花園の奥方様
騎士見習いとして認められた日の夕方。
城の外にある訓練場の隅で、四人はまだ話していた。
ホープ。
ルーク。
セリア。
ガルド。
少し前までは互いに知らない者同士だったが、もうすっかり打ち解け始めていた。
ガルドが大きく笑う。
「腹減った!」
ルークが呆れる。
「さっき食ったばかりだろ」
ガルドが胸を叩く。
「騎士は食う!」
セリアが小さく笑う。
「魔族らしい」
ルークが言う。
「お前は静かだな」
セリアは少しだけ遠くを見る。
そして言った。
「この城の中庭に」
指を向ける。
「小さな花園がある」
ホープが首を傾げる。
「花園?」
セリアがうなずく。
「うん」
「そんなに大きくない」
ルークが言う。
「知らないな」
セリアが言う。
「気づかない人も多い」
「少し前までは闘神様と奥方様しか入れなかった」
「でも今は騎士であれば入れる」
「奥方様のご意向だったらしい」
少しだけ微笑む。
「とても綺麗」
ガルドが言う。
「花か?」
セリアがうなずく。
「たくさん咲いている」
そして少し声を落として言った。
「闘神様の奥方様が」
花園を見るように目を細める。
「よく世話をしている」
ホープが驚く。
「奥方様?」
ルークも少し驚く。
「見たことあるのか?」
セリアがうなずく。
「遠くから」
少し思い出すように言う。
「人間の女性」
ホープが言う。
「闘神様の奥さんって人間なんだよね」
ガルドが言う。
「そうらしいな」
ルークが腕を組む。
「神と人間か」
少し笑う。
「すごいよな」
セリアが静かに言う。
「だからこの土地は」
周りを見る。
「種族が違っても生きられる」
ホープが少し考える。
「奥方様って」
「優しい人?」
セリアがうなずく。
「そう見える」
少し笑う。
「花に水をやっている」
「一人で」
ホープはその景色を想像する。
神の城。
その裏にある小さな花園。
そこにいる奥方様。
セリアがホープを見る。
「見習い騎士なら」
「花園には行ける」
ホープが驚く。
「ほんと?」
セリアがうなずく。
「騎士の通路から入れる」
そして少し優しく言う。
「今度」
「行ってみるといい」
ホープが言う。
「どうして?」
セリアは少し考えた。
そして言う。
「静かだから」
少し微笑む。
「考え事するのにいい」
ルークが言う。
「お前が行く場所じゃないな」
ガルドが笑う。
「俺は昼寝する!」
三人が笑う。
ホープは空を見る。
城の奥。
花園。
そこにいる奥方様。
ホープはまだ知らない。
その花園が、運命を変える場所になることも。




