先代勇者は女の敵？
「せ、制服？ ……ローブではなくてかのぉ？」
「んなわけあるかああぁ！ 学校の制服はなぁっ、そんな千編一律なもんじゃないんだよぉっ！」
膝をつき嗚咽をし始めた勇を見て、学院長とゼルガは彼が何故窓ガラスをぶち破って侵入して来たのかを理解した。
なんとなく、だが。
「我が学院のローブには、同じ組織内……つまりリズワディアの仲間だと言う事実を強く意識させ、連帯感を生み出すためのものです。それに、学院支給のローブには魔術耐性にも優れ――」
「障壁貫通系の魔法には紙も同じじゃないですかー！」
ボロボロになったローブに勇は何故か心踊る物を感じたが 、今はそんな事に意識を向けていて良い時じゃない。
「それに、連帯感と言いましたが、俺はそれが間違いだと思ってます」
「なんですって？」
ゼルガのつり目が更に細くなり、勇を睨む。 その視線を受けてなお、勇の口は止まらない。
「ローブは服の上から着ています。……ではそのローブの下の服は？」
「！」
勇はゼルガが見せた僅かな表情の動きに、当たりだと確信を持った。
「ローブの下の服は、貴族と平民で随分な差が生まれる筈です。その差は、大きな波紋を生んでいる筈です」
貴族は体面やお洒落に気を使い豪華な、華やかな服を着る。
平民はそんな事に気を回している金銭的余裕もなく、質素な服となる。
貴族平民に関係なく入学できて平等を謳うリズワディアだが、生徒達はやはり、自分より劣る生まれの者を見下し、見下されている。大きな問題にこそなっていないものの、確かにそれは問題にはなっていた。
「……だがローブを捨て、制服にすれば、生まれの差による差別問題を、大きく解消する事ができる！」
拳を振り上げながら立ち上がった勇の瞳は、希望とエロスで輝いていた。
「ふむ……」
勇の言葉に一理ありと学院長は頷く。そして彼の瞳に宿る本質を見抜いたルーガローンは口元をつり上げた。
「本音はなんじゃ？」
「女の子が可愛い服着てるのが見たい」
先程の真面目な会話が吹き飛ぶ本音だったが、ルーガローンはその言葉を得て、笑った。
「ホホッ！ よかろう、ヤシロ君。君の言う制服制度、検討してみよう」
「が、学院長！？」
ゼルガがルーガローンの決定に驚く。まさか、長きに渡って続いて来た伝統を壊してしまう案が良しとされてしまうとは、リズワディア学院の教師の中でも、特別厳しいゼルガにとっては、青天の霹靂と言って良いほど驚きを覚えた。
ゼルガはルーガローンに迫る。
「お考え直しください学院長！ 我がリズワディアは約千年以上も続く魔法学院！ その当初から決められていた伝統ある学院のローブを廃止すると！？」
「伝統。……ふむ、聞こえは良い。だがわしはそれを悪しき習慣じゃと思っておる」
「な！？」
伝統を悪と言われ、ゼルガが絶句した。
「彼が言った事は確かに問題となりつつある事じゃった。それを多少なりと解消できるのならば、やってみる価値はあるじゃろ？」
「しっ、しかしっ…！ 彼はその制服を着た少女を見たいと言う邪な―――」
「わしもかわゆい女学生みたいし」
「……」
ゼルガは目の前が真っ白になった。
◇
「で、具体的にどのような制服にするのじゃ？ 流石におっぱい丸見えとか、聖職者として許容できぬぞ？」
「どこの風俗だ」
発想が明らかにエロ爺だ。
しかし、学院長の言う通り教育機関である学院に相応しくない物は許容できんだろう。
だが、この世界においてはエロ装備は一般的だ。
えっちな目的ではないと理解されてるからだ。
オーダーは学院らしいもので、尚且つエロと思わせない程度の微エロな制服。
まあここら辺はなんとかなるだろ。プロにお任せだ。
「アラクネの知り合いがいるんで、その人に相談しながら用意します。……一週間もあれば数人分の物を用意できるかと」
「なんと！ アラクネに個人でツテを持っておるのか！？ そ、それではスケスケにできるかのぉ！？」
アラクネはかつて奴隷階級だった時の屈辱から、人間を酷く嫌う人が多いらしい。
知り合いのアラクネから聞いた。
所で聖職者がスケスケとか言うな。
「できなくはないけど教育機関としてはアウトでは？」
「そ、そうか………残念じゃのぉ」
俺が言うのはなんだけど残念なのはアンタの方だ。
「して、問題は金額じゃ。現在のローブは入学時に支給されるもの。新しい制服も全校生徒に支給し着用させるが、君が言うにはは現在のローブよりも高い性能を持たせるのじゃろ？ 当然、その分制服の値段高くなる。……その資金はどこから出る？」
そう。現実的な、目の前に立ちはだかる障害の一つは資金だ。
最初の数人分の制服はもちろん俺だが、導入するなると、もちろん支給する学院側が負担となる。
明らかに手を抜いたと思われるローブよりも質が良い物を全校生徒に……そりゃ金が掛かる。
「学院から完全負担………とはいきませんかね？」
「物によるのぉ」
なるほど、やるにしても現物を見せてから…って事か。めちゃくちゃ高ければ流石に無理だし……。
「それじゃあ一週間後に学院でのお披露目と行きましょうか」
「ホホッ、期待しておるぞい」
カイゼル髭を触りながら頷く学院長。
その学院長に軽く会釈し、入って来た窓から俺は飛び降りた。
くぅー！楽しくなって来たぜぇー！
◇
「……すぅ………すぅ」
「…………」
空が茜色に染まる頃、子猫の撫で声亭についた俺は、とある一室のベッドで穏やかな寝息をたてるベルナデットを見下ろしていた。
「……すぅ………すぅ」
一定の感覚で息をするベルナデット。
彼女が息を吸う度に、胸が動き、ぷるんと震える。
ぷるんと。ぷるんと震えたのだ。
「た、たまらんっ」
無防備に眠りこけているは普段のウザッたさが無く、その容姿の美しさが際立っていた。
黙ってれば美人なのに……って言葉が漸く理解出来た。
なんと言うか、喋ってるベルナデットはあまり異性として思えないが、今寝ている彼女を見て、俺は全力で彼女を異性として見ていた。
綺麗と可愛いの境界に居るベルナデット。そんな美女が目の前で眠って居る。
…………だ、ダメだダメだ！ こいつはあのベルナデットだ。いくら巨乳だろうと、こいつは俺を殺そうとしてる腹ペコ暗殺者なんだ！
俺の中の狼がアップし始めたのを感じ、これはイカンとベルナデットを起こす事にする。
ベルナデットさえ起きれば可愛いけどウザいと感じるようになる。
そう思いベルナデットの肩を揺らす。
「おーい、ベルナデット。まだ気分わる………っ！？」
そして俺は後悔した。
肩を揺らす。……つまり肩を揺らす事により、彼女の全身も揺らす事になる。
それは、今だけは絶対にやってはいけなかったのだ。
ぶるんぶるん！
「！！！？？？」
横たわる彼女の、法衣を突き上げるロケットおっぱいが、ゆっさゆっさと震えたのだ。
「据え膳、食わぬは男の恥……っ！」
ダメだ。もしここでえっちな事をすれば、それは必ずバレてしまうフラグが立つ！
今ここで揉んでしまえば、人間としてではなく、変態として生き続けなければイケなくなるんだぞ！？ それでも、お前は良いのか！！
ベルナデットの胸を揉もうとして振り上げた俺の手の平は、揺れる心のように震えて、動かない。
揉みたい、だけど変態扱いされるのは嫌だ。
俺は女の子にモテたい。ちやほやされたい。ちょっとだけえっちな事をしても、いやーんえっちーで済まされるようなハーレムを作りたい。
決して、女の子に変態扱いされたいわけじゃない。
思い出すんだ。変態扱いされていた、あの時を―――。
三年前、シルヴィア達と旅をした時にも、ラッキースケベな展開はあった。だがその度にシルヴィアからゴミを見るかのような視線を向けられながら俺は折檻されていた。
少し気持ち良かったのを覚えている。
―――気持ち、良かった？
「――そうか、……俺は既に変態だったんだ」
モテないせいで女の子の折檻を食らうだけで役得と喜んでいた、あの時を思い出せ。
俺は、あの時から変態だったんだ。
勇者なんかにされ世界を救ったせいで忘れていたあの頃の情熱が、甦りつつあるのを、俺は感じた。
「もう、俺は迷わない。俺の本質は変態だ。なら、俺は変態のままで良いんだ」
手の震えは、なくなっていた。
「うおおおおおおぉぉ！！」
咆哮と共にベルナデットの胸に向け振り降ろした手は、パシッ、とベルナデットの手に弾かれ空に舞った。
「あれ？」
あまりにも胸に意識を向け過ぎていたので気付かなかったらしく、ゆっくりと顔を上げると、目に涙を溜め顔を真っ赤にしたベルナデットが俺を睨んでいた。
「……あ、貴方が神敵では無いことが、良くわかりました」
身体をわなわなと震わせながらゆっくりとベッドの上で起き上がったベルナデット。
「そ、そうか？ そりゃよか――」
ベルナデットはスカートから目にも止まらぬ(俺は見えた)早さで銃を抜いた。
その照準は寸分の狂い無く俺に向けられる。
「貴方は女の敵です！」
ベルナデットの叫び声と共に、俺と子猫亭の一室が吹き飛んだ。
今回は自分でも微妙と思ったので後に改稿するかもです。
また、リズワディア学院の制服ですが、アンケートを取りたいと思います。
【通常授業、生活時】
・ブレザー
・セーラー服
【運動着】
・ブルマ
・短パン
【その他】
・スク水
・競泳水着
この六つが私の中であります。
【】の項目内で、自分の好きな制服をどれか一つ選んでください。
また、各種オプション設定も受け付けています。 スカートの柄からニーソなど、様々な意見を頂きたく思います。
この中に無いものも受け付けています。
皆さんの一票がリズワディアの制服を変える！？ (笑)
あ、アンケートは感想欄にてお願いします。
では、感想お待ちしてまーす。
