欲なのさ」
聖剣の担い手になって身体が化け物みたいに強化され、聴力も高くなったのだ。とは言えない。
「けだものなんですね。理解しました」
「理性ある動物をけだもの呼ばわ――」
「先程の行動が理性ある行動と言えますか?」
「言えません」
ちくせう、ベルナデットに口論で負けちゃった。
――称号『女の敵』を取得しました――
――称号が『先代勇者』から『女の敵』に変更されました――
「それで女の敵さん、随分遅いお帰りですね。何をしてらしたんですか? 女性でもナンパしていたのですか?」
ん?……随分と刺のある言われようだな。
機嫌を悪くさせちまったみたいだ。これは変にはぐらかすよりも本当の事を言った方が良いな。
「いや、学院長室に襲撃仕掛けて来た」
「ほっ、本当に何をしていらっしゃるんですか!?」
あ、なんか俺、割りと真面目に怒られてるぞ?
「じ、冗談だよ冗談。リズワディアの制服についてちょっと話して来ただけ」
「制服?」
首を傾げたベルナデット。
学院長室で話した事と、俺が制服を推奨する理由を並べるとベルナデットは大きくため息をついた。
「よくもまあそこまで建前を並べられるものだと感心してしまいましたよ」
「嘘をつけ、今お前完全に呆れてたろ」
なんと言うか、ベルナデットには『ダメだこいつ』的な視線を向けられたくなかった。
このダメシスターめ!
「ですがまあ、貴方の本音を置いておいても、私でしたら制服案には賛成ですね。この街は皆が皆同じ灰色のローブを纏っているせいで邪神を奉る邪教徒の集まりでないかと思ってしまったくらいですよ」
賛成理由がデンジャラス!
「いやいや、もっとこう……可愛い服を着てみたいとかないわけ?」
せめて灰色のローブなんてかわいくない! とか言う理由で賛成を貰いたかった。
「? 可愛い服………つまり私が今着ている法衣のような? ……それは素晴らしい。是非ウルキオラ教の法衣を学院の制服にしていただきましょう!」
美的感覚がデンジャラス!
「落ち着けバカ野郎。それは宗教うんぬんとか部族がなんたらとか、面倒な話に絶対なるから却下だ。そしてどこが可愛いのかさっぱりわからん」
「なっ!? か、可愛く、ないのですか!?」
衝撃の真実を聞いたかのように驚くベルナデット。
流石に法衣を可愛いとか、ない。
「まあ取り合えず、そんな事話してたら遅くなったんだ。ごめんなベルナデット」
俺が軽く頭を下げると、ベルナデットは途端にバツが悪そうな顔をして、佇まいを直した。
「………こ、こちらこそ申し訳ありません。勝手に機嫌を悪くし、半ば八つ当たりのように貴方を貶めるような言葉を……」
ベルナデットが謝りながら目に見える程落ち込んで行く。
「思えば神敵と誤解したり、ご飯をご馳走になったり、……ヤシロさんのご厚意をお受けしながら、わたしは貴方に何も返せていない。……今にして思えば、わたしの胸程度で満足して頂けるのなら、触って貰った方がご厚意に対するお返しなるのではないかと思う訳で………」
ベルナデットは言いながらどんどんと俯き、彼女から陰鬱なオーラが漂い始める。
うわぁ、テンション高い時と低い時の落差が酷いタイプだったのか。……最初に思った事だったが、本当に面倒だ。
……だが、
「なら、今度試作品の制服を着て見せてくれよ」
「え?」
最初に思ったような、関わりたくないような感覚は、もう俺の中にはなかった。
「ベルナデットは見た目のレベルがもの凄い高いからな。神敵とか飯とかのもろもろは、モデル代でって言うことでチャラにしてくれると助かる」
「あっ………」
この世界では珍しい黒の髪を軽く撫でる。
落ち込んだ子供なんかは、優しく優しく撫でてやるだけでイチコロだ。
一気に元気になる。
「ふふっ。……わたし、ヤシロさんが先代の勇者でなくて、心からよかったと思いました」
子供のようにニコリと微笑んだ彼女を見て、俺の細やかながら有った罪悪感が大きく疼いた。
弱った所に優しい言葉を掛けてコロリ。
これが先代流口説き術。
皆様、アンケートの方ありがとうございました。
感想の常連の方々(十数人)を想定していたのですが、予想を大きく上回る百人以上の方々から意見を頂き、私、感激です。
が、その弊害と言ってはなんですが、……皆様への返信は今回は出来ませんでした。
申し訳ありません。 数が多すぎました………。
しかし、アンケートと一緒に書いてくれた方々の感想も全て読ませて頂きました。皆さんの情熱を感じましたよ(笑)
さて、アンケートですが、4/7付けの方のみ受け付ける事にしました。前話で記入し忘れてしまい申し訳ありません。
アンケート結果については集計し、後に気を見て発表させて貰います。お楽しみに(笑)
また、各種オプションについては私が気に入ったものとなる予定です(多くの方がスカートやリボンなどの細かな設定まで書いてくれたので妄想が止まりません)。
制服に関してのアンケートについては終わりですが、「こんな服とかどうよ?」とかアイデアの提供は常時お待ちしています(笑)
それでは、感想お待ちしてまーす。




