違和感
おかしい。
絶えずそうは感じていた。しかし、それはどんどんと確信に変わって行った。
(なんなんだ、これは)
勇は胸中から染み渡るように出てきた違和感に、思考が犯されていた。
(なんで)
聖剣とは言っていたが己の持つ聖剣とは別物……そう思えたのは最初だけだった。
姿はまるで違った。その秘めた力も、本物には遠くおよばない。だのに不気味にも湧き上がる親近感。
あの偽の聖剣へ感じた嫌悪感が、全くない。それどころか、どこか安心を覚える
(こんなやすらぎを感じるんだ?)
まるで――オリヴィアと共にあった時のように。
◇
「あわわわわ!!や、ヤシロさん本気出し過ぎじゃないですか!?」
絶えず足元は揺らぎ、斬撃や炎が飛び交う。闘技場は今、もっとも危険な戦場と化していた。
ベルナデット達も例外ではない。勇とアグニエラが生み出す戦いの余波によって危険に晒されていた。
「たぶん、アニキは今オレ達を思って戦えるほど余裕が無いんだ……!」
普段の勇を思えば、アグニエラと戦う勇は周囲を気にせず滅茶苦茶に戦っているように見える。転じてそれは、意識をアグニエラにしか向けていられない事。
聖剣の担い手として、勇者として魔王と戦った勇が、である。
「それくらいにヤバイ相手……って事か」
「……ううん。それだけじゃあ、無い。勇の――」
「ヤシロの動きが精彩を欠いていやがる」
リリルリーの言葉をイーブサルが繋ぐ。言葉尻を取られたリリルリーが驚きながら訊ねた。
「……見えるの?」
「感覚でわかんだよ。ヤシロめ、何を焦ってやがる?」
「ヤシロさんが焦ってる?」
「ああ、理由はわからんがな。あいつの戦い方は一見滅茶苦茶に見えるが基本的な動作しかしねぇ。お行儀が良いと言うより、型を繰り返す方法でしか戦えない、典型的な才無しの戦い方だ。が、それを圧倒的な身体能力が補ってるわけだが……今は本当の意味で滅茶苦茶だ。ああ言うのは焦った連中が良くやるヘマだが……――」
「あんの下郎めぇ……何を素材にしおった……!!」
突然、イーブサルの足元の影から、トーレを抱えたパイモンが現れ怒りも露に怒鳴り散らした。
「パイモンさん?」
「何をそんなに怒っておるかって?怒らいでか!あの糞雑魚リッチめ、あ奴じゃろあの聖剣を生み出したのわ!あの聖剣はモノホンじゃ!能力こそ主の聖剣に至っておらぬが、間違いなくあの気配は聖剣じゃ!最初の贋作とはわけが違うわ!!」
「なっ!?」
その場に居合わせた全員がパイモンの言葉に絶句する。
「そ、そんな……勘違い、とかでは無いんですか?だって、聖剣なんですよね?」
「聖剣と言う言葉のせいで神聖さがあるように感じるがアレはそもそも混沌の闇、おぬしらの言うとこの『魔王』を征伐するために星が生み出した遺物じゃ。この世界の運行上必須故に生み出されただけでそれ自体に聖邪の差は無い。魔族であろうが人間であろうが担い手でないものが触れれば弾かれるわい。……本来聖剣は唯一無二。担い手と聖女、一対の組み合わせ……だのにああして顕現してるとあらば、理由は一つ……」
◇
「はぁっ、はぁ……っぅ、ぐ……」
アグニエラと打合う度に湧き上がる安心感と言う名の違和感。
相反する筈の感覚に頭は混乱し、吐き気が止まらない。嫌な汗が吹き出る。
「何だよ、これは……一体、何なんだよ、その聖剣は……」
思わず呟いた言葉に、アグニエラは酷く顔を歪ませ舌打ちをついた。
「あーあ、やっぱ野郎の言うとおりかよ」
担いでいた斧槍をだらんと下げ、深く長いため息をついたアグニエラは、手元から聖剣を消した。
「あ?……何の、つもりだ?」
「それはこっちの台詞だぜ、勇?こっちは本気で行ってんのによぉ?てめぇは違う事ばっか考えやがる!……アクアディーネの野郎の言うとおり、聖剣にばっか気を取られてやがって……まぁ仕方ねぇか」
頭を掻き、呆れた口調で、ため息を漏らしながら、
「そりゃあの聖女の半身が元になった聖剣だもんな。そりゃあ気を取られるわな」
突然、何でもない事のように、アグニエラはそう言い放った。
「は?」
意味が、意味ガ分カラない。聖女の半身?聖女ってなんだ?半身ってどういう意味だ?
思考能力が働かない。まるで脳が意味を理解したくないかのように。
「な、にを言ってやがんだ、アグニエラ。意味が、わからねぇぞ」
「あ?だぁーかーらー、こっちの聖剣は、剣を聖女の身体を半分にぶった斬ったもんを元に作ったって言ってんだよ。あ、魂はオレんだぜ?」
「…………ぅ」
「あん?」
「ぉっ――」
堰をきったように、勇は吐き出していた。
短い……でもくぎりが悪くて……そして予約投稿忘れて(やったつもりで)こんな時間に投稿です。(18時と予告しておいて)
短いし少し読み難かったり唐突だったりするので後々修正するかもです




