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先代勇者は隠居したい(仮題)  作者: タピオカ
自由都市ガラリエ編
172/192

先代勇者と王者の決着

「っ!?」

驚愕し目を見開いたのは、勇の方だった。

「貰った、でぇっ!!」

苦痛に顔を歪ませながらその男は、勇の振り下ろした脚を二つの腕で掴んでニヤリと不敵な笑みを見せた。

「うらああぁっ!!」

勇をリングと観客席の間の海面に叩きつけるように投げるザッパ。

「ちぃっ!使いたくなかったが……!!」

海面にぶつかる直前、落下した猫のように身を捻った勇は、

「だああぁっ!!」

海面を両足で勢い良く蹴った。

全力で駆ければ十数キロの距離を数十秒にまで短縮するその脚力。

水を蹴れば、大河すら疾駆する。


「なははははっ!すごっ、水の上走れるとかズッコいやん!」

勇を投げた反動でリングに降り立ったザッパが巨大な水柱を作りながらリング上に戻った勇を見てゲラゲラと笑う。

「はぁっ……はぁっ……!あのまま落とせると思ったんかだが……楽にはいかねぇか……」

蹴りあげた海水を頭から被ってずぶ濡れになった勇が膝をつく。

そして両手を地面につけ、クラウチングスタートのような姿勢を取った。

「ん?」

見慣れぬ姿に眉をひそめるザッパ。


「次の手だ……!」

全身の筋肉を膨張させ、勇は疾駆する。

弾丸のような速さで走る勇。

「うらあぁっ!」

しかしザッパはその姿を正確に捉えていた。

剣を振りかぶり、斬撃のつぶてが放たれる。

「!……また、消えよった」

先ほどと同じように、捉えていた筈の勇の姿が視界から消え去った。

「(後ろか!?)」

同じ手を繰り返す愚者ではないとわかっていながらザッパは振り替える。

「悪いがハズレだ!!」

側面、振り返ったザッパ見て左側面から斬撃と共に声が放たれた。

「つぅっっ!!」

ザッパは咄嗟に身を捻るが、腕の1つを浅く斬られる。

「! ……な、なんなんや、一体……!」

二撃目に備えたザッパだったが、またしても姿を消した勇に呻くように呟いた。


「どこや……何処から来る!?」

止まっていては駄目だ、とリングの上を走 りながら周囲に意識を向ける。

がやはり勇の姿は見えない。


そんなザッパの上から突然、影が落ちた。

「……?……!!」

最初は雲か?と疑問に思ったザッパだが、弾かれたように空を見上げた。


「なっ――っ!?」

そこに居たのは、太陽を背にしながら剣を振り上げ、ザッパへ向け落下してくる勇の姿だった。

「だりぁぁあああぁっっ!!」

勇の腕の筋肉が膨れ上がり、耳をつんざく程の咆哮と共に剣が振り下ろされる。

「くっ、小癪かマネするやないか!!」

太陽光を直視し思わず片手で目を隠したため一拍遅れてザッパが動く。

ノコギリ状の刃を持たない双剣を交差に構え防御の構えを取った。


「「っ!!」」


剣がぶつかり合った一瞬、世界から音が消え、遅れて爆発音が闘技場に響き渡った。

リング二人を中心に砕け、リングと観客席を別つ海が荒波となって吹きあがる。


「(――なん、ちゅうバカ力や!!竜種か何かか、コイツはっ!?)」

剣がぶつかり合った時に走った、身体を押し潰されるような衝撃にザッパは呻いた。

「こん――ガキがあぁっ!!」

勇の一撃を直接受けた剣には亀裂が走り使い物にならなくなった。いや、掴んでいた両腕さえも痺れが治まる様子も無い。

ザッパは残りの内、刃がノコギリ状で無い残りの双剣の切っ先を勇に向け突き穿つように放った。



「――アンタは多分、レオと並ぶような奴だ」

魔剣を手放し、腰に差した双剣を抜き取った勇がソレを弾く。



「公爵級の魔族と戦って生き残れるような……そんな、人類最強なんて言われる、世界で一握りの存在だ」

双剣を弾かれたザッパは遂に、ノコギリ状の刃の二つの魔剣、『アラハバキ』『イシカホノリ』を勇に向け叩き込む。


「今の俺じゃあ届かない、唯一の場所に立っている……だから――」

蒼と碧、二振りの宝剣すらも手放した勇の右手から極光の光が溢れだす。


「悪いが使わせて貰う……――!!」

右手からせり出すように現れた極光の剣の柄、それを勇が掴んだ瞬間ザッパの双剣は勇の身体を切り裂き、



「……(……えっ?)」

ザッパは海中に沈んでいた。


「(なんでワシは、海の中におるんや……?)」

ザッパの思考を占めるのは、困惑だった。


「(……ワイは、あの坊主を殺ってしまった……負ける、思うたからや)」

勇を切り裂いた感触は両手に確かに残ってる。

ただ、わかるのはそれだけだった。


「(……なんで、海の中におるんや)」

落ちたという覚えはなく、本当に、気づいたら海中に沈んでいたのだ。


「(……)」

困惑は続く。

だが息が苦しくなってきた。

ザッパは海面を目指して泳ぎ、そして――



『しょ、勝者ぁ!!黒き執行者ぁぁっ!!』

海面から頭を出したザッパが目にしたのは、岩礁のようになったリングの上で片腕を振り上げた少年の姿だった。


「……く、くははっ……!」

混乱の極みに至ったザッパは思わず笑った。

だがそれは狂ったわけでも、渇いた笑い声でもなかった。


「……確か、ユーヤ・シロウって言ったな……惚れたで?……くっ、くははははっ!!」

どこまでも愉快そうに、ザッパは大きな声で笑うのだった。




お待たせしました、最新話です。

話タイトルの王者はチャンピオンと読んでください。


……今回は少々少ないです……最悪前話に合わせちゃうかもです


ではお楽しみに

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ユーヤ・ホルホルがまた1人……
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