先代勇者と好敵手
「ゴルドーの親父はいるかい?」
腰に手を当てて声を出すトーレさん。 なんと言うか、似合いすぎです。
どうもどうも。皆様の先代勇者、社勇でございます。
魔剣をメインに据えたと言う武器屋に入った俺たちは乱雑に重ね、束ね、置かれた武具達の山を縫うように拓かれた道を通り、この工房の受付らしきカウンターの前に到着した。
上のトーレさんの言葉はカウンターに行き着いてからの言葉である。
「ユウ、あれ、何?」
「んー?ああ。あれはショーテルって言って剣の部類だ。普通に防ごうとしたら曲がった剣の先っぽがグサリ、って刺さる武器さ」
「あの、わっか、は?」
「あれはチャクラムって言ってな?……こう、くるくる~って回して相手に投げつける武器だ」
姉御もといトーレさんの後に続きながら、俺はリリルリーを肩車している。
珍しい武器が壁に所狭しと掛けられているのは、子供にとってはさぞ珍しかろう。
「あれ、は?」
「あれは……おい、何故ファンタジー世界にナース服があるんだ。と言うより武器屋で何故ナース服が掛けられてんだ?」
珍しいと言うより、有ってはいけない物を見てしまった。
「ゴルドーの親父!いないのかい!?」
姉御もといトーレさんが焦れっげにカウンターをバンバンと叩くと、工房の奥から鉄の山を崩すようなものすごい音が鳴り響いた。
「ワシならいるよー!……お?トーレちゃんじゃねぇかい!」
鉄屑の山を蹴散らすように現れ、カウンターの上に座り込んだのは、身長が一メートルに満たない大きさの白い髭のもじゃもじゃの老人。
低い身長ながら服の上からでもわかる、丸太の様に太い腕が、この老人がただ者ではないと告げる。
「ようやく着てくれる気になったかい?あのナース服を!」
こ、このじじぃっ!判ってやがるっ…!
褐色肌のむちむちバディ!エロエロお姉さんなトーレさんに着せる事により、白衣の天使を白衣の小悪魔へと変貌させるだとぉっ!?
………個人看病してほすぃ…。
このじじい、ただ者ではない!(キリッ)
「ユウ、えっちな事、考えてる!」
「あだだ!まつげは!まつげはダメ!!」
な、何故思考がバレたっ?
「全く相変わらずバカな事言ってんじゃないよ。それより客を連れて来てあげたよ」
俺とリリルリーが戯れていると、視線が集まった事に気づいたリリルリーが指を離す。
「なんでぇ、こんな餓鬼がトーレちゃんの言う客だって?……バーロー、いっぺん死んでから出直して来なっ。乳くせぇんだよド低脳が」
…………あ?
「聞こえなかったのか小僧!テメェだよ、テメェ!ワシのトーレちゃんを頭ん中で汚してんだろ?その内容教えてから出て行きな!」
………………あぁ?
ストン。
「?……ユウ?」
肩車を止めリリルリーを床に降ろした俺は、カウンターにて座りこけた爺に向け歩き出す。
この糞爺…かつて世界を救った勇者たる俺を馬鹿にしやがった。
いや、何より!!!!
「誰がテメェみてぇな、しわくちゃじじいの女だって?……あ゛?」
ワシのトーレちゃんだと?………この糞爺、許すまじッ!!
「……なよなよしたテメェじゃ満足できねぇだろうよ、糞坊主!」
「……テメェみてぇな熱苦しいだけのもうろく爺じゃ先にイッちまってトーレさんを満足させられねぇよ!」
「ンだと?」
「なんだよ、やるか?」
ゴチッ!
「「上等じゃねぇかッッ!!」」
「止めないかい!」
額をぶつけ合った俺たちをトーレさんが止める。
その声に若干の呆れが込められていた。
「ふーん、コイツが悪いんじゃもん」
「ふーん、この爺が悪いんすもん」
互いにそっぽを向いた俺と爺。するとリリルリーが俺に駆け寄って来て、
「ユウ、も、悪い」
「ぐぬぅっ!?……」
じ、純粋な視点の子供故の正論!
しかしなリリルリー、男には正論だとしても抗わなければいけない事、間違っていても通さなければいけない『意地』があるの――
「今の、言い訳、するユウ、カッコ悪い」
ガビーンッ!!
そんな効果音が鳴り響いた気がした。
「…………ごめん、なさい」
「ん、いい子」
orz の体勢で謝る俺を優しく撫でてくれた。
……あれ、俺ってリリルリーの保護者じゃなかったっけ?…………ま、良いや。
大人としての矜持が打ち砕かれ、幼子に撫でられてる姿が面白かったのか、糞爺がゲラゲラと笑い出す。
「ざまぁねぇぜ糞っカス!ワシのトーレちゃんに手を出したのが…――」
「……貴方、も、悪い」
だが正義の審判リリルリーが俺だけを責め、爺を許すはずもなかった
「ぐぬぬぅっ!?……し、しかし嬢ちゃん。わ、わし、もうろくじじいだし、ゆるしてくれんかの~」
こ、この野郎!リリルリーの追求を逃れようと年相応らしい狡い逃げかたでっ…―――
「カッコ、悪い」
ガビーンッ!!
カッコ悪いと断定された爺はカウンターから転げ落ち、床に着地すると同時にorzの体勢に入った。
「撫でてあげる、は、ユウだけ」
ガビーンッ!!?
落ちてorz になれば撫でて貰えるだろうと思ったんだろう………が、しかし無情にもリリルリーは切って捨てた。
二段構えの精神攻撃に爺は撃沈した。
ざまぁ!
◇
「それで?なんじゃったかの?……おお、そうじゃそうじゃ、トーレちゃんにセーラー服、じゃったかのぅ?」
穏やかな顔で今までの事をなかった事にしようとする糞爺。
だがしかし、俺にはこの爺を許す事が出来なかった。
……何故なら、
「バカ野郎ッ、体操着+ブルマーだろうガッ!」
学校の制服限定エロコスなら……ブルマーに決まってるからだ!
「この糞ガキャあ!なんつー事を考えとるんじゃ!汗で透け見えじゃねぇか!食い込んじまうじゃろうが!!」
「糞爺ッ!てめぇのセーラー服も雨に濡れたら透け透けなんだよ!下着丸見えなんだよ!家に上がってけよなんだよぉっ!!」
互いの、魂の慟哭が工房を包む。
俺と爺は互いに視線を外さずに、
「「………テメェ、なかなかやるじゃねぇか…」」
ガシッ。固い、固い握手を交わすのだった。
俺と爺は憎み合う敵ではなく、認め合う好敵手だ!
「どっちも、えっち!」
「いでででッ!痛い!耳は痛いって!」
「あいだだっ!痛い!髭はやめとくれー!」
互いに審判者リリルリーから制裁を食らう。
「……ユーヤ・シロウの武器。投擲用の槍をこさえて欲しいのさ」
先ほどまでのコスチューム合戦を無かった事にしたいトーレさんは話を進めようと要件を言う。
がしかし、その頬が微妙に赤くなっているのを見逃さなかった!
ぐふふ、遂にトーレさんルート確定ktkr!
「はなし、拗らせ、ないっ」
「ごめんなさい」
リリルリーに強く窘められると何故か謝ってしまう。
「……ふむ。小僧に作ってやるのは良いがのぉ………良し、まずは脱げ、小僧。話しはそれからじゃ」
「なに?俺はガチムチなんて興味なごめんなさい謝るから、すぐに脱ぐからショーテルを鼻にぶちこもうとしないでくださいおねがいします」
ショーテルを鼻先にちらつかされた俺は怪盗ルパンの三代目もビックリの脱衣術を見せた。
「……ほぅ…小僧、テメェ…唯の熟練者じゃあ、ねぇようだな」
真っ裸になるか迷ったが俺はこの世界に来てからも着用し続けているキャラの絵が書かれたトランクス、通称『痛トランクス』を履いた状態で裸になる事にした。
そのせいで文面では爺が鍛えられた肉体にか、異世界に来てまで紳士たる生きざまを見せつけた事に対してなのか、どちらへの称賛かわからなくなってしまった。
まあ明らかにシリアスな雰囲気になったので前者だろう。
「ふぅん。……一皮向けば、すごいじゃないか。……見た目だけじゃ、わからないってね」
いちいち言動がエロいです、トーレさん。
「………………っ」
そしてそこのおませなリトルガール(発音良く)。
手で隠せてるつもりなんだろうが指の隙間からガン見してんじゃありません!
「ふむ。……小僧、魔槍か?」
少し間を開けてから爺が聞いて来た。
「親父!?」
トーレさんが慌てたように爺を見る。この驚きようだと、爺が俺を認めたみたいな乗りなのだが………
「いんや。ただの槍で十分だ。……だがバジリスクの脳天を突き刺すのに使う。使い捨てのもんでも良いが、それなりの物は欲しい」
俺の本来の戦闘方法は剣だ。
がバジリスク二体を仕留めるなら槍が一番良い。
なんせ頭だけを潰せば、頭蓋以外の素材は丸々残る!
「……小僧、明日来な。それまでにテメェが唸るような短槍を作ってやる」
そう言うや否や、爺はカウンターから降り、工房の奥へと歩いて行った。
武器に関してはもう良いだろう。あの爺さんなら信頼に足ると俺は思ったからだ。
学校の制服限定エロコスはスク水だと思う勇士は僕と握手!
……お気に入り登録数と評価pの上がり具合がおかしいのですが……… サイバーテロとかじゃないですよね!?
感想待っております…